蕨市議会:6月定例議会の一般質問では物価対策が多く取り上げられる。

さて、蕨市議会6月定例会も閉会致しましたが、この6月定例会における一般質問の傾向をざっくり振り返ってみますと、

 

・コロナ禍対策について取り上げる議員は減った

足元の感染状況は、下げ止まりつつあるものの、取り敢えず落ち着いてはいますので、取り上げる人は減りました。

 

・急激な物価高騰対策を取り上げる議員が増えた

これは、3ヶ月前の3月定例会ではゼロだったことと比べると、大きな変化です。
概ね、
・行政は、市内の事業者を支援せよ。
・行政は、市民の生活を支援せよ。
という方向性の政策提案が多かったように思います。

 

 

物価高騰は、初めての体験

私も新卒で社会に出た頃は既にバブルは崩壊していて、失われた30年が始まっていましたので、物価高騰って、人生初の体験です。

国を挙げてインフレ率2%を目指し続けてきたところですが、これだけ急激に環境が変わって、一気にコストプッシュインフレが起こるとは、まさにびっくり事態であります。

 

ざっくりいうと、1992年前後にバブルは崩壊していますので、ちょうど30年経ったのです。

当時、新卒、すなわち22歳で大学を出て社会に出た人が、今は、52歳です。
まあしかし、20代前半のペーペーの頃なんて、目の前の仕事を覚えてこなすのに必死で、社会や経済全体を見渡すようなマクロな視点なんてなかなか持ち得ないでしょうから、実感としてインフレを経験している世代は、せいぜい50代半ば以上、ということになるのではないかと思います。

つまり、今、ほとんどの社会人は、インフレを人生で初めて体験しているわけです。

 

 

 

そもそも、物価対策って、自治体政府がやることだろうか?

なので、多くの人は、目の前で起こっている急激なインフレに、どのように対処していいか分からないのです。

初めての体験だし。
聞ける人もおらず、かつてのインフレ時代のノウハウは、まったく継承されていないし。

 

自治体政府として、このインフレとどのように向き合っていくか?

そもそも、インフレに対して、一国全体のマターなのに、自治体政府が関わるべきことだろうか?

 

このあたりの、言わば、インフレとの向き合い方、態度、立場、哲学を、まずはよく考えて明確にすべきかと思います。

これをはっきり考えないと、

取り敢えず、目の前に物価高騰で困っている人がいるから、補助金とか助成金とかをバラ撒け!とにかくバラ撒け!という、バラ撒き政策案しか出てきません。

 

 

 

国政府は、インフレ対策としてやるべきことをやっているか?

今になって、今さら改めて考えるのは、ああ、大学の時にもっとマクロ経済学やっとけば良かったなー!ということであります。

大学1年生の時の教養レベルでお茶を濁したのみで、教科書を通して読んだこともありません。当時の教科書は捨てずに取っておいてありますが、今となっては数式がよく分からなくて、読み込める自信もありません。

まあ、分からないことは分からないなりに、考えてみるしか無いのですが、

 

まず、この物価高騰の原因は、コストプッシュであります。
ウクライナの戦争、コロナ禍による生産、物流の停滞によって引き起こされました。

この環境変化は、我が国だけではなく、諸外国も同様です。

そこで、諸外国がどうやってこの事態に対処しているかというと、

・利上げ
・金融引き締め

です。

これは、もちろんメリットばかりではなく、デメリットも大いにあるのですが、我が国以外のほとんどの国が、一気にこの方向にシフトしました。

結果として、円安が止まらず、我が国にとっては更にコストプッシュ要因となっています。

 

諸外国がやっている、利上げ、金融引き締めを、我が国は、やっていない。

これは、もちろん、デメリットもあるために、総合的な判断として、そのような結論に至っているわけですが、国政府レベルで、やれることがあるのに、それをやっていない、という言い方も出来ます。

 

 

 

原油高への対策

アブラがないと生きていけない我が国としては、原油高は、ほとんど全てのモノ・サービスのコストプッシュ要因です。

 

ところで、2011年の東日本大震災以来、我が国の多くの原発が止まったままです。

 

