これもよく聞かれますね。
赤字垂れ流しだった蕨市立病院が、コミュニストの現市長の下でバリバリ再建されてピカピカに黒字化されたって本当なの?
と。
結論から言うと、そんなことはないですね。
虚偽とがプロパガンダと言うと、言い過ぎですが、まあ、「黒字基調になった」とまで言うと、明確にウソですね。
それでは、蕨市立病院事業会計の平成30年度決算資料を見てみましょう。
平成30年度は、-78百万の純損失
平成30年度は、78百万の純損失でした。
なお、昨年度 平成29年度は、38百万の純利益でした。
直近5年間の推移は?
それでは、過去5ヶ年度分を見てみましょう。
平成26年度
-6億44百万の赤字
平成27年度
-14百万の赤字
平成28年度
1億37百万の黒字
平成29年度
91百万の黒字
平成30年度
-29百万の赤字
となっております。
会計年度によって、黒になったり、赤になったり、と言ったところですね。
財務会計上の決算の数字なんて、ある程度いじれる部分がありますので、単年度で見てもあまり意味がないかもしれませんね。トレンドを見ないと。
ビジネスをやっていて、銀行にお金をお借りしに行く時は、直近3期分の決算を見られます。
3期連続して黒を出していないと、そもそも融資検討の対象外で、門前払いを食らいます。
私も本業で経験ありますけどね・・・アハハハハハッハ
ついでに言うと、プライベートカンパニを経営している社長個人は、会社の決算が3期連続して黒を出していないと、個人で借金することも不可能です。
累積では?
それでは、累積で見たら、どうか?
利益剰余金は、
-6億60百万です。
これは、要するに、累積赤字を意味します。
資本金 22億83百万
ですが、この資本を毀損していることになります。
異次元の赤字に突入
ところで、↑ この2つ上の画像:直近5ヶ年度の推移の中で、
医業収益-医業費用
を見てください。
この数字は、要するに、医業そのものの損益を示します。
要するに、粗利ということです。
メーカならば、研究開発の先行投資が必要だし、
卸ならば、在庫をたくさん抱えてしまうこともありますし、
サービス業ならば、先行投資でシステム開発をしたり、広告宣伝費を打ったりして、
粗利が赤になることもあるでしょう。
しかしながら、医業の費用というものは、
人件費
薬やら点滴液やらの仕入れ
減価償却費(建物、設備などの、医業そのものに必要な資産に関わるもの)
から構成されています。
どうやら人件費の中には、管理部門の部分も入っているようで、一般的な、民間企業のビジネスにおける財務会計であれば、販管費に含みそうな部分も若干あると言えばあります。
しかしながら、言わば、医業という本業そのものにおいては、よほどのことがない限り、粗利が赤になることなどはあり得ないのではないでしょうか。
直近5年間、純損益は黒転したり赤転したり行ったり来たりといった状況でしたが、平成30年度は、粗利が初めて赤転しました。
これは、今までになかった、異次元の赤字に突入したということになります。
異次元の赤字の理由は、医師の確保の失敗
それで、平成30年度の業績悪化の原因なのですが、
決算書の説明によると、
常勤医師の確保の失敗、と解説されております。
産婦人科において7月と11月に常勤医師が各1名退職したことのほか、外科において常勤医師が病に倒れたことによる影響もあり・・・
まあ、人が辞めてしまったものは仕方がないのですが、辞めた分を適切に補充するのが経営者の仕事であります。
常勤医師が減った結果として、
・入院患者数
・外来患者数
が、大幅に減ってしまっています。
昨対でも減っておりますし、予算に対する達成率は93%です。
蕨市立病院の経営におけるKFSは、「常勤医師の安定的な確保」です。
8年前から、これ、各種の資料に書いてあります。
常勤医師が16人しかいない小規模な病院ですので、一人辞めただけでも、収益へのインパクトは極めて大きいのです。
今まで、ベストの経営努力をして果たせなかったのか、そもそも経営努力をしてこなかったのかは分かりませんが、なお一層の経営努力を望みます。
その他
ちょっと気になるのは、これ。
建物の償却残が、9億70百万あります。
建物、というのは、市立病院の
・本館(昭和45年築)
・サービス棟(昭和45年築)
・リハビリ棟(平成12年築)
のこと。
大規模修繕の費用も、「建物」に入っているはずです。
定額法で8~39年ということになっていますけど、
市立病院の建物は、耐震診断の結果が不合格となっており、耐震対応(建て替えか、耐震補強か)が喫緊の課題となっています。
取り壊す際は、残を一括償却しなくてはならない可能性があり、これが隠れた爆弾かもしれません。
あともう一つ、
一般会計からの繰入は、
2億57百万です。
このうち、↑ の画像の中の
・救急医療負担金
・企業最利息負担金
・児童手当補助金
・院内保育所負担金
は、公営企業への繰出基準に基づくものですが、
・企業再償還金負担金
1.3百万
は、基準外のようですので、金額は小さいですが、一般会計からの赤字補填と言えます。