蕨市庁舎の建て替え?問題の行方

老朽化著しい蕨市庁舎を、これからどうするか?耐震補強?免震補強?するのか?建て替えるのか?という問題についての、2017年9月頭、現時点でのまとめ。

蕨市役所

 

市庁舎の現況

上の写真の蕨市庁舎(市役所)は、鉄筋コンクリート造、地上4階・地下1階建て。
昭和39年に建てられたので、今年で築53年ということになる。

平成8年の耐震調査によると、IS値(構造耐震指標):0.34で、完全に不合格

平成23年に軸耐力補強工事を行っている。
これは、いわゆる耐震・免震工事とは全く異なる概念で、地震に遭った時に、瞬時にぺちゃんこになり、中にいる人が下敷きになるのを防ぐための最低限の工事。いざ被災したら、中にいる人は助かるが、その後は建物はまったく使えない。

市庁舎は、いざ災害の時には、災害対応・復旧活動の拠点となるので、特に強い耐震性が求められる。

 

今までの議論の経緯

平成29年1月
庁舎整備検討報告書が出る。
これは、蕨市庁舎整備検討委員会によるもの。要するに、行政組織の内部で出したもの。

解説は、以下の記事にて。

hoya_t blog 2017/2/7: 庁舎整備検討報告書(1) 市役所庁舎はどこに置くべきか?

なお、このシリーズは(1)で何となく終わってしまったので、(2)以降の記事は存在しないのですが、あまり気にしないでください(笑)

 

平成29年5月~
庁舎整備検討備審議会が開かれ、具体的にどうすべきかを議論している。←今ここ

蕨市webサイト : 蕨市庁舎整備

審議会というのは、市長が諮問をしたテーマについて話し合って、結論を出して、答申する機関。ここでの答申内容には法的拘束力はないが、答申を受けた市長としては、重く受け止める必要がある。
審議会の顔ぶれは、商工会議所・町連(町会長の集まり)・PTAなどの市内団体からの派遣、市議会からの派遣、学者、公募委員などから成っている。

 

本年(2017年)5月から既に4回会議が催されている。

最新の会議は8月31日に開かれ、ざっくりまとめると、

・8月実施の市民アンケート結果:64.4%が現在地での建て替えを支持
・答申の素案:現在地での建て替え
 (あくまでも素案として。議事録はまだ公開されていないので不明だが、会議の中で、修正された可能性もある。)

という流れのようである。

 

審議会の中では、
(a)市民会館との複合施設としての建設
(b)蕨駅西口再開発における建設
(c)小学校を統廃合して空いた土地に建設
等の案も検討されたが、
個人的には、大地震がいつ来るかも分からず、今すぐにでも建て替えなくてはならない状況で、合意形成に時間がかかり、いつできる分からない(b)、(c)は、現実的に極めて困難で、ほとんど不可能に近いと思っていた。

私個人的には、今回の結論は妥当なものだと思う。

 

今後の流れ(予想)

「市庁舎は、現在地て建て直そう」という審議会の答申は、10月に市長に提出されることになる。

おそらく、今後は、市長・行政も、市議会も、この方針で動き出すことになるだろう。

今すぐにでも建て替えなくてはならない状況下だが、庁舎整備検討報告書によると、現在地での建て替えは、設計-解体-建設など諸々全ての期間が7年かかる見込みとのこと。
できるだけ早く進めるべきと思料する。


災害時における市議会議員の役割

先日、蕨市議会において、掲題の講演会があった。
(正確に言うと、議会改革特別委員会において、外部講師をお呼びした講演会・勉強会)

講師は、鍵屋一氏で、元 板橋区の行政マン。現在は大学教授かつ、複数の防災系の非営利団体の役員などを務めている方。

 

なかなか面白い話を聞いたので、幾つか、ファインディングスと、私なりの所見を以下にメモ。

 

・大災害時の地方自治体では、行政の現場は、とても忙しい(当たり前だが)。
本来の行政サービスの原則である、公平性が守れないケースもある。

これを、公平ではなくても止むを得ないと考えるか?何が何でも公平でなくてはならないと考えるか?

大災害発災時に、公平にデリバリすることが不可能であるが故に、せっかく届いた救援物資が受け取ったまま放置されていた、なんてケースをどこかで聞いたことがある。このような場合、遠くの避難所に行き渡らないとしても、目の前の避難所に取り敢えず配布することを良しとするかどうか?

 

・地方自治体における、地方議員は、どこの政党・会派の人も、多かれ少なかれ、出身地域の利益代表としての性格を持っている(これも当たり前)。

「よその避難所には◯×は届いているのに、うちの避難所には届いていない!」というケースがあれば、その地域の議員の立場としては、行政に対してクレームをつけざるを得ない。

このような場合、現場の行政マンとしては、その議員からのクレームへの対応のプライオリティを上げざるを得ない。

個別の議員としては、このような状況下では、「言ったもの勝ち」なので、とにかく自分の地盤とする地域に利益誘導するしかない。
(個別の議員の立場としては、それ以外の選択肢はない。)

結果として、無駄なコミュニケーションコストが発生し、全体最適も実現しない、ということにもなりかねない。

 

・大災害時においては、とにかく行政の人的リソースが足りない。

無駄な作業は、できるだけ少しでも省きたい状況。
例えば、議員からの電話を一本受けるだけでも、5分なり10分なり時間がかかり、その分、他の作業ができなくなってしまうことになる。(当たり前だ)
それを必ずしも無駄とは言えないが、現実的には、全体最適の実現を阻んでしまうことも少なからずあるだろう。

 

・大災害時においては、現場の行政マンのメンタルヘルスケアがぼろぼろ。

例えば、自治体のBCP計画(有事の役割分担を定めたもの)において、ご遺体処理とか遺族対応の役割を割り振られている部署があったりする。もちろん現場の行政マンは一所懸命に目の前の仕事をこなすだろうが、そんな仕事なんて経験したことも訓練したこともない。

組織論的に言えば、行政組織のトップ・上司が守るしかないのだろうが、議会としても、現場の行政マンのメンタル面をいかに守るか、という視点が必要。

 

・大災害時における、議会・議員の役割は、最小限に留めるべき。

行政の邪魔をしない、自らの地域への「過度の」利益誘導を図って全体最適の実現を阻まない。
「適度な利益誘導」は、必要なものであり、議員の本分でもあるのだが、線引きは難しい。

今回の講演者である、鍵屋氏からは、先行自治体事例を挙げつつ、
「議会で災害対策会議のような有事の組織を設け、行政に対して情報を取りに行ったり、逆に情報を提供したり、何らかの要望を投げかける際は、この組織を通じて一元的に行うのがよい」
という提言があった。

私も、議員が地域の利益代表としての役割を果たしつつ、行政の現場の邪魔をして全体最適の実現を阻むのを防ぐやり方としては、このくらいが妥当かと思う。

 

 

 

また、元 行政マンならではの、行政マン的な視点・立場の本音話みたいなものの片鱗も聞くことが出来て、そちらも面白く感じました。

なかなかそういう話を聞く機会はないものですから。

市役所の建物の中で、市の行政マンと日々接する機会はありますが、お互いに立場が違うので、なかなか本音の話はしません。友達じゃないし。それでも、ふっとした会話の中で、ポロッと本音を漏らしてくれる人もたまにいたりして、それはそれで嬉しく思いますが、特定の議員と仲良くすることは、その行政マンにとってもキャリア上のリスクになるはずですし、一線を越えずにw お付き合いするように心がけておりますwww