埼玉県動物指導センター 南支所へ

蕨市議会 保守系会派:新翔会の有志、蕨市内で保護猫譲渡会活動を行なうNPO法人ねこネットワークの方々とともに、視察に行ってまいりました。
埼玉県の動物保護行政は、保健医療部が管轄しています。
県内には、熊谷の本所、埼玉県桜区の南支所の2拠点体制で、「動物指導センター」が設置されています。
今回訪問したのは、南支所です。
南支所の支所長は獣医師であり、支所長を含めて獣医師は4名が配属されています。総職員数は6名です。
獣医師資格をもつ県職員の方は、食品衛生など医療保険部内の他の部署に異動することもあるそうですが、基本的には、動物保護関係の部署の中で異動することが多いようです。
最大の課題は「犬猫殺処分ゼロ」
これが県の動物保護行政における、最大の課題です。
食べるためではなく、人間の都合で殺生を行なうのが、犬猫殺処分です。
私は、それほど敬虔ではない、ごく普通の仏教徒ですが、六道輪廻の考え方に基づき、犬猫殺処分を何とかしてなくしたいと思っています。仏教に限らず、どんな宗教であったとしても、犬猫殺処分を正当化出来る教えは存在しないと思います。
埼玉県の犬猫殺処分の状況
平成18年には、殺処分数は9,118頭でした。
平成20年から、殺処分数の削減を目指して5年間毎に5ヶ年計画を立て、着々と減らしてまいりました。県の動物保護行政の成果であり、県の関係職員の皆様、市町村、多くの犬猫保護団体の努力のおかげであります。

令和2年度に打ち出した新しい5ヶ年計画では、「令和12年度の殺処分ゼロ」を目指しています。
直近の数字では、令和6年度殺処分数は、
犬 26頭、猫15頭、計41頭でした。
「令和12年度の殺処分ゼロ」の目標達成まで、数字だけ見ると、「あと少し」といったように感じます。
犬に関しては、達成見込みが見えてきました。
犬は、狂犬病注射が必要なため、一頭一頭全て登録されています。野良犬も存在しません。
他方、猫に関しては、まだまだゼロ達成には道のりは長いです。
猫は、登録システムはありません。1年間に3回出産できるほど繁殖力は高く、野良猫・まち猫(地域猫とも呼ばれます。その地域のみんなが餌やりをしたり、面倒をみているような猫のことです)が多いからです。正確な生息頭数すらも把握しようがありません。
埼玉県の犬猫殺処分ゼロへの取り組み

・終生飼養の徹底(安易な引き取りを防ぐ)
・迷子動物の返還促進
・譲渡の推進(保護団体との連携)
・野良猫・地域猫の繁殖抑制(不妊・去勢)
など、多角的な施策を実行しています。
これらは、県だけでできるものではありません。
譲渡推進については、保護犬猫活動ボランティア団体との連携が必要です。
引き取り抑制の水際対策については、ペットショップ、ブリーダーと連携し、飼い始めるタイミングで終生飼育の覚悟を強く促す努力が不可欠です。
野良猫・地域猫の繁殖抑制については、保護猫団体がどんなに頑張って活動しても、安易にエサをやらないなどの、住民全体の意識向上が伴わないと効果を発揮しません。
動物保護活動団体は、決して趣味でやっているわけではなく、やむにやまれぬ気持ちで活動している善意のボランティアです。
県の担当の方は、「保護団体に対しては、お願いはするけれど、強要はしない」とのことでした。
野良猫・地域猫の繁殖抑制のためには、野良猫・地域猫への不妊・去勢手術への補助を行う市町村への補助を、県としては行っています。これは大きな効果を上げています。猫殺処分ゼロを達成した後も、継続的に続ける必要があります。
マイクロチップ普及への取り組み
改正動物愛護法により、令和4年6月より、ペットショップ・ブリーダーが販売する犬猫についてはマイクロチップ装着が義務化されました。
マイクロチップは、犬猫の首の後ろの皮下脂肪が分厚い箇所に注射して埋め込みます。迷子札のようなものです。マイクロチップに記されたID番号を読み取り、国のシステムに登録した所有者情報を参照することで、迷子になった場合も飼い主の元に帰ることができます。
大規模自然災害時に、犬猫は驚いて逃げ出してしまい、そのまま行方不明になることが多々あります。飼い主の元に戻すためには、マイクロチップ装着が極めて有用です。
昨年、令和6年(2024年)元日に発災した能登半島地震においても、多数の猫が行方不明になりました。市街中心部で大火が発生した輪島市では、あちこちで行方不明になった猫を探す貼り紙を見かけました。
行方不明・飼い主不明のままの犬猫は、少なからず殺処分されてしまいます。

ガラスケースの中にあるのが、マイクロチップ読み取り機です。
マイクロチップの装着率は、猫に関しては、分かりません。前述のように、野良猫・地域猫が多く、そもそも生息頭数が不明だからです。
犬に関しては、令和5年度で、埼玉県は18.8%、蕨市は14.3%とのことです。
令和4年6月以前にペットショップ・ブリーダーによって販売された犬、個人間の譲渡による犬が多く、まだまだ普及率は低いですね。
装着費用は数千円程度です。犬猫にとっては危険性はなく、身体への負担もそれほどありませんので、お飼いの犬猫にマイクロチップを装着していない場合は、今すぐ装着をおすすめします。
犬猫殺処分ゼロに向けて、今後の課題
近年の課題は、「多頭飼い」です。
多くの犬や猫を引き取って面倒をみるのは、素晴らしいことです。しかしながら、お金もかかりますし、特に猫は繁殖力が高く、増えてしまうことも多いので、受け入れキャパを越えてしまうと飼育体制が崩壊してしまいます。
埼玉県では、平成26年に埼玉県動物の愛護及び管理に関する条例を改正し、犬猫10頭以上の多頭飼育に届け出義務を課しました。
届け出をしない場合の罰則「3万円以下の過料」もあります。
しかしながら、その家庭が多頭飼いしているのかどうか、家の外からは分かりませんし、必ずしも守られていません。
それどころか、そもそもこの多頭飼い届け出制度を知らない人も多いのではないでしょうか。
(恥ずかしながら、私も知りませんでした)
現実的に、多頭飼いする方々の多くが、生活困窮者であったりおひとり様高齢者が多い、という傾向にあります。多頭飼いのキャパを超えてしまうと、あっという間に飼育崩壊してしまうばかりか、ご自身の生活も荒れ果ててしまいます。
福祉と接点がある方々多いので、多頭飼いの監視、飼育崩壊を防ぐための施策は、福祉政策との連携が不可欠であると感じました。
埼玉県動物指導センター南支所の中の様子

災害時の避難所で使うための、移動用動物ケージなどを備蓄しています。

大型犬用の区画。
力が強く、気性が荒い犬にも対応できるようになっています。

犬。
訪問したときには、動物指導センター南支所には、この犬が一匹しかおりませんでした。
犬猫殺処分ゼロに向けて、保護団体、蕨市議会、蕨市と連携して努力してまいります。