市の図書館に求められる役割

個人的には、図書館という空間は好きで、学生時代はよく通っていた。

大学受験の時は豊島区立図書館でよく勉強していた(高校が豊島区にあったので)。大学時代は、家がチャリで5分の距離ということもあって、閉館時間までこもってよく本を読んでいた。たしか大学3年生くらいのとき(1995年か?)に入れ替えられた大学図書館のPCにMosaicが載っていて、初めてWorld Wide Webに触れたのは、この端末からだった。

今も図書館は好きだけど、うーん、全然使わない。
学生時代と比べれば、欲しい本は即買える程度には稼げるようになったからでもあるし、ネットが普及して、調べ物をするために図書館を使う必要性がなくなったからでもある。

 

市の図書館に求められる役割って何だろう?

大学図書館や国会図書館ではなく、地域密着の、市町村に求められる図書館の役割は、ざっくり言うと以下の3つだと思う。

・アーカイブ
・レファレンス
・場の提供

アーカイブは、新聞、雑誌、書籍の保存。今すぐ読まれなくとも、将来閲覧される可能性があるものを、とにかく網羅的に保存することが目的。
しかし、インターネットと電子書籍インフラの普及に伴って、いつでもどこからでもあらゆる情報を閲覧できる環境が出来上がりつつあるため、図書館に求められるアーカイブの必要性はどんどんなくなっていくだろう。
今はどこの公立図書館でも主な新聞と雑誌は全て購読して保存しているけど、近い将来、不要になるんじゃないかな。

レファレンスは、知へのアクセス手段の提供と、その利用のサポート。
子供~学生の、素朴な興味関心・好奇心を、知的な欲求に高めて上げることをサポートする環境を提供すること。コップの水の表面張力を不思議に思った洟垂れ小僧が、将来はノーベル賞級の研究者になるかもしれない。

場の提供は、学生が勉強する場所/シニアの生涯学習の場所を提供すること。
このような場は、民間でも提供されていて、例えば蕨近辺なら錦町イトヨのフードコートや戸田のマックに行けばよく中学生、高校生が教科書を広げて勉強しているが、将来に渡っても、公の役割が無くなることはないだろう。

尚、暴論かもしれない私見だが、「娯楽の提供」は、公立図書館に求められる役割ではないと思う。
例えば、村上春樹の新刊とかが出たりすると、数冊入荷したその本には予約がたくさん入って、何十人待ちになったりする。アーカイブとレファレンスが目的ならば、在庫は1冊で十分だし、読みたい人は自分でお金出して買えばいいのに、と思う。
もし、公立図書館が人気の新刊を100冊くらい仕入れて貸し出しまくったら、それこそ民業圧迫だと思うんだが。

ということで、今後の市の図書館に求められる役割は、
・レファレンス
・場の提供
の2つとなっていくだろう。

 

図書館は、市の競争力の源泉になり得るか?

図書館は、決してコストセンタではない。
しかし、プロフィットセンタ・・・とは自治体経営の場合は言わないけど、競争力の源泉とはなり得るだろうか?

例えば、
「○△市は、駅前が綺麗で便利だから、あそこに住みたいな~」
「※◇市は、小中学校教育が優れているから、引っ越したいな~」
ということは、よくあるだろう。

つまり、駅前の便利さ・綺麗さ・賑わいや、公教育の充実というのは、市町村にとっての競争力の源泉となり得るだろう。

では、「図書館の充実」は、競争力の源泉になり得るだろうか?
「□◎市は、図書館がスゴいから、あそこに暮らしたいな~」
と思うものだろうか?

