陸前高田視察レポート

2週間前の2014年7月1日(火)に、所属している蕨市議会の自民党系会派 新生会において、津波の被災地である陸前高田市に視察ツアーに行って参りました。

津波の後の陸前高田には、2回訪れたことがあります。私費で。
今回は、前回訪問からわずか2ヶ月後なので、それほど大きな変化は観測出来ませんでした。会派の視察ツアーは、会派所属議員全員参加が必須である上に、行き先の意思決定に当たってはベテラン議員の意向が反映されます。事実上、私が「2ヶ月前に行ってるから」ということで参加を拒むことは出来ませんでした。

hoya_t blog : 東北被災地巡り その6 南三陸~気仙沼~陸前高田 (2014年4月)
hoya_t blog : 2012年4月 津波の被災地に行ってきた。(8)気仙沼~陸前高田 (2012年4月)

 

JR大船渡線のBRT


気仙沼駅構内。
BRT(専用軌道の代行バス)のための専用プラットフォーム。


気仙沼駅前のBRTバス停。

BRTは、乗ってしまえば普通のバスです。
座席が窓に向けて配置してあるなど、単なるコミューターではなく、観光客が喜びそうな内装にもなっていました。


BRTの中から。
陸前高田市内の盛り土現場。


陸前高田市内の盛り土現場。


山を切り出して盛り土用の土を平地(旧市街地)に運ぶための大型ベルトコンベア。


そして、仮設の陸前高田市庁舎へ。
何年でも使えそうな、綺麗で機能的な建物です。
しかし、あくまでもプレハブなので、耐震性は低いでしょうね。

 

人員体制(津波による多くの職員の死亡・行方不明と、全国の自治体からの応援職員)

正規職員数は、
震災前:295人
内、68人が死亡・行方不明

震災後に増員を進めて、
現在:270人
+105人 全国の地方自治体からの応援職員

後述のように、一般会計が復興のために一時的に膨張しています。そのため、仮設プレハブの市庁舎も増築を重ねておりますが、人手が圧倒的に足りない状況です。

応援職員については、国や県の職員は、対住民の直接サービス提供をやったことがないので、使いものにならないとのこと。

理想的には、人の派遣ではなく、部署丸ごと派遣してもらい、一つのセクションを丸投げしたいとのこと。

 

一般会計の一時的膨張

震災前:110億 (人口24千人)

今:1,300億 (人口21千人)

ということで、12倍に膨張しています。
もちろん、補助金を原資とした復興予算の増大によるものです。
参考値として、蕨市の一般会計は219億(人口72千人)です。

これらの予算を使うのは大変な仕事で、単純に人員体制を数倍規模に拡大しないとオペレーションが回らないでしょう。

そのため、盛り土を含めた復興系土木業務一切をURにアウトソーシングしているとのこと。
たしか大槌町の復興系土木業務一切もURが仕切っているようだったし、URにとってはかなり砂金嵐な状況。しかし、そもそも、URってそんな仕事のノウハウ持ってるのだろうか?
行政側に案件を仕切れるだけの十分な人的リソースがあれば、直接ゼネコンに発注すればいいわけで、何とももったいない。

 

復興の最大の課題:土地の権利処理

被災した沿岸地域は既にガレキは撤去され、更地になっている。
これからやることは、発想としてはシンプルで、盛り土をする、というもの。

しかし、それぞれの土地には所有者がいて、行政が勝手にいじるわけにはいかないので、土地所有者全てと交渉をしなくてはならない。
この用地交渉の作業が一番大変なのだそうだ。

相続の時にいいかげんに処理しているところも多く、地権者が誰だか分からなかったり、遥か遠方に住んでいたり、30人の用地係があっちこち走り回っているらしい。

国に対して、用地交渉をせずとも行政が勝手に盛土が出来るように制度改正を求めているとのことだが、これは多分実現不可能だろうとのこと。

 

被災地間での復興最速の秘訣

私の観察によると、各被災自治体の中で、陸前高田市が最も復興が進んでいる。

その秘訣を知りたくて、ずばり先方に聞いてみたのだが、いまひとつしっくり理解できる回答は返って来なかった。

 

非常時の行政と議会とのコミュニケーション/議会・議員が果たすべき役割

非常時(災害発生直後の混乱している時)に、議会・議員がどのような役割を果たすべきか?

蕨市議会においては、
現状では、非常時に議会・議員が果たす特別な仕事は何もない。平時と何も代わりはない。

議員の一部の中には、「議員は特別なんだから、行政側は、議員に対して特別に情報を流すべきだし、特別な役割を与えられるべきだ」みたいな意見も存在する。

私は、 以下のエントリで述べたように、非常時には首長に権限を集中し、議会は首長・行政の仕事の邪魔をしないようにするべきだと考える(だからこそ、共産主義者を首長にしたらダメなんだ!)。また、行政との市民との間の情報伝達・コミュニケーション経路はシンプルであるべきであり、かつ多元的であってはならないので、網羅性の高い、町会などの自治組織を活用するべきだと考える。非常時の行政の仕事を無駄に増やすべきではない。
hoya_t blog : 2012/8/20 危機における市議の役割

陸前高田市においては、今後の課題として、非常時の行政と議会とのコミュニケーション経路を、
行政 ←→ 議長(市議会議長)
に一元化し、個々の議員は全て議長を窓口をする体制を作ろうとしているとのこと。
個々の議員が好き勝手に口出ししないようにするための仕組みで、これはこれでアリだろう。