蕨市 令和4年度予算を解説 その3 歳出編(2)

「その2」からちょっと時間が経ってしまいましたが、その3です。

 

以下、元となる資料は、↓こちらにあります。
この資料の各ページにそって解説します。

蕨市webサイト:当初予算書について
https://www.city.warabi.saitama.jp/shisei/zaisei/kouhyo/1002880.html

ダイジェスト版が↓
蕨市webサイト:令和4年度 蕨市当初予算(案)概要 (PDFファイル)

 

画像はすべて(c)蕨市
(クリックすると拡大します)

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ここから先のページは、個別の「事業」のピックアップですね。

ここでいう「事業」というのは、自治体経営における、行政サービスの一つの単位を指します。

一般的な言葉の使い方、規模感としては、例えば、ソニーという会社の「エレキ事業」、「ゲーム事業」、「音楽事業」のように使いますが、自治体が用いる場合は、まったく違います。

 

自治体経営においては、例えば、
・新庁舎建設事業
・生活保護扶助
・健康長寿事業
・塵芥処理事業
・徴収事務
などのように使います。

単発の案件もあれば、半永久的に続くような経常案件もあります。

蕨市においては、億円規模のものもあれば、数十万円程度のものもあります。

「○☓費」と名付けられたものもあります。

一般的な言葉の感覚でいうと、「○☓案件」あるいは「○△プロジェクト」みたいなイメージの方が近いかもしれません。

行政組織から見ると、一つの課が、一つ ないし 複数の事業を抱えている、というイメージです。逆に、一つの事業が、複数の課にまたがることは、(私の理解では)あり得ません。

 

 

ここに取り上げられている項目は、全ての「事業」ではありません。
蕨市の全「事業」の、ごく一部に過ぎません。

金額規模が大きいものが取り上げられているわけでもありません。

主に、

・新規案件
・既存案件を大きく変更した案件
・市長公約に関連があるなど、目玉の案件

のうちの、ごく一部がピックアップされています。

つまり、この「令和4年度 蕨市当初予算(案)概要 」(PDFファイル)に取り上げる案件の選択に、そもそもバイアスがかかっています

 

 

 

では、いよいよ中身を見ていきましょう。

それぞれの項目について、資料の中に書いてあることは繰り返しませんので、まずはそちらを読んで下さい。その上で、これまでの経緯、背景、今後どうなるか、議会でどのような話し合いが行われたのか、個人的な意見等を、私なりの視点で解説していきます。

 

 

 

  • 市役所新庁舎建設 2,251百万円

建て替えの継続案件です。

昭和三十年代築で、耐震診断結果が不合格だった古い庁舎を取り壊し、同じ場所にて、現在、建設工事が進められています。

素人目に見たざっくりした工事スケジュールとしては、令和3年度に基礎工事が終わったようです。本年度、令和4年度は、上モノの工事が進められています。

竣工(建物建設が完成すること)は、令和5年6月で、令和5年秋から使い始める予定です。

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建設工事中の仮住まいとして、今はプレハブの仮設庁舎を使用しています。(2020年撮影)
新庁舎への移転後は取り壊し予定です。

 

 

市庁舎建設といえば、ちょっと苦い思い出がありまして、

コンセプト案のパブリックコメントに市内の中学生が応募を寄せてくれた中に、

「自分たちの学校の建物はボロボロだ。大人が、自分たちのために市庁舎の建物の建て替えを優先するのではなく、学校を優先してほしい」

という意見がありました。

市庁舎の建て替えは、「古くてボロいから、新しい建物に建て替えて、新築で気分良く過ごそう」というのが理由ではないんです。

旧庁舎は、耐震基準を満たしておらず、大きな地震が起きたら使えなくなる可能性がありました。市役所の庁舎は、単なる事務作業のためのオフィスということではなく、災害発災時は、市民の生命と財産を守るための災害対応拠点となります。地震が来たから使えません、では困るのです。

市内小中学校の校舎は、既に耐震工事は完了していますので、建て替えは必要ありません。

件の中学生も、もちろんちゃんと説明すれば理解してもらえたのだろうと思いますが、そもそも、このようなパブリックコメントが出てきたということは、市議会、そして行政当局の広報活動が不十分であったという証左であります。

 

 

  • 橋梁改修 298百万円

先のエントリで解説した通り。

 

 

  • 公設留守家庭児童指導室の保育開始時間繰り上げ 0.5百万円

留守家庭児童指導室とは、いわゆる学童保育のことです。
保育園とは別モノです。

留守家庭児童指導室は、学期中は授業終了後に開かれるわけですが、夏休み等の長期休暇中は、朝から開かれています。

朝の時間は、どこの家庭でも忙しく、1分、2分の差が極めて重要だったりするわけですが、「保育開始時間を早めてほしい」という要望は以前からありました。

 

 

  • 留守家庭児童指導室の増設 48百万円

保育園の待機児童問題については、以前よりマスメディア等でも大きく取り上げられ、自治体ごとの待機児童数などが話題になったりしますが、同じように、留守家庭児童指導室も不足が続いており、近年、蕨市内では増設が続いています。

 

 

  • 民間認可保育園の増設・運営 1,009百万円

保育園は、依然として恒常的な不足状態であり、民間の認可保育園の増設が続いています。
これは、概ね、全国的なトレンドです。

子供の数が減っていて、かつ、保育園を増設しているのに、なぜ、保育園不足が続いているの?
と素朴に疑問を抱く方が多いでしょう。

要するに、供給が増えているにもかかわらず、需要がそれを上回るペースで増えているからです。

需要の増、とは、すなわち、その背景にあるのは、「働く女性が増えている」ということです。

これはもちろん良いことで、私達の社会は、長い年月をかけて、女性の社会進出を増やしていこう、女性の人生における選択肢を増やしていこう、という方針を掲げて、政策的、社会的に努力してきたわけですから、その成果が上がってきている、ということであります。

