合志市 行政評価の仕組みを視察

蕨市議会 総務常任委員会にて、熊本県合志市に視察に行ってまいりました。(委員会メンバ全員参加)

合志市は、平成の大合併の際に2町が合併してできた市で、熊本市に隣接する、交通至便な地域を中心に、新婚~子育て世代の流入が続いており、人口が増え続けているそうです。

合志市役所
合志市役所庁舎。

行政評価の仕組みが先進的だということで有名で、これを見に行きました。

 

他所の市でよくある行政評価の仕組み

行政評価とは、行政のやったことを、事後的に、評価する(成績をつける)ものです。
設定した定量的目標に基づいて達成・未達成を評価し、定性的なコメントをつけ、場合によっては対象事業を今後継続的に行うかどうかについての判断を付けるものです。

概ね、担当部署における一次評価、上位組織(部長クラスなどによる組織)による二次評価の両方を行うケースが多いようです。

蕨市においてもこれは行われています。
市の事業というのは、最小単位ごとに数えると数百以上あるので、毎年これを全て行政評価するのはコスト的にも人的キャパ的にも大変です。そこで、毎年幾つずつと数を決めて、順番に行い、数年かけて一巡するようにしてあります。
おそらく、他の市でも概ね似たりよったりかと思います。

 

既存の行政評価の仕組みについての、個人的な不満

以下、私の個人的な意見ですが、

・自分で自分自身を評価することはそもそも無理。
どうしても採点する視点が甘くなりますので、評価は、利害関係がない外部の組織が独立して行うべきです。

・目標設定のプロセスと根拠が不透明。
既存の仕組みにおいては、目標を自ら設定することになっています。おそらく、実際には上位組織ないしは市長の承認を得た上で設定してることと思います。このプロセスと根拠が不透明です。
また、各事業の目標の中には、行動目標と成果目標が混在しています。例えば、行動目標は「年間○回、イベントを実施する」という類のもので、予算と人的リソースがあれば達成は容易です。他方、成果目標は「年間○回のイベントでの動員延べ数△☆人を達成する」というようなもので、これは担当部署が頑張る必要があります。私は、全ての定量的目標は、行動目標ではなく成果目標であるべきと考えます。

 

まあしかし、人事評価制度と同じく、組織の目標設定と評価というのは、組織オペレーション上の永遠のテーマとも言えるようなもので、ベストのやり方というのはなかなか見つからないものですよね。

合志市では、(行政自身が行う評価だけではなく)議会参加型の行政評価が実施されていると聞き、どんなものかと興味がありました。

 

合志市の議会を巻き込んだ行政評価の仕組み

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合志市政策部企画課スタッフより説明を受ける。

行政自身の評価プロセスについては、担当部署自身が一次評価を行い、部長級からなる上位組織が二次評価を行う、という点では、既存の仕組みと同じ。

その後に、議会での評価と、有識者・市民による審議会での評価を別個に行う。
これは、時系列で言うと行政自身による評価の後だが、独立したものである。
尚、議会での評価は、全議員参加で、内容は非公開。

その後で、評価結果をマージする。

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評価対象

以上のプロセスは、市が行っている全事業を対象としている訳ではなく、 市総合計画(5年タームの中期経営計画)における、26本の施策に対して行っている。

ここで、事業と施策という概念がちょっと分かりにくいのだが、要するにこれはテクニカルタームのようなもので、ざっくり以下のように分けられる。

事業
園芸品評会事業、学校土曜塾事業・・・などのような、予算別の最小単位。
合志市においては700くらいある。
一つの部署は、複数の事業を抱えている。
一つの事業を複数の部署が担当することは、無い。

総合計画上の施策
防犯対策の推進、行政改革の推進、生涯学習の推進・・・などのような、とても大雑把なくくりで、概念的なもの。
合志市においては26ある。
一つの施策が、複数の部署にまたがることもある。

 

事業評価は、やるべきかやらないべきか、幾ら予算をつけるべきか、成果として何を求めるべきか、 評価が人により会派により真っ二つに別れるだろう。
施策評価は、概念的なものなので、概ね意見が別れることはなく、全議員が話し合う中で、何となく「こんな感じだよね?」と合意出来るのだという。

 

評価に当たっての資料

全事業の財務部署に対する予算要求書を全て公開しているとのこと。
これはかなり画期的です。

 

 

これらとは別に、既存と同じような行政自身による全700事業の行政評価は毎年行っており、これも全て担当部署長の署名入りで全て公開しているとのこと。
これも画期的。

 

新しい行政評価の仕組みに対する市民の反応

残念ながら市webサイトの中の該当ページはほとんど閲覧されておらず、反応もないとのこと。

 

 

所見

合志市殿においては、せっかく先進的な試みを行っているにもかかわらず、市民に周知されていない点が残念。
広報に課題がある。
視察の場で見せてもらった資料も、はっきり言ってとても読みにくい。
ダイジェスト版を作って広報するとよろしいかと思料する。

 

理想的には、全事業について(総合計画における施策についてではなく)、議会が、定量的成果目標を設定し、評価を行うことが望ましい。
蕨市の場合、事業の数がいくつあるのか分からないが、千くらいか?
会派によって議員によって考え方が異なるので、話し合いの中で結論を集約することはほとんど不可能と思うが、定量的目標設定と評価についてはデジタルに出力し、定性的コメントについては全て併記するような形が望ましい。
時間的、コスト的にとても大変だが、一回やってみると面白いと思う。

ちょっと自分一人でやってみようかな。


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