再稼働については、様々な反対の意見、不安の声があります。

反対意見や不安の声を押し切って再稼働の判断をすることは、政治的には大いなるリスクです。
要するに、次の選挙で負けてしまうかもしれない、ということです。

その結果として、国政府は、再稼働の判断を自ら行わず、原発立地自治体に判断を委ねています。
安全性が確認された原発も、地元自治体の承認がない限りは再稼働されず、放置されています。

 

エネルギー問題が国家の一大事であるであるならば、再稼働するか否かは、地方レベルではなく、国レベルで判断するべきです。

我が国の現下の状況で、原発再稼働が必要であるならば、政治的リスクを取ってでも、国政府は再稼働を進めなくてはならないのではないでしょうか。

 

この度の参院選の自民党公約集を見ても、原発再稼働については一切触れられていません。
この点は、大いに失望します。

 

エネルギー問題についても、国政府は、やるべきことをまだやっていません。

 

 

 

そもそもインフレの何が悪いか?

インフレは悪くない。

そもそも、我が国は、ずっと2%を目標に、インフレを目指してきたわけだし。

 

問題なのは、コントロールされていない、急激なインフレ。

そして、賃金が上がらないこと。

 

 

 

地方政府レベルで、インフレとどのように向き合っていくか

という、「国政府レベルでやれるべきことをやっていない」という状況を踏まえた上で、地方政府レベルで、インフレとどのように向き合っていくか?

(続く)


コロナ禍収束後のリベンジ消費がインフレを加速する?

[FT]インフレ無風のアジア コロナ対策、米欧より緩やか

日経の記事利用サービスについて 企業での記事共有や会議資料への転載・複製、注文印刷などをご希望の方は、リンク先をご覧ください。 詳しくはこちら 世界中で物価が劇的に上昇している。ただし、急騰していない地域もある。消費者物価指数(CPI)が前年同月比でそれぞれ6%、4%上昇している米国と英国の物価高騰は、中央銀行による悲惨な過ちと1970年代の慢性的インフレに回帰する不安を引き起こしている。 …

昨日、令和3年(2021年)12月1日付け、日経朝刊に掲載された、Financial timesの署名記事の翻訳。

原文は11/26付けで、おそらく、オミクロン株が出てくる前に書かれたもの。

北米・欧州でインフレが生じているのに対して、アジア地域で生じていない。
その理由は、北米・欧州では厳しいロックダウンの反動から、コロナ禍が収まり規制が緩みつつある状況下でのリベンジ消費の需要増によるもの。
アジア地域では、感染拡大もロックダウンも緩やかだったため、リベンジ消費があまり起きていないから、インフレも生じていない。

ざっくり、こんな感じで分析されています。

(昨日の新聞本紙はもう捨てちゃったけど、web版記事より、紙版記事の方が長かったような気がするのだが、気のせいかな?)

 

今ひとつ腑に落ちないのですが、この通りだとすると、リベンジ消費換気策である、go toの類や、自治体の市内paypayポイントバックキャンペーンの類は、すべてインフレを促しかねない、ということになってしまうけど、どうなんでしょう?

 

 

蕨市議会においても、この12月定例会で、paypayポイントバックキャンペーンの議案が上程されています。

来年(2022年)2月より、市内でのpaypay決済に対して、還元率20%、一回当たり上限2,000円、一人当たり上限10,000円のポイントバックを行う、というもので、全額が市の財源(国などからの補助金ではなく)によるもので、経費を含む総額は63百万円です。

 

長くデフレが続いたために、インフレを監視する、インフレを防ぐ、という視点を、市議会議員は全く持っていないんですよ。
市議会で、市内の物価がどうこうということが取り上げられたことも(私の記憶の限りでは、この10年間は)ありません。

おそらく、行政の商工部署も同様ではないかと。

 

「インフレをいかに防ぐか」を考えるのは、基本的には国レベルの仕事であって、地方レベルは無関係だと思いますが、今後、アフターコロナに向けての諸々の商工業支援・消費者支援系の施策を考えるに当たっては、「インフレをいかに防ぐか」という視点も若干気にかけなくてはならないかもしれません。