蕨市議会 3月定例会では、一般質問を自粛

ただ今、開かれている、蕨市議会の令和2年(2020年)3月定例会においては、一般質問を自粛することとなりました。

 

一般質問というものは、大から小まで市政のあらゆるテーマについて、議員各自が自由に発言できる機会です。

「質問」という名前ですが、一般的な言葉としての「質問」とは全く異なります。
授業で、分からないことを生徒が先生に「質問する」というのとは、根本的に違います。「予算のこの項目の内訳と算出根拠はなんですか?」といったように、文字通り何かを尋ねる、聞くという機会は他にあります。
一般質問は、主に、行政当局に対して、何かを要望したり、提案したりする機会です。

自治体によって、議員各自の持ち時間、回数制限などの仕組みは異なります。
蕨市議会においては、年に4回の定例会の毎回、全員が一般質問をすることが可能で、持ち時間は30分間(自分が発言する時間だけを合計して算出する。答弁を聞く時間は含まない)となっています。
自治体規模が大きく、定数が多い地方議会では、年に1回しか発言機会がないようなところもあるようです。小さな街の蕨市議会は、機会が充実していると言えます。

 

 

自粛する理由

言うまでもなく、新型コロナウイルス感染拡大防止のためです。

 

2月27日の国政府の要請に基づいて、3月2日から小中学校を急遽休校することとなりました。
また、図書館、公民館、児童館、歴史民俗資料館などの公共施設も、相次いで休館・業務縮小しています。
休校・休館・業務縮小したからといって、仕事がなくなるわけではなく、様々な事後処理や、問い合わせ対応などで、むしろアドホックに現場の業務量は激増しています。
これらの対応に当たるために、行政リソースを集中投下する必要がありました。

一般質問というのは、前述のように一人当たりの持ち時間が30分間で、答弁も含めれば、おおよそ1時間くらいのものですが、そのための準備に、予想以上に多くの人員が、多くの時間をかけて当たるものです。

国や県はいざしらず、市町村、特に蕨市のような小さな街では、ぎりぎりの人数で業務を回しており、キャパの余裕はそれほどありません。

 

また、疫学的に、この1,2週間が、我が国における感染拡大防止のために重要であるとされており、世の中全体の人と人との接触機会を減らすことが有効であるとされていました。

発熱などの症状が出ておらず、一見して健康ながらも、既にウイルスを保有している人も身近なところにいる可能性があります。このようなキャリアが打合せ・会議に出たり、公共交通機関を通じて移動することにより、ウイルスの媒介者となり、感染を拡大してしまう可能性があります。

そのため、疫学的に、打合せ、会議の類、交通機関を通じての移動を、極力減らすことが有効とされていました。

 

経済活動を萎縮させる、子供の死亡率はゼロに近いため学校の閉鎖は疫学的に意味がない、医療従事者の子供が自宅待機となれば親が働きに出られなくなってしまうケースもあり医療リソースが減少してしまう、など、特に学校の休校には批判の意見もあります。それも一考に値するものです。

 

しかしながら、熟議を重ねている時間的余裕はなく、強力なリーダーシップの下で、迅速な意思決定と実行が必要な状況であり、それが危機管理の要諦です。

その際に、リーダー以外のメンバに求められるのは、権利の制限も含めて粛々と能動的に受け入れるフォロワーシップです。

 

Zoomのようなweb会議のソリューションを使って議会が開ければいいのですが、今のところ、そのような仕組みはありません。実用上は可能だと思いますけど。今のところは、正装で、議場という場所に集まって、出席数を確認して~~挙手して指名されたら発言して~~採決するという一連の流れが、議会運営ルールの大前提です。

 

 

自粛するに至った経緯

議会全体で、「取り下げ」要するに中止をすることを目指して、議会内会派である、令政クラブ(自民党系、私が所属しているところ)、日本共産党、公明党の代表者会議では合意したものの、会派に所属しておらず、一人で活動している議員5名の意見を聞くために、全員協議会を開くこととしました。

代表者会議とは別に、議会運営委員会という組織があります。3会派のメンバのみで構成されており、一人で活動している議員5名は意思決定に参画できないので、議会運営委員会で強引に「取り下げ」を決めてしまうという方法もありました。

しかしながら、敢えてこの方法を取らず、全員協議会での全会一致を目指したのは、少数意見に配慮するために、より丁寧な手続きを取った、ということになります。

全員協議会にて、会派に所属しておらず、一人で活動している議員5人の意見を問うたところ、うちの4人が、反対し、この時点で、議会全体での「取り下げ」は無し、となりました。

そこで、議長により、口頭での「配慮の要請」を出したという次第です。

当初は、「自粛の要請」という表現を用いることを模索したのですが、これに対して、代表者会議内で懸念を示す意見があり、最終的には「配慮の要請」に落ち着いたものです。

反対した4議員は、一般質問を強行するようです。

 

 

一般質問中止について、批判の意見もある

<新型コロナ>地方議会、一般質問の中止相次ぐ 「議員の大切な権利」疑問の声も

栃木県足利市議会では、議員も市執行部もマスク着用で開会。一般質問もマスク着用のまま行う=足利市役所で …

他の自治体でも、一般質問の中止は相次いでいますが、東京新聞の報道のように、「議員の大切な権利」を放棄するのは何事か、という批判の声もあります。

 

もちろん、この時期だからこそ、行政当局に対して、要望、提案しなくてはならないことも多々あるでしょう。

私も、国からの小中高校の閉校要請が行われる直前までは、新型コロナ対策の関連で、

・市のマスク備蓄品の市民への原価程度の有償での放出
・学校を含めた公共施設の閉鎖(これは、その後、実行されたわけですが)
・市役所の、窓口以外の部署のオフィス閉鎖とリモートワーク実施

などを提案するつもりでした。

 

新型肺炎 一般質問、初の中止に 「こんな時期に」 市民から疑問の声も 志摩市議会 /三重 – 毎日新聞

新型コロナウイルスの感染拡大に関連し、志摩市議会運営委員会が2日開かれ、5日から始まる本会議での一般質問を中止すると決めた。「感染対策に市行政が万全の態勢で臨むように配慮した」と説明しているが、市民からは「こんな時期だからこそ本会議を開かなくては」と、議会の対応をいぶかる声が出ている。同市議会が一般質問を中止するのは初めて。 …

こちらの記事では、

市民からは「こんな時期だからこそ本会議を開かなくては」と、議会の対応をいぶかる声が出ている。

このような「市民の声」が紹介されています。

 

何をしても、あるいは何をしなくても、反対したり批判したりする人はいるものですが、私としては、このような意見にも真摯に耳を傾けたいと思います。

もはや封じ込めの時期ではなく、感染拡大の防止を目指すべき時期である以上、人と人との接触機会の極小化、行政リソースの集中投下のために、一般質問の自粛というやむを得ない判断は、今の時点では最善のものと思料します。


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