【蕨市議会】2014年6月定例会一般質問 小学校の少人数学級推進事業(35人程度学級)について

先のエントリで述べたように、私が現在立案中の「存在感大きな街 ビッグシティ蕨」構想においては、教育と子育て支援に当初重点的に行政の経営資源を傾斜配分するものとします。

 

教育の目的は何か?

そもそも何を目指すのか?
平均的な底上げを目指すのか、エリート教育を目指すのか?落ちこぼれの発生防止を目指すのか?

少なくとも言えることは、現今の我が国の公教育にはエリート育成は求められていない、ということです。これは今の時点では、大前提です。

ここでは仮に、
・平均的な学力の向上(平均的な底上げ)
・最低限の学力の習得(落ちこぼれの発生防止)
・健康の維持、体力の向上
・民族に共通する価値観の育成
・集団活動を通じた社会性、協調性の育成
・人間関係を築く力の育成
・組織の中でのリーダーシップ/フォロワーシップ/メンバーシップの育成
・競争意識の育成
とします。

これらの全ての項目に、本来であればKPIと目標数値を設定すべきですが、今時点では設定を留保します。

 

教育の効果を極大化するためには、質と量のどちらが重要か?

上記で、教育の目的を仮に設定しましたが、これらの目指すに当たり、教育経済学的アプローチから、「教育の質」と「教育の量」のどちらに力を入れるのが教育政策として費用対効果が高いのかを考えてみましょう。

このテーマについては、様々な研究が為されていますが、学力向上に関しては、概ね、量より質が重要であることが明らかになっています。

参考)OECD, 『有能な教師の獲得、能力開発、定着 日本語抄要約』, 2005年の6ページ目

現在では多くの調査研究から、教師や授業の質が生徒の成績に大きく影響することが明らかになっている。

 

教育政策を考えるに当たり、「教育の質の向上」と「教育の量の向上」のどちらを行うのかを、分けて考えよう

学力向上に関しては上記の通り「量より質」が定説となりつつあります。しかしながら、教育の目的は、上記で設定した通り、学力の向上だけではありません。

教育政策を考えるに当たっては、
・その政策は、「教育のの向上」を目指す政策なのか
・その政策は、「教育のの向上」を目指す政策なのか
を分けて考えることが重要です。

 

教育政策の定量的効果検証を行うことが必要

その政策が
・何を目的としたものなのか?
を明らかにした上で、
・その政策の成果を評価するKPIと目標数値を設定し、事後評価を行う
ことが必要です。

ある教育政策について、何となく良さそうだから予算と人員を投入して実施してみたものの、実はさっぱり効果がなかった!ということもあるかもしれません。

 

学級規模の効果に関する教育学の評価

少人数学級政策は、第一義的には「教育の量の向上」を目指すものです。
(投入する教師数の増大、生徒一人当たりの教師接触回数・時間の増大)

学級規模の効果について、教育経済学では様々な研究が為されています。
大人数学級と少人数学級を比べて、
・学力の向上はどのくらい違うのか?
・いじめ件数がどのくらい違うのか?
・学級崩壊の状況はどのくらい違うのか?

実証しにくいテーマであるために、定説が確立している訳ではありませんが、概ね、
少人数学級の効果は、有意には観察されないか、観察されたとしても非常に小さい
という結果がほとんどのようです。

参考1)小塩隆士, 『教育を経済学で考える』, 2003, 日本評論社

学級規模と数学(算数)および理科のテストの結果との関係を調べて・・・どちらの教科でも、また小学校・中学校のいずれにおいても、学級規模とテストの点数の間にははっきりとした関係は確認できない

参考2)財務省主計局, 『文教・科学技術関係資料』, 平成25年10月の18ページ

25年度全国学力・学習状況調査におけるきめ細かい調査において、少人数学級は学力
の向上に有効との結論は得られなかった。
日本の都道府県毎の実績を見ても、学級規模と学力、いじめや不登校の発生件数の間
に相関関係は見いだせない。

 

