近年、全世界的に、地球温暖化により、クマの生息域が変化し、人里に降りてきてヒトに害を為すことが増えてきております。
度重なる熊害報道は、レジャー・仕事など様々な目的のために山に入る人々、山に近接する地域に住む人々を、恐怖のどん底に突き落としています。
我が国の場合は、人口減少と都市への人口集中による山村の過疎が進んだ結果、人が山に入らなくなって山が荒廃し、クマの生息域が拡大しつつあり、更に熊害の増加に拍車をかけています。
尚、我が国においては、
本州に生息するのが、ツキノワグマ
北海道に生息するのが、ヒグマ
です。
埼玉県に生息しているのは、ツキノワグマです。
本日、令和7年(2025年)3月10日、埼玉県議会 2月定例会にて、自然再生・循環社会対策特別委員会が開かれ、県内のツキノワグマの生息状況と対策について質疑を行いました。
生物多様性の保全の観点から、野生動物とどう接するか
生物多様性、これは大事です。
みんな分かっていると思いますけど、なぜ生物多様性が大事なのか?ちゃんと説明できますか?
私なりの考えを述べますと、
まず、生態系は、気候、動物・植物の活動状況など様々な要素の絶妙なバランスの上に成り立っています。
これらの要素が少しでも変わり、絶妙なバランスがちょっとでも崩れると、生態系全体が変化してしまいます。
一度おかしくなってしまった生態系は、時として、元に戻すことが出来ません。
一度、絶滅してしまった種は、復活させることは出来ません。
なぜ、生態系を変えてはならないかと言うと、
生態系が変化すると、人類の生存環境、文明の存立に大きな影響を与える可能性があるからです。
不可逆的な負の影響が生じてしまった場合は、人類に与える損失は計り知れないものがあります。
「絶妙なバランスの上に成り立っている、現行のシステムは、とにかく変えてはならない」、これが生物多様性保全の考え方の根本にあります。
これらの考え方の更に根本にあるのは、反理性主義であり、「人類が自然に抗うことは出来ない」という観念です。
生物多様性を保全するためには、絶妙なバランスを崩してはなりません。
「特定の動物の生息地が拡大し過ぎないように、個体数が増え過ぎないように、あるいは逆に、特定の動物の生息地が縮小し過ぎないように、個体数が減り過ぎないようにコントロールしていく」、現代文明が掲げる、野生動物との接し方についての大きな方針です。
生物多様性の保全のための、鳥獣(動物)対策についての、埼玉県の考え方

埼玉県内において、減り過ぎて困っている種がある一方で、増え過ぎて困っている種は、
・ニホンジカ
・イノシシ
です。
この2種は、県内の農林業に現実的に損害を与えています。
特定鳥獣管理計画というものを立てて、科学的に生息域、生息個体数を観測し、計画的に捕獲を行って、増え過ぎないように生息域、生息個体数をコントロールしています。
埼玉県の熊害
クマが田畑に入り込んで農作物を食べて荒らしたり、植林した山林に入り込んで木を傷つけたり、といった形での、直接的な被害は生じていません。
後遺症が残るようなケガ以上の人的被害も、生じていません。
しかしながら、人々がクマを恐れ、ハイキング、釣り、山菜採りなどを目的として山に入ることを控えるようになると、ますます山が荒廃して、ニホンジカ、イノシシの繁殖を招いてしまいかねない点については、かねてより不安に感じていました。
直接的被害はないものの、間接的被害が生じているのではないか?
という点が、私の問題意識でした。
私個人的には、ツキノワグマが怖くて仕方がありません。

飯能市吾野、子の権現の登り口にて。

飯能市、奥武蔵グリーンライン沿いの諏訪神社にて。

横瀬町の埼玉県民の森付近にて。
この付近で、私自身がトレラン中にクマらしき黒色の動物に遭遇しています。熊鈴はつけていました。
埼玉県のクマ対策
本日の自然再生・循環社会対策特別委員会にて、県のクマ生育調査結果、対策についての考え方を問い質しました。
直近の調査は、令和2年度に行ったもので、県内生息頭数は150~176頭で、増加しているわけではない。
県としては「クマによる間接的被害は生じていないと考えている」とのことでした。
埼玉県レッドデータブック動物編2018(現時点での最新版)によると、

埼玉県内におけるツキノワグマはNT2(準絶滅危惧2型)に分類されています。
駆除し過ぎると、県内のツキノワグマは絶滅してしまう可能性があり、これはまた生態系を崩してしまう要因になるので、避けなくてはなりません。
ということで、埼玉県においては、クマについては不定期的に調査はしているものの、生息頭数を減らすための計画的な捕獲は一切行っておりません。
※参考 埼玉県のオオカミ
前述の埼玉県レッドデータブック動物編2018、なかなか読み物として面白いです。

オオカミは、埼玉県(2018年)においても、環境省(2014年)(=国全体)においても、絶滅と分類されています。
埼玉県内北部では、多くの神社において、オオカミらしき狛犬が設置されており、オオカミが生息していたことが推測されます。

両神山の登山道の途中にある、両神神社本宮(小鹿野町)にて。

三峯神社(秩父市)。
どう見てもオオカミですね。