災害時における市議会議員の役割

先日、蕨市議会において、掲題の講演会があった。
(正確に言うと、議会改革特別委員会において、外部講師をお呼びした講演会・勉強会)

講師は、鍵屋一氏で、元 板橋区の行政マン。現在は大学教授かつ、複数の防災系の非営利団体の役員などを務めている方。

 

なかなか面白い話を聞いたので、幾つか、ファインディングスと、私なりの所見を以下にメモ。

 

・大災害時の地方自治体では、行政の現場は、とても忙しい(当たり前だが)。
本来の行政サービスの原則である、公平性が守れないケースもある。

これを、公平ではなくても止むを得ないと考えるか?何が何でも公平でなくてはならないと考えるか?

大災害発災時に、公平にデリバリすることが不可能であるが故に、せっかく届いた救援物資が受け取ったまま放置されていた、なんてケースをどこかで聞いたことがある。このような場合、遠くの避難所に行き渡らないとしても、目の前の避難所に取り敢えず配布することを良しとするかどうか?

 

・地方自治体における、地方議員は、どこの政党・会派の人も、多かれ少なかれ、出身地域の利益代表としての性格を持っている(これも当たり前)。

「よその避難所には◯×は届いているのに、うちの避難所には届いていない!」というケースがあれば、その地域の議員の立場としては、行政に対してクレームをつけざるを得ない。

このような場合、現場の行政マンとしては、その議員からのクレームへの対応のプライオリティを上げざるを得ない。

個別の議員としては、このような状況下では、「言ったもの勝ち」なので、とにかく自分の地盤とする地域に利益誘導するしかない。
(個別の議員の立場としては、それ以外の選択肢はない。)

結果として、無駄なコミュニケーションコストが発生し、全体最適も実現しない、ということにもなりかねない。

 

・大災害時においては、とにかく行政の人的リソースが足りない。

無駄な作業は、できるだけ少しでも省きたい状況。
例えば、議員からの電話を一本受けるだけでも、5分なり10分なり時間がかかり、その分、他の作業ができなくなってしまうことになる。(当たり前だ)
それを必ずしも無駄とは言えないが、現実的には、全体最適の実現を阻んでしまうことも少なからずあるだろう。

 

・大災害時においては、現場の行政マンのメンタルヘルスケアがぼろぼろ。

例えば、自治体のBCP計画(有事の役割分担を定めたもの)において、ご遺体処理とか遺族対応の役割を割り振られている部署があったりする。もちろん現場の行政マンは一所懸命に目の前の仕事をこなすだろうが、そんな仕事なんて経験したことも訓練したこともない。

組織論的に言えば、行政組織のトップ・上司が守るしかないのだろうが、議会としても、現場の行政マンのメンタル面をいかに守るか、という視点が必要。

 

・大災害時における、議会・議員の役割は、最小限に留めるべき。

行政の邪魔をしない、自らの地域への「過度の」利益誘導を図って全体最適の実現を阻まない。
「適度な利益誘導」は、必要なものであり、議員の本分でもあるのだが、線引きは難しい。

今回の講演者である、鍵屋氏からは、先行自治体事例を挙げつつ、
「議会で災害対策会議のような有事の組織を設け、行政に対して情報を取りに行ったり、逆に情報を提供したり、何らかの要望を投げかける際は、この組織を通じて一元的に行うのがよい」
という提言があった。

私も、議員が地域の利益代表としての役割を果たしつつ、行政の現場の邪魔をして全体最適の実現を阻むのを防ぐやり方としては、このくらいが妥当かと思う。

 

 

 

また、元 行政マンならではの、行政マン的な視点・立場の本音話みたいなものの片鱗も聞くことが出来て、そちらも面白く感じました。

なかなかそういう話を聞く機会はないものですから。

市役所の建物の中で、市の行政マンと日々接する機会はありますが、お互いに立場が違うので、なかなか本音の話はしません。友達じゃないし。それでも、ふっとした会話の中で、ポロッと本音を漏らしてくれる人もたまにいたりして、それはそれで嬉しく思いますが、特定の議員と仲良くすることは、その行政マンにとってもキャリア上のリスクになるはずですし、一線を越えずにw お付き合いするように心がけておりますwww


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