夕張市のコンパクトシティ政策

先日書いたエントリで、たまたま夕張市を取り上げたので、ちょっと気になって息抜きに夕張市の再建に関する情報をつらつら見ていたのだが、本物の「コンパクトシティ政策」を発見した。

夕張市は、バイクツーで何度か通り抜けたことがある。
去年の夏に走った時も、フェリーで苫小牧に夕方着いてから、芦別まで一気に移動したかったので、かっ飛ばして夕張を通り抜けた。

2014年8月、夕張市内の大きな集落の中にある、清水沢駅。
あまりにも手指が冷たくてかじかんでたまらないので、しばし休憩。
19時頃、無人駅の駅前にはタクシーが1台ぽつんと客待ちしていた。

駅構内には「頑張れ夕張」の展示物。

闇夜の国道452号は、もう本当に真っ暗で(国道なので、夕張市の財政破綻とは無関係)、熊が出そうで怖いし(たぶん、本当に出る)、日没後は8月なのに歯の根がガタガタ鳴るくらい寒いし、夜遅く、ようやく芦別のキャンプ場に張った時には、バイクのライトとメットのシールドは虫の死骸だらけだった。


夕張市まちづくりマスタープラン平成24年3月(c)夕張市より引用

夕張市webサイト : 夕張市マスタープラン

 

何というか、パッと見た第一印象としては、凄惨な感じで、「小さな集落は潰さないと生き残れない」という悲壮な覚悟を感じ取って、もうなんか「頑張れ!」というような感想を持った。

夕張市の「コンパクトシティ政策」は、前向きな選択ではなく、止むに止まれず選択せざるを得ない、最後の手段のようなものなのではないかと思う。

 

財政破綻した夕張市は、小さな集落を廃止して、幾つかの主要な集落への住民の集団移転を目指す、としている。
行政にとって、集落を廃止するということは、そこにもう人が住まないことを前提として、都市インフラの維持を止める、ということ。水道・ガス・電気はストップし、道路は幹線道路を除いて放置する。街灯は撤去。ゴミ収集はしない。除雪もしない。公民館などの公共施設も廃止。

このような、周辺部を切り捨てて、中心部にリソースを集中するのが、本物のコンパクトシティ政策というやつで、我が蕨市が、何となくゴロが良いからというだけの理由で、本来の用語とは異なる意味で「コンパクトシティ」蕨などと名乗っているのは、とても違和感がある。「コンパクトシティ」という言葉には、夕張市の小集落の将来のような悲惨なイメージしか感じられない。

 

更についでに言うと、コンパクトシティ政策というと、富山市がなんとなく成功事例として取り上げられる事が多いが、あれは現時点では失敗例だと思う。

富山市自身は、市内周辺部へのイオンモールなどの郊外モールの開設を許していないみたいだが、周囲の市町村に郊外モールがオープンした結果、若者~働く世代がクルマで郊外モールに買い物に行って過ごすという生活パターンを変え、街のスプロール化の流れを止めるには至らず、グレーター富山(市)圏としてのコンパクトシティ作りには失敗している。

そもそもコンパクトシティ政策というものは、夕張市のような、一つの市町村が単独の生活圏を構成している場合にしか、成立し得ない政策であることが分かる。

 

そう言えば、先日会ったニチメン時代の同期が今はJICAにいて、アフリカに富山市のコンパクトシティモデルを輸出する仕事(?)をしているらしい。飲みの場の話で、詳しく聞けなかったけど、おそらく、富山市は、国や県とパイプを作って、うまく補助金やらを引っ張ってくるのが上手なのだろう。

2012年2月、富山市中心部にて。


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