蕨市の小学校の少人数学級事業(35人程度学級) の現況


蕨市では、2010年から小学校の少人数学級が導入され、段階的に拡大しています。
今年度(2014年度)では、5クラス分(市費教員:7名)となっています。年度によって、デフォルトで35人程度学級が実現している年と、市費教員を投入しないと実現しない年があるために、 年によって市費教員数は変動しています。

 

蕨市 小学校の少人数学級推進事業(35人程度学級)の費用対効果検証を

上記で述べてきたように、少人数学級制は、一般的に政策としての効果がない(低い)と言われております。
他方で、蕨市ならではの特殊要因があって、特別に蕨市では効果を上げている、というのであれば、是非とも続けていくべきでしょう。

しかしながら、効果が無いのであれば、どのような形で今後この制度を運用していくのか、考えなくてはなりません。

少人数学級制は、なんとなーく良さそうなイメージがあります。
クラスの人数が少なくなれば、単純に、先生は楽になるし、生徒は一人ひとりが丁寧に面倒を見てもらえるし。
しかし、実際に効果があるのかどうか?

 

今回の一般質問でこの点を明らかにした上で、
今後の「存在感大きな街 ビッグシティ蕨」構想の教育政策を考えるに当たっての材料としたいと考えています。


【蕨市議会】2014年6月定例会一般質問 教育と子育て支援に力を入れるべき理由

先のエントリに書いた、2014年6月定例会一般質問の内容について、以下、幾つかのエントリに分けて解説します。

その前に、教育と子育て支援に重点的に力を入れるべき理由について、以下解説します。

 

「存在感大きな街 ビッグシティ蕨」構想では、教育と子育て支援に経営資源を当初傾斜配分

私が今、立案中の「存在感大きな街 ビッグシティ蕨」構想においては、
蕨市は、首都圏内で競争力の高い行政サービスを提供し、そこに住むことをみんなに羨ましがられ、みんなが住みたがる蕨市になることを目指すものとします。

限りある経営資源を効率的に用いるために、以下の理由から、
教育と子育て支援に、当初は行政の経営資源を傾斜配分するものとします。

 

行政サービスの競争力の源泉

行政サービスの競争力の源泉は、
・先進性
・優位性
から成り立ちます。

ビジネスモデルと異なり、政策モデルには知財権はないので、よその自治体でやっていて成功しているモデルは幾らでもパクればいいので、「独自性」は、実はそれほど価値がありません。他所よりもいち早く新しいことに挑戦する先進性にこそ価値があります。
優位性は、定量的なKPIをよその自治体と比較することによって評価されます。

 

蕨市競争力強化のための雁行形態論

行政の経営資源(主に、予算と人員)には限りがあるので、全ての分野において同時並行的に力を入れることは出来ません。
全ての分野において同時並行的に力を入れようとすると、経営資源は広く薄く投入されることになるために、全ての分野において中途半端な成果しか生み出せません。

そこで、まず最初に重点的に力を入れるべき分野を設けることとし、それを
・教育
・子育て支援
とします。

教育、子育て支援分野における、首都圏内衛星都市 ・ベットタウン都市間での競争力を強化することにより、可処分所得の高い子育て世帯の市外からの流入を促します。

可処分所得の高い勤労世代の人口増によって、教育・子育て環境はますます向上するとともに、蕨市財政における税収増をもたらします。

税収増によって、他の行政サービス分野における充実を図ります。

 

まず留意していただきたいのは、これは、教育・子育て世代という特定世代の優遇ではない、ということです。
教育と子育て支援は、特定世代だけに向けたサービスではなく、全ての世代が恩恵をこうむる公共財です。
上記の雁行形態論が、限りある経営資源を最大限活用し、蕨市の競争力を強化するためのベストシナリオであると考えます。
最終的な目的は、全ての行政サービス分野における、競争力の強化です。

 

また、「風が吹けば桶屋が儲かる」的な、都合のいい夢物語でもありません。
お隣りの戸田市においては、埼京線開業移行、広大な遊休土地へのマンション建設ラッシュが続いており、可処分所得の高い子育て世代が市外から流入してくることによって人口増、税収増がもたらされ、行政サービスが充実しています。