蕨市立病院は、黒字化しておらず、安定経営でもない。

蕨市立病院事業の決算書を、平成22年度(2010年度)から12年間分、紐解いてみましょう。

決算書から、以下の数字を抜き出しました。

 

医業損益
企業経営における、営業損益に当たります。

医業損益 = 医業収益 ー 医業費用

 

経常損益
一般会計からの繰入金、県や国からのコロナ禍対策の補助金などが、医業外収益として加えられます。
医業外収益は、企業経営における、営業外収益に相当します。

また、借入金の支払利息などが、医業外費用として減じられます。
医業外費用は、企業経営における、営業外費用に相当します。

経常損益 = 医業損益 + 医業外収益 - 医業外費用

 

当年度純損益
その年度だけの特別な理由による、特別利益を加え、特別損失を減じたものです。
公立病院は法人税が非課税なので、利益が出たとしても「法人税を払う」という概念は存在しません。(消費税はもちろん払います)
当年度純損益は、企業経営における、当期純損益に相当します。

当年度純損益 = 経常損益 + 特別利益 ー 特別損失

 

従って、最終的な経営成績として評価の対象になるのは、「当年度純損益」ということになります。

 

平成22-25年度

hospital1

黒字の年もあれば、赤字の年もある、といったところですね。

 

平成26-29年度

hospital2

平成26年度は、経常損益は黒字ですが、会計制度が変更したことにより大きな特別損失を計上したために、当年度純損益は-6億9千2百万の赤字となっています。

 

平成30-令和3年度

hospital3

令和元年1月頃からcovid-19の感染拡大が始まり、全世界的に病院経営には大きなネガティブインパクトがありました。
令和2-3年度は、大きな赤字に沈んでいます。

 

ということで、例外的な平成26年度、令和2年度、令和3年度を除いたとしても、+87百万の黒字から、-78百万の赤字まで、黒字と赤字を行ったり来たり、上下に揺れ動いているといったところです。

 

とてもとても、「黒字化して安定経営となった」とは言えない状況です。

 

 

現職の頼高英雄市長は、折に触れて「自分が病院事業を、赤字から黒字に転換した、安定経営にした」の述べており、先日、2月28日の3月定例会 本会議においても、同じ趣旨の発言をしていました。

本日、3月3日に開かれた予算決算常任委員会 環境福祉経済分科会において、私が所属する会派の議員が、「何をもって、黒字化したと言うのか?」、「何をもって、安定経営というのか?」と、上記の市長の発言の真意について問い正したのですが、

 

代理として答弁した病院事務局の次長は、

・東日本大震災の影響で、産科の分娩件数が減ったから。
・平成26年度に会計制度が変更したので引当金の計上が必要になったから。

などという、損失が発生するに至った、それぞれの時期における特殊な要因を説明し、論点をずらしてはぐらかすのみで、市長の「自分が病院事業を、赤字から黒字に転換した、安定経営にした」という発言の真意についての説明を行いませんでした。

 

ごく控えめに言って、頼高市長の発言は、虚偽です。

現職市長を嘘つき呼ばわりするのは、あまり品が良い行いとは言えないかもしれません。しかしながら、本日の予算決算常任委員会 環境福祉経済分科会においては、市長に対して虚偽発言の釈明あるいは訂正の機会を与えたつもりだったのですが、何らの説明も聞くことが出来なかったのは残念です。