庁舎整備検討報告書(1) 市役所庁舎はどこに置くべきか?

先月2017年1月付けで、庁舎整備検討報告書が出ました。

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蕨市webサイト上にはアップされていないので、公開資料なのか非公開資料なのかどうかは不明。
議会議員は、市と(行政と)秘密保持契約を締結している訳ではないので、たとえこの資料が行政にとって非公開資料だったとしても、私が縛られるものではありません。
まあしかし、市庁舎改修ないし建て替えというのは、様々な思惑が絡んだ大事業なので、私が行政側の担当者だったら、あまり人には見せたくないでしょうね。面倒だから。

 

報告書を書いた主体である、蕨市庁舎整備検討委員会というのは、市役所の部長級と課長級のみによって構成されております。言わば、テクノクラートによる専門的な見地からの結論と言うべきものですが、行政府の長である、市長の思惑は当然反映されていると見るべきでしょう。

 

担当部署に幾つか質問を投げかけているところであり、それらを確認してから、報告書の内容の解説と所見については述べることにします。

蕨市役所

蕨市役所(2013年4月撮影)

 

 

市役所庁舎を移転させるのは、かなり大変

役所の庁舎を建て替えるに当たり、
・同じ場所で建て替え
・別の場所に建て替え
という2つのやり方があり、別の場所に建て替えた方が、引っ越しは1度で済むからその分のコストは縮減できる。

しかしながら、移転の話が出たら、現庁舎周辺の人達(町会組織、商店街組織等)は全力を挙げて反対するだろう。

蕨市は人口7.3万だが、市役所の職員はだいたい400人くらいで、ちょっとした大企業の本社くらいの規模なので、もし仮にこれが移転したら、周辺の小売店、飲食店の影響は大きい。
(400人という数字は、どこかで聞いたうろ覚えのものなので、正確ではないかもしれない。非正規スタッフを含む数字かどうかも今は分からない。あくまでもだいたいそのくらい、ということで。)

蕨市の場合で言うと、今の市役所は、中央地区・中山道商店街の近くにある。
これらを地盤とする議会議員は、全力を挙げて反対するだろう。
地域の利益代表としての性格を持つ議員に、その種のバイアスが掛かるのは当然のことだ。

私は錦町地区を地盤とする、錦町地区の利益代表であるが、この地域には小売店の売上・飲食店の出前などで市役所のスタッフ・来客に依存しているところは無いので、私の考えには、全くバイアスは掛からない。

 

 

市役所庁舎は、市の地理的な中心置くべきか?

地理的な市の中心にあった方が便利と言えば、まあ便利だろう。

しかし、国内で市の中で面積最小、たったの5.1平方キロしかない蕨市においては、正直、どこにあってもいいのではないか。

今、google mapで調べてみたら、蕨市の東端(塚越6丁目)から西端(錦町6丁目)まで、4.9km、クルマでの実移動時間は20分に過ぎない。

市役所が端にあっても別に、たいした問題ではないんじゃない?

 

ところで、日本で最大の面積の市は、岐阜県高山市だが、ここはなんと2177.6平方キロもある。
市域に北アルプスも含むので、奥穂高岳や槍ヶ岳の山頂から市役所までの移動時間を測っても意味は無いのだが、現実的に、国道に接する、人がいる場所ということで、西端の御母衣ダムの荘川桜から、東端の平湯温泉スキー場までを調べてみると、83.4km、クルマでの(一部は高速道路を使っての)実移動時間は1時間27分も掛かる。

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(昨夏、北アルプスをテン泊縦走したとき。穂高岳山荘のテン場から奥穂)

さすがに、こんなに広い市だったら、市役所庁舎は地理的に中心に置くのが、効率がいいだろう。

 

 

市役所庁舎は、駅の近くに置くべきか?

蕨市民の多くの人が出入りする玄関口である、蕨駅の近くにあった方がいいのだろうか?

蕨駅を使って通勤・通学する人にとっては、たしかに駅近くに役所の窓口があった方が、便利かもしれない。

他方で、駅近くは地代家賃は高い。
市役所庁舎にはクルマでやってくる人もたくさんいるわけだから、狭隘な駅近くの交通渋滞の原因にもなるかもしれない。
駅近くに置くことのマイナスもたくさんある。

 

 

そもそも、市役所庁舎の場所って、そんなに大事か?

そもそも、一般の、普通の市民は、どのくらい市役所庁舎に用事があるものなのだろうか?

私は議会議員なので、ちょくちょく行くけど、一般の、普通の人はどうなの?

私の例で言うと、2011年に当選するまでは、住民票と納税証明書を取りに行くのに年に1,2回行くくらいだった。

平成27年度 市民意識調査の「過去1年間の公共施設の利用状況」項目によると、市役所の利用状況は、
・月に1回以上利用 5.6%
・年に数回利用 64.4%
・利用しなかった 20.1%
・無回答 9.9%

蕨市webサイト : 平成27年度 市民意識調査報告書(PDFファイル)

来月2017年3月定例議会に上程される予定の、2017年度予算案が可決されれば、2017年6月から住民票・印鑑証明書・戸籍謄本のコンビニ交付が実現する。今後はますます、一般の、普通の市民が市役所庁舎に直接赴く頻度は低くなるだろう。

まあ、この程度のもんなら、市役所庁舎なんて、正直、どこにあってもいいかな?
特に市域が狭い蕨市ならば。
はっきり言って、圧倒的多数の市民にとって、市役所庁舎の場所なんてどこだっていい。

 

 

そもそも市内になくてもいいかも?

一種の思考実験だけど、そもそも市内になくてもいいかも?
現に、沖縄県竹富町の役場は、交通ハブである石垣市内に設置されているし、法的な制約はないはず。

優良な場所が確保できるならば、隣接市内に土地を買って建てる、というのもアリかもしれない。

何か問題あるかな?
なさそうだな。

 

あるいは、窓口業務機能は市内に置いておくとしても、バックオフィス業務機能は地代家賃と人件費が安い、市外に設置してもいいかもしれない。

人件費を安く抑えるために、市役所のスタッフの、正規職員から非正規職員(アルバイト・パート)への切り替えが進んでいるが、今後、同一労働同一賃金の法則に基づき、非正規職員の人件費を抑制することが難しくなってくるかもしれない。

そうすると、大胆に業務のアウトソーシングが進んでいくだろう。

更に進めていくと、国内に置いておく必要すら無いかも。たかだか地方自治体の業務に、安全保障上の懸念はないので、オフショアリングするのもアリかもしれない。