この本読んだ『維新支持の分析』

善教将大, 2018, 『維新支持の分析 ポピュリズムか、有権者の合理性か』

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維新支持の分析 [ 善教 将大 ]
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先月、令和元年6月の蕨市議会議員選挙で、日本維新の会の新人が、蕨市議会史上初めて当選したところであり、まさに今行われている参院選でも埼玉県選挙区において維新の候補が立候補しているところでもあり、そもそも維新って何で伸びてるの?そもそも、正式名称なんなん?維新の党?維新の会?日本?大阪??と、調べようと思っていたところ、タイミングよく隊長の書評を拝見し、読んでみた次第。

【書評】有権者の態度を読み解く『維新支持の分析』の迫真度 : やまもといちろう 公式ブログ

ずっと「面白いですよ」と周囲には薦めていたものの、書評として書くべきタイミングを失していた本書、ちょうどこの本が出るというころに大阪府知事・松井一郎が「都構想実現のために2月には辞任する」と年末にいい物議を醸していたわけであります。 松井・大阪府知事2月までに辞職表明へ 公明を批判 …

著者は政治行動論の学者であり、本書もサーベイ実験の積み重ねによる学術書なので、お値段もお高いし、読みづらいことこの上なく、読み終えるのにかなり時間がかかってしまった。

書評は、隊長の文章がよくまとまっているのでそちらをご覧いただくとして、ざっくりまとめると、大阪における維新の強さの理由は、いわゆるポピュリズムによるものでも橋下人気によるものでもなく、大阪の利益代表としての政党ラベル強化の戦略によるもの。逆に、他の地域では弱くて当たり前。今の路線で行く限り、これからも他の地域で伸びることはあり得ない、という感じです。

 

更に推し進めると、
先月の蕨市議選で維新が一議席を獲得したのは、維新という政党への支持の有無、強弱とは無関係だった、と言えましょうか。

本書の知見だけからそこまで結論付けるのは飛躍し過ぎなのですが、私の肌感覚と合わせて言うと、概ねそんなところかと思います。

 

 

読書メモ

• 大阪における維新の強さの理由
自らの政党ラベルを、大阪の代表者として機能させることに成功した。
断片化された個別利益の代表者としてではなく、大阪の利益代表として有権者の目に映った。
ここで言う「大阪」は、大阪市や大阪府ではなく、広域的で抽象的な都市空間としての「大阪」を指す。

維新所属の候補者は、たとえ、同一選挙区内に維新候補が複数いたとしても、自らの個性をアピールすることなく、維新ラベルを強調する戦略を採用することにより、維新ラベルが投票選択に与える影響を強化した。
他党においては、地方レベル、特に市町村選挙では、一般的に政党が機能しにくく、有権者も政党より個人を重視する傾向を強める。大選挙区制のため。

維新支持は、熱狂的なものではない。むしろ不支持の方が熱狂的。

• 維新はポピュリスト政党か
否。
相対的には、ポピュリズム態度を持つ人に支持されている政党は、日共。
ここで、ポピュリズム態度を持つ人の定義は、アッカーマン:人民主義、多元主義、エリート主義の政治的態度が強い人。

• 橋下個人への支持の高さによるものか
橋下個人への支持と、政党としての維新への支持はリンクしない。
そもそも橋下個人も、動員戦略に成功していない。市長就任後、橋下支持率は下がっている。そもそも、いわゆるポピュリスト首長の多くは、就任後、支持率を低下させている。

• なぜ大阪だけでしか支持されないか
大阪の代表としての政党ラベルが強いことの裏返し。

• 維新支持者の素性
批判的志向性を持っている。
いわゆるポピュリズムに煽られる愚かなマスではない。
支持態度と投票行動の関連性が、他党と比べて高い。

• 都構想否決の理由
大阪府民に内在する懐疑心とでも言うべき批判的志向性によって、維新支持者の一部が、反対に流れた。

• 東京都における都民ファ躍進の理由
ポピュリズム態度の強弱とはリンクしていない。
保守政党ではなく、革新政党として認識されている。
背景にあるのは、都議会への問題意識。


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