とにかく安く買った方がいいか?多少は高くとも地元で買うか?

先日、ある講演会に行きまして、そこで面白かった、というか聞き流さずに考えてみた話が2点だけありました。
講師は、行政マン上がりの街づくりコンサル。

2点とも、提言と言うか、自治体の政策を考える上でのモノの考え方・ポリシーについての提案なのですが、

 

1つ目が、
「これからの自治体は、稼がなくてはならない」
という考え方。

これは、もっともらしいけど、私自身はまったく同意できないですね。

限りある人的リソースは、稼ぐためよりも、よりよく使うために(予算を使って、様々な行政サービスを行うために、その費用対効果を極大化するために)傾注してほしいです。

まあ、この1点目についての話はどうでもいいのですが、

 

 

2つ目が、
これまでの予算の使い方は、安ければ安いほどいい、という考え方だった。
これからは、多少は高くとも、中央の大手企業ではなく、地元の企業に発注して、地元に雇用を作るべし
という考え方。

どこの自治体でも、一定額以上の何かを発注する場合は、基本的には入札制を取ります。
入札そのものには、技術力や実績などの一定の資格を備えていれば参加可能です。応札した中からは、技術力や実績の上下は問わず、最も金額が安いところに発注する、という考え方です。

一定額以下の何かを発注する場合も、基本的には、相見積もりを取り、最も安いところに発注しています。

従って、地元の中小、零細企業ではなく、中央(あるいは市外)の大手企業に発注する場合が多くなります。

今回の提言は、「これではよくない。政治の重要な仕事は、地元に雇用を作り出すことだ。多少は高くても、地元の企業に発注するようにするべきだ」という考え方です。

 

同じ技術力・実績、見積もり(入札)金額ならば、
中央の大手企業ではなく、地元の中小、零細企業に発注するのは、当然だし、誰もが納得するでしょう。

 

では、極端な例として、

・技術力が高く、実績が豊かで、見積もり(入札)金額が安い、中央の大手企業
・技術力が低く、実績が乏しく、見積もり(入札)金額が高い、地元の中小・零細企業

があった場合、後者に発注すべきかどうか?

今回の提言は、「後者に発注するべきだ」というものでした。

 

しかしながら、
蕨市内においても、多くの消費者が、地元の商店街ではなく、大型店(スーパーなど)で頻繁に買い物をしている、という現実があります。

平成30年度市民意識調査結果 – 蕨市公式ホームページ

蕨市のホームページです。

平成30年度蕨市市民意識調査においても、
p.30の問13「買い物についてお伺いします。あなたが商店街や大型店(スーパーマーケット、デパート)へ行く頻度について、あてはまるものをお選びください。」という設問では、

「ほとんど毎日」、「週3~4日」の合計が、商店街が14.6%であるのに対して、大型店は41.6%あり、
「ほとんど行かない」が、商店街が49.7%であるのに対して、大型店は4.6%である、という結果が出ています。

shopping
(c)蕨市

大型店の魅力はもちろん値段の安さだけではなく、商店街が必ずしも値段が高いわけでもないのですが、
このような現実がある中で、

 

「技術力が低く、実績が貧しく、見積もり(入札)金額が高い、地元の中小・零細企業」に優先して発注することに対する、市民のコンセンサスがあるか?というと、かなり難しいと言わざるを得ません。

 

ということで、この稿には結論はないのですが、結局のところは、ケースバイケースでの判断をすることになるかと思います。