核廃絶をする方法

先日2016年5月27日、米国のオバマ大統領が初めて広島を訪問し、歴史上画期的なスピーチを行いました。

ハフポスト 2016/5/27 : オバマ大統領の広島スピーチ全文 「核保有国は、恐怖の論理から逃れるべきだ」

広島、長崎への原爆投下は、紛れも無く、国際法に反し、人道に反し、(彼らが信ずるところの)神をも恐れぬ邪悪な所業であって、米国はいずれ真摯に歴史と向き合って反省することになろうかと思いますが、今回の訪問とスピーチは、その一里塚として意義深いものであったと思います。

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広島の原爆ドーム(2014年10月)

 

 

冷戦において、西側は東側に対して、核兵器を中心とする軍拡競争に競り勝ったため、邪悪な共産主義は滅びました。

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ルーマニア革命(1989年)の中心地、ルーマニア旧共産党本部と慰霊碑(2015年12月)

 

 

今後も再び、人類文明の破壊を目論む邪悪な共産主義のような政治思想・体制が伸張してくる可能性は否定出来ないため、現下の情勢では、覇権国家たる米国が核戦力・核戦略を放棄することは、あり得ません。

 

冷戦終結後、1992年にフランシス・フクヤマが『歴史の終わりと最後の人間』を発表しました。

米国が「核廃絶を目指す」と言った場合、それは、「歴史の終わり The end of history」の実現、すなわち、「人類文明の破壊を目論む邪悪な共産主義のような政治思想・体制が伸張してくる可能性がゼロになった状態」の実現を前提条件とすることを、暗黙のうちに含意します。

邪悪な共産主義が滅びてから四半世紀が経った2016年の今日に至るも「歴史の終わり」は実現していませんし、その可能性も全く見えてきていません。

理想は理想として掲げて実現を目指すのは悪いことではありませんが、リアリスティックに考えれば、個人的には、ちょっとそのような状態になることは到底考えられませんね。

 

とうことで、「歴史の終わり」の実現はなかなか難しいものと思いますが、核廃絶そのものは、テクニカルには可能です。

 

核兵器を超えてこれを無効化する、次代の戦略兵器が実用化されれば、一気に核兵器は存在意義を失って、保有国は放棄するでしょう。

人類の歴史は、兵器の発展の歴史でした。
新たな戦略兵器の実用化に伴って、新たな戦略論が生まれてきました。
そして、新たな戦略兵器・戦略論へのパラダイム・シフトとともに、新たな哲学・宗教的解釈・芸術が派生的に誕生しました。

 

 

1941年から1945年までのわずか4年間の大東亜戦争中に、2度も戦略兵器・戦略論は世代交代しています。

1度目は、1941年12月10日のマレー沖海戦です。帝国海軍航空部隊が、英国東洋艦隊の戦艦プリンス・オブ・ウェールズと戦艦レパルスを撃沈しました。
戦略兵器:巨大戦艦 → 航空機
戦略理論:艦隊決戦主義(大艦巨砲主義) → 航空決戦主義
この瞬間に、巨大な艦砲を持つ戦艦(実は、更には重巡クラスも含む)が全て無効化し、戦略兵器と戦略理論は世代交代しました。

2度目は、言うまでもなく広島・長崎への原爆投下で、
戦略兵器: → 核戦力(核爆弾と大陸間弾道ミサイル・原子力潜水艦などの運搬手段からなる一連のシステム)
戦略理論:→核戦略論(相互確証破壊理論)
という世代交代が行われ、引き続き戦術レベルで有用であったため航空機が廃止されたわけではないものの、東西両陣営は、相互確証破壊を保つ規模の核戦力を維持することに汲々とするようになりました。

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真珠湾ヒストリックサイトのSLBM(2012年2月)
本物かモックかは不明。

 

余談だが、巨大戦艦大和や武蔵のような軍艦や、ゼロ戦のような航空機には、ロマンチシズムが在りました。いまだに多くの文学、映画のテーマになっています。

核戦力(核爆弾と大陸間弾道ミサイル・原子力潜水艦などの運搬手段からなる一連のシステム)には、ロマンチシズムは感じにくいものです。冷戦期にヒットしたハリウッド映画の中でも、核戦力を肯定的にテーマとしたものはほとんど無いと思います。強いて言うなら、強烈な心理的プレッシャーに晒されながら、本国にもその所在地点を知らせずに数ヶ月間も海の中を漂い続け、ひたすら政策決定者からのSLBM発射の合図を、来ないことを祈りつつも待ち受け続ける、戦略原潜にはロマンチシズムを感じる人は多いでしょう。だからこそ、映画『レッドオクトーバーを追え』があれほどまでにヒットしたのだと思います。

 

 

 

ということで、今のところその萌芽は見えませんが、核戦力を超克し、これを無効化する、何らかの戦略兵器が実用化されれば、自ずと核廃絶は達成されるものと思います。

破壊力においては、核戦力は、既に数百万都市レベルを壊滅可能なレベルに達しているので、次代の戦略兵器は、核戦力を上回る破壊力を目指す方向性のものにはならないと思います。
次代の戦略兵器の方向性は全く私には分かりませんが、あり得るとしたら、サイバー戦分野かロボットになるのではないかと個人的には推測します。


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