まあ、中にはそういう人もいるかもしれないが、あまり多くなさそうだ。

 

hoya_t blog 2013/8/9 : 武雄市図書館の見学

↑一昨年の夏に、CCCを指定管理者として誘致した、佐賀県武雄市の図書館を見学してきた。たしかに立派な施設で、利用者にとっては便利になって、快適で居心地のいい空間が出来上がったが、大きな公費を投入したこともあり、未だに賛否両論あるようだ。

 


私見だが、図書館は、市の競争力の源泉にはならない。

図書館を、過剰に綺麗に、豪華に、立派に整備したところで、市の競争力が増すことには繋がらない(あるいは、繋がりにくい)。

 

蕨市図書館において、指定管理者制度の導入検討をする際の、私の視座

市の経営リソースが限られている以上、市立図書館に、過剰にリソースを投入して、サービス内容のアップグレードを目指すべきではない。
武雄市のTSUTAYA図書館のようなものは、蕨市が目指すべきものではない。

指定管理者制度の導入を検討する議論においては、現行のサービス内容・サービスレベルを基本的には維持しつつ、いかにコストダウンを図れるか、という視点を持って臨みたいと思う。

もちろん、民間にアウトソーシングすることによって、大きくコストアップせずにサービス内容・レベルの向上することが出来るのならば、どしどし導入すべきで、従来より市民からの要望が多い、
・営業時間の拡大
については、是非とも「コストアップしないで実現」をしてもらいたいと思う。

建物の老朽化については、何としたものか。
あの建物、既に古くなっているけど、ツギハギをしながらあと何年くらい使い続けられるものか?建物の老朽化・耐震性の低さについては、素人目には、市立病院の方がよりクリティカルなので、優先すべきような気がするけど、どうなんだろう?
新年度(平成27年度)予算がついたファリシティマネジメントの報告を読んでから判断したいところ。


市立図書館への指定管理者制度の導入に関する考察

hoya_t blog 2015/2/17 : 指定管理者制度導入によるリストラ効果
この記事の続き。

私が所属している蕨市議会における自民党系会派:新生会では、平成26年度予算要望(平成25年の秋に出したもの)から、2年連続で、重点項目として

・市立図書館への指定管理者制度の導入

を訴えている。

この項目を追加するにあたっては、
・どのくらいのリストラ効果の獲得を目指すのか?
・老朽化した市立図書館の建物を、今後どのようにしていくのか?
・サービス内容・レベルの、何らかの向上を目指すのか?今のままで、リストラ効果の獲得のみを目指すのか?

といった、深い議論は、ありませんでした。

元々、自民党系会派:新生会では、市内公共施設の再整備再配置(廃止、統合、縮小など、要するにリストラですね)を唱えていて、その一環として、ある会派メンバが「図書館の指定管理者制度の導入」を主張しました。
私個人的にも、今後高齢化が進みつつ人口は横ばいが見込まれる中で、ジリ貧になる前の戦略的リストラは必要と考えていたため、賛成したものです。
従って、「図書館の指定管理者制度の導入」といっても、会派内のメンバそれぞれ、イメージしているものは違うかもしれません。

ですので、表現としては、「図書館の指定管理者制度の導入の検討」くらいの方が適当だったかも知れません、今さらですけど。私も個人的には、他の会派メンバがどう考えているのか、ちょっと聞いてみたいですね。


(単位:百万円)

図書館運営費は、年間でだいたい48百万くらい。
この金額には、イレギュラーな出費である、建物の改修費用を含む。
(あー、改修費用は項目分けて数表作ればよかった・・・失敗した。今から調べ直すのは面倒なので、このままで行きます)

内、書籍購入費用は17百万。

金額は、ほとんど横ばい。

尚、正規職員は、係長級(館長)1名+スタッフ8名。
これらの正規職員の人件費は、上記の運営費には含まれていないはず。バイト・パートのみが含まれているはず。

図書館運営費のうち、書籍購入費用を除いた分は、31百万。
先のエントリで調べたように、市民体育館における指定管理者制度の導入において、-33.5%の経費削減(人件費分を除く)が出来たことを考えると、市立図書館に指定管理者制度を導入すれば、10百万程度+人件費の削減が出来るかもしれない。

 

 

以上は、指定管理者制度の導入に伴う、リストラ効果だけの話。

 

もし仮に、新たな制度を導入するのならば、市民からの要望が多い、

・営業時間を遅くまで伸ばして欲しい(現状は18時まで)

は何としても実現して欲しい。

おそらく、現状の市の直営体制でも、バイトのみの勤務シフトを組めば夜間延長は可能だと思うが、いろいろ面倒だし、コスト高なのでやらないのだろう。

 