 

保育園には、民間経営と公営(市営)のものがありますが、蕨市では、公営の増設は近年は行われていませんし、これからもありません。
近年、新規に開設された保育園は、全て民間経営のものです。

 

 

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  • 幼稚園における0-2歳児の預かり 24百万円

正直、まったく詳しくないので、コメント飛ばします。

 

 

  • 18歳までの入院に係る子供医療費無料化 1.5百万円

子供医療費無償化の

・対象年齢の拡大
(例えば、乳幼児だけ→小学生まで→中学生まで→18歳までという流れ)

・対象の条件の拡大
(入院のみ→通院も)

については、近年の全国的なトレンドです。

この流れは更に推し進められていくことと思いますが、最終的には、「18歳まで、通院も含めて」ということなるでしょう。

 

今、世の中的には、

・子育て支援策の一つ
・シニア世代から若い子育て世代への、世代間の資源の再配分の一つ

と捉えられています。

 

裏の理由として、「子育て支援に手厚い街」であることをアピールするために、無償化の拡大を自治体間で競い合う雰囲気も背景にあります。

 

他方で、バラマキとして否定的に捉えられる場合もあります。

所得制限を設けない場合もあり(例えば、世帯年収1億円の家庭の子供医療費を無償化する必要があるのか?という議論があります)、また、完全に無料であることによって無駄な医療費が発生する可能性もあり(例えば、自費であればわざわざ医者に行かないほどの軽度のケガであっても、無料なので医者に行き、薬を処方してもらう、等。不正ではないが無駄と言える)、バラマキと言えなくもありません。

 

  • 学校体育館空調設備の整備 104百万

空調設備、というのは、要するにエアコンのことです。

「学校にエアコンを設置する」と言うと、未だに出てくる意見が、
「昔はエアコンなんて無くて当たり前だったんだ!
子供にエアコンなんて贅沢だ!
そんなもの要らん!」
という意見です。

エアコンは、もはや贅沢品ではありません。
温暖化が進展し、昔と比べると真夏日が増えましたし、屋内にいたとしても場合によっては熱中症になり生死に関わる危険性があることが分かってきました。

また、学校施設は、いざ災害発災時には、避難所となり、大勢の人が自宅を離れて仮の住まいとして生活を共にすることになります。災害はいつやって来るか分からず、それは真夏かもしれません。ストレスを抱え、体調が弱った人がひしめき合う避難所にエアコンは必須です。

 

ということで、数年間に渡って、順次、小中学校体育館へのエアコン設置を進めています。

令和4年度は、北小学校と中央小学校の設置工事を、夏休みに行う予定です。

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2021年、蕨二中の体育館エアコン。

一般家庭やオフィスにあるような対流式(空気をかき混ぜる方式)ではなく、輻射式という、広い空間においては効率がいいものです。

休日にスポーツ団体が利用する場合は、コイン式で使用することが出来ます。

 

 

尚、小中学校の教室には、既にだいぶ前に全てエアコンは設置されています。

順次リースアップしており、無償譲渡を受けた後もまだ使えるので使い続けております。

 

 

  • 学校トイレの改修 23百万円

学校設備は、全て耐震化は完了しておりますが、老朽化はそれぞれ、それなりに進んでおります。

今の蕨市のファシリティ・マネジメント方針は、「長寿命化を施して、可能な限り長く使う」というものです。

 

ところで、近年の学校トイレのトレンドとしては、

トイレのウェット床のドライ床化

というものがあります。

 

清潔衛生という観点から、特に感染症対策のために、ドライ床化が有効とされております。

 

また、議会において学校トイレが取り上げられる際は、

「和式トイレの様式化を!」

と訴える議員が多いです。

近年、各家庭のトイレは洋式が標準となり、和式トイレを使えない(?)子供たちが増えているのだとか。
確かに、和式便座は、座る際に独特の足腰の筋肉の使い方をしますしね。

また、前述のように、災害発災時の避難所となることを考慮すると、足腰が弱った方やお年寄りが避難所として使うことを想定すると、洋式の方が良い、と。

それぞれ一理あります。

 

しかしながら、個人的には、私は別の考えも持っていまして、
「和式トイレ」といいますが、決して本邦独自のものではなく、広く世界のあちこちにこの種の「和式便座」は存在します。

子供たちが、将来、世界に羽ばたく際に戸惑わないようにするために、幼時より「和式トイレ」に使い慣れてもらうという教育もある程度は有効なのではないかと思料します。

ということで、和式トイレも多少は残しておいてもいいのではないでしょうか。

 

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2010年、共産中国の新疆ウイグル自治区の公衆トイレ。

 

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2009年、カンボジアのシエムリアップの、そこそこちゃんとした外人ツーリスト向けメシ屋のトイレ。

 

 

  • 公共施設内感染対策の強化 12百万円

コロナ感染対策の一つです。

今後、公共施設に限らず、民間の建物も含めて、「触らなくていいように」なっていくのが、世の中の流れです。

例えば、
・ドアの自動化
・洗面台の水栓の自動化(蛇口をひねらずに、手をかざすと水が出てくる仕組み)

など。

 

 

  • 新型コロナウイルス自宅療養者への支援 1百万円

保健所の指示による自宅療養者は、自ら買い物に出かけることができないため、食べ物、飲み物などを、県が支給します。

従来は、保健所(県の予算で、県が運営している)が行っていましたが、全国的に保健所がキャパオーバーなので、市が下請けしています。

費用は全て、県負担です。

 

 

(続く)


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