デジタル教科書導入に関する、文科省有識者会議の中間まとめ

文部科学省の有識者会議にて、次期学習指導要領における、デジタル教科書導入の方向性が固まったらしい。
次期学習指導要領は、小学校においては2020年度から、中学校においては2021年度から適用されるとのこと。

 

日経 2016/6/2 : デジタル教科書、20年度導入 文科省会議中間まとめ案

ZDnet 2016/6/3 : 文科省の有識者会議「2020年度からのデジタル教科書導入は各自治体の判断」

 

全国一斉に強制導入ということではなく、各地方自治体の判断で、学校単位あるいは科目単位で任意で導入しても構わない、ということになるらしい。

 

そして、デジタル教科書の定義だが、要するに、紙ベースの教科書を単にデジタル化しただけ、というものらしい。
すなわち、ネット接続しているわけではなく、外国語の発音が聞けたり、動画の解説が参照出来たりといったリッチコンテンツとシームレスに繋ぐことは不可能であり、要するに、単なるスタンドアロンの電子ブックリーダ+テキストコンテンツ+静止画像コンテンツになるらしい。

ネットに繋いだり、リッチコンテンツを添えたりすることは、教科書プロバイダとしては不可能らしい。
教材は、教科書+副読本・副教材という2階層構造となっている。
リッチコンテンツを提供するのは、教科書ではなく、副読本・副教材がカバーするべき領域、という整理がなされている。

 

正直、このレベルの「デジタル教科書」であれば、全くもって導入は不要だと考える。

 

電子ブックは、私自身は2012年夏から楽天のkoboを使っている。この分野では比較的アーリーアダプタの後期くらいかと思う。つい先日、2012年に買ったハードウェアが壊れたので、最新型に買い換えたばかりなので、この4年間の技術進化もそれなりに把握している。

hoya_t blog 2012/7/23 : koboインプレ

hoya_t blog 2012/7/29 : koboインプレ その2

hoya_t blog 2009/11/29 : 電子ブックリーダー市場の仕組み

 

電子ブックリーダ+テキストコンテンツは、小説のように、1ページずつ前から後ろへとめくっていくような読み方には適している。

教科書のように、線を引いたり、マーカーで印をつけたり、思いついたことを書き込みしたり、付箋を貼ったり、歴史上の偉人の顔にイタズラ書きしたりするのには向いていない。端末上にその種の機能はついているが、インターフェースははるかに紙に劣っていて使いにくい。

電子ペーパをめくる時のもっさり感は、2012年から2016年の間で、体感では全く進化しておらず、紙のインターフェースには遥かに及ばない。
教科書であれば、辞書のようにパラパラめくって必要な情報を調べたり、あっちこっちのページをひっくり返して参照したりするような使い方をするはずだが、そのような使い方は電子ペーパではほとんど不可能に近い。
(まあこれは、電子ペーパではなく液晶を使えばいいのだが)

この4年間で、画面の解像度が上がったり、バックライトがついたり防水機能がついたりといったようなハードウェア上の進化は見られるが、ソフトウェア的なインターフェースは全く進化していない。

推測だが、楽天自身が、kobo事業がおそらくあまりうまく行っておらず、ハードウェア開発にあまりリソースを投資できないという事情もあるのかもしれない。

 

 

とは言え、これらは少なくとも2016年夏の今時点の話であって、技術進化すれば、紙よりも使いやすくなるかもしれない。

普及して市場が拡大すれば、一気に技術は進化するはず。
また、紙ベースの現時点で存在する「教科書 + 副読本・副教材」という2階層構造は、デジタル教科書の領域では不便なものでしかない。2階層構造を見直す必要が出てくるだろう。

 

少なくとも、現時点では、2020-2021年の次期学習指導要領がスタートする時点での「デジタル教科書」の導入は、不要であるばかりか、百害あって一利なしであると考える。


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