今後の公立図書館に求められる役割

続きは別途。


指定管理者制度導入によるリストラ効果

指定管理者制度の概要

「指定管理者制度」という仕組みがある。
行政の一部の業務を、民間事業者に5年程度の中期契約でアウトソーシングするというもの。

蕨市webサイト : 指定管理者制度

蕨市においては、以下の施設運営が指定管理者にアウトソーシングされている。
・市民体育館
・市民会館
・市民プール
・社会福祉センター内の施設
・駅前のくるる と、旭町公民館

メリットは、ざっくりいうと、リストラ効果。
市が直営している時と比べると、市の職員が要らなくなるので人員削減できるし、民間事業者のノウハウを活かして低コストで運営できるようになる。

デメリットは、正直、個人的には今ひとつよく分からない。
アウトソーサー選定の入札の手続きや、発注金額の見積りを適切に行えば、デメリットはないような気がする。逆に言うと、これらに失敗すると、無駄に高い金額で契約してしまったり、おかしな業者に発注して、サービスレベルを不当に低下させてしまうこともあり得るかもしれない。
また、市の直営からアウトソーシングに切り替える時は、それまでのスタッフの処遇をどうするのか、雇用の問題は発生する。

 

蕨市民体育館における、指定管理者制度のマクロのリストラ効果


市民体育館においては、平成18年度から5年契約で指定管理者制度が導入されている。
現在は、23年度からの2期目で、27年度に契約終了する。
今のところ、28年度以降はどうするかという議論は議会で話題になっていないけど、たぶん、5ヶ年契約の入札を再度行うことになるのかと思う。
17年度までは市が直営していた。

市民体育館は、個人的には使ったことない。
選挙の開票立会いの仕事で、3回だけ足を踏み入れたことがあるけど、それ以外の利用体験はまったくない。

そんなわけで、ユーザ視点から見た、サービスレベルの変化は私にはまったく分からない。
昔から市民体育館使ってた人は、教えて下さいませ。

そこで、取り敢えず、マクロの数字をみて、経年で、どのくらいリストラ効果があったのか見てみよう。

(以下、数表とグラフは、クリックすると拡大する)

余談だけど、紙ベースの決算書のページをめくって、excelで手打ちでデータを作った。しんどい作業。早くオープンデータ実現して欲しい。

15-17年度は、市の直営の時代。
管理運営費は、平均で71百万円。
この中には、バイト・パートの人件費は含まれているものの、市の正規職員の人件費は含まれていないはず。
何人の市のスタッフが関わっていて、人件費総額が幾らなのかは、ちょっと今は分からない。
7-8人くらいか?
ざっくり年俸500万、販管費50%として、一人当たり人件費750万と仮定すると、人件費総額は5,250万-6,000万くらい?

18年度から指定管理者制度が導入された。

第1期(18-22年度)は、指定管理料の年間固定額は、43.4百万円。
第2期(23-27年度)は、36.4百万。どういう計算式か分からないが、年ごとに若干変動があるので、固定費+従量費のような契約体系に変更したのかもしれない。契約金額を削減できたようだ。他方で、管理運営費全体に対して、指定管理料以外の部分が拡大しているので、契約範囲を縮小したようである。管理運営費全体は、第1期と比べると拡大している。

指定管理者制度の下においても、全てを丸投げしている訳ではないので、市の正規職員は何らかの形で何らかの業務を行っているはずだけど、何人月程度の工数が発生しているのは、分からない。

ということで、
市の正規職員の人件の内訳はよく分からないので、人件費を除いた、
管理運営費全体は、

市の直営期(15-17年度):71.1百万円
第1期 指定管理者制度期(18-22年度):45.7百万円
第2期 指定管理者制度期(23-27年度):48.9百万円

と、ざっくり、年間で-33.5%、-23.8百万円くらい、けっこうなリストラ効果があったことが分かる。

尚、この指定管理料の算出根拠は、分からない。
従って、リーズナブルなものなのかどうかは、何とも判断しがたい。他の自治体における市民体育館の指定管理料の事例を調べて比較してみるといいが、ちょっと今はそこまで手が回らず。


(単位:百万円)