先日、2017年8月23日(水)、蕨市管路オリエンテーリングというイベントに参加してまいりました。
災害時トイレ下水道を考える会が主催するイベントで、災害時には、飲み水や食べ物の確保と同等以上に、トイレの確保が大切だ、という問題意識の下、下水道の管路について勉強して知識を身に付けることで、問題意識を共有しつつ、日頃からの備えをしていこう、というものです。
蕨市塚越の東公民館での座学の後、この建物から出る下水の管路を辿って、塚越ポンプ場まで歩きました。
昨年度も8月に、蕨市内の中央~南町で開催されたのですが、別件があって行けませんでした。
昨年度のレポートは、↓こちらで見ることが出来ます。
公益社団法人日本下水道管路管理業協会webサイト : 蕨市管路オリエンテーリング報告書(PDF)
蕨市の下水道には、合流式と分流式がある
日頃はあまり意識することはありませんが、下水道には、
・合流式
・分流式
の2種類があります。
そもそも下水には、
・汚水(家庭、建物のトイレ、台所、洗面台から流れる水)
・雨水(文字通り雨水)
の2種類があります。汚さが違うので、処理するレベルが異なります。汚水はより高度な処理をしてから川に流す必要があります。
・汚水と雨水を一緒にまとめて流していくのが合流式
・汚水と雨水を別々の管で流していくのが分流式
ということです。
ざっくりこの違いは、
・合流式:古いやり方。 安上がり。
・分流式:新しいやり方。 高くつく。
という感じでしょうか。
昔は、合流式で汚水も雨水も一緒くたに処理していました。
しかし、大雨で、下水道の処理能力を越えた場合は、汚水(それこそ、トイレから出てきた汚物を含む)をそのまま川に流さなくてはならず、汚いので、最近は、分流式が主流なのです。
古い合流式も、分流式に作り変えた方が環境対策的には好ましいのですが、膨大な投資が必要なので、そのままになっています。
蕨市内においては、
・合流式:錦町以外
・分流式:錦町
となっています。
要するに、錦町は、市内でも最も遅く下水道が整備されてきているのでこうなったわけです。錦町の区画整理地域内には、下水道未整備のエリアもありますが、ここにこれから敷く下水道も、当然ながら分流式になります。
いざ、管路を探検
東公民館の外へ。
前述のように、この塚越地域の下水道は、合流式です。
汚水と雨水は、まとめて処理されます。
概念図としては、こんな感じ。
上図の①:宅内排水設備最終枡。
これは、各家屋・建物の敷地には、必ず存在します。小さなサイズのマンホールです。
写真でV字に見えますが、
・左上から下に向かって流れるのが、汚水
・右上から下に向かって流れるのが、雨水
です。
この日は晴れていたので、雨水は流れていません。
ちょうど、誰かが手を洗ったのか、トイレを流したのか、ちょうど汚水が流れていました。
それこそ、タイミングが悪ければ、うんちや、お尻を拭いた紙がそのまま流れてきます。
建物の敷地の外、道路の脇の部分。
よくある形の、四角型のコンクリふたが2つ並んでいます。
写真の、
左:②汚水桝(①から流れてきたもので、雨水を含む)
右:③雨水桝(道路上に降った雨を吸い込む穴。)
となります。
②汚水桝は、分流式の地域の場合は、道路上ではなく、家屋敷地内に配置されるそうです。
では、中を覗いてみましょう。
②汚水桝
もっとゴミが詰まっているのかと思っていたので、意外と綺麗だなという印象でした。しかし、汚いことは間違いない。ここが詰まったら大変ですわ。
③雨水桝
ここには、道路上に降った雨水と一緒に、道路上のゴミ(落ち葉、砂、タバコの吸殻など)が溜まってきます。
写真でも、かなり大量の砂と落ち葉が溜まっています。
これらの道路上のゴミを溜められるように、深く掘ってあり、上澄みの水だけを流せるような構造になっています。
②汚水桝と③雨水桝は、この先ですぐに合流します。
道路の中央部にある、④いわゆる普通のマンホール。
この地点は、管路の上流に位置するために、太さは350mmです。
さて、管路マップに従って、管路を辿っていきます。
もちろん、道路上からは見えないのですが、ときどき、マンホールのふたを開けて中を覗いてみます。
だんだん太くなっていき、350mm → 1,000m → 1,350mm → 1,500mm →1,650mm → 2,200mm →
最終的に、ポンプ場の手前では、管路は断面が四角になり、
2,160mm × 2,700mmになりました。
このくらいの太さになると、人が中に入れるようになります。
(長靴を用意していったのですが、中には入りませんでした。)
重要な点としては、地中にある管路の傾斜は、地上の道路の傾斜とはまったく無関係に設計されているということです。
管路マップを見なければ、素人には、下水道がどちらの向きに流れているのか、地上から推測することは不可能です。
塚越ポンプ場
管路は、多数の枝線が合流してどんどん太くなっていき、最終的には塚越ポンプ場に辿り着きました。
合流式下水道のエリア内のポンプ場なので、平時においては、汚水と雨水は一つの管路でまとめて流れてきて、一緒くたに処理されていきます。
しかしながら、大雨の時は、処理能力を越えてしまうので、
汚水(雨水を含む)の、上澄みだけを、便宜的に雨水とみなして、雨水系統という特別なラインに流して、そのまま川に放出します。
いくら上澄みだけと言っても汚いことは汚いです。
汚水系統の、汚水除塵機。
大きなゴミを取り除くマシン。
どうやら、常時稼働している訳ではなく、ある程度溜まったら動かすようでした。
今回は、特別にマシンを動かしてデモしてくれました。
除塵機が、溜まったゴミがクレーンで組み上げられてきます。
ネズミの死骸やらが出てきたらどうしようと思っていたのですが、幸いそういうのはありませんでした。しかしまあ、汚いです。
こちらは、大雨が降って、汚水系統が処理能力を越えてしまったときに特別に稼働する、雨水系統のポンプ。
雨水系統のヤンマー社製エンジン。
し渣、沈砂のホッパ。
溜まってきたら、トラックに乗せて産業廃棄物として処理するそうです。
ということで、今まで知識としてだけ知っていたことを、実地に見て確認し、理解することが出来ました。