越谷市にある東埼玉消防指令センターは、つい3ヶ月前、令和8年(2026年)4月1日から運用開始したばかりです。
春日部市、越谷市、松伏町、吉川市、草加市、三郷市、八潮市が、指令部機能を共同運用しています。
(なお、元々、草加市と八潮市は草加八潮消防局を共同で運営しており、吉川市と松伏町は吉川松伏消防組合消防本部を共同で運営しています。)

蕨市議会 わらび未来の会の皆さん、須賀敬史 前県議とともに見学させていただきました。
この建物は、新設されたものです。
消防の広域化
消防は、市町村の仕事です。
全国のそれぞれの市町村が消防本部・消防局などを、市町村単独であるいは一部事務組合として立ち上げて、運営しています。
蕨市の場合は、蕨市消防本部という組織があります。
国全体としても、埼玉県としても、消防の広域化を進めています。
国も埼玉県も、消防の広域化を後押しするための財政支援を行っています。
消防の広域化とは、複数の市町村の消防本部・局を合併・統合していくことを指します。
人口減少・経済の成熟化の時代にあって、あらゆる行政機能の統廃合は、国全体の大きな課題ですが、消防もその例外ではありません。消防の場合は、何かを廃止してサービスを縮小するということはありえません。統合=広域化ということです。
消防を運営しているのは市町村であるために、合併・統合の意思決定は、市町村自身が行うべきものです。国や埼玉県が、市町村に対して強制することは出来ません。
消防の広域化の目的は一言で言うと、経営資源を集約して、コストを下げながら消防力を高めるということです。
ざっくり分解すると、以下の三点です。
管理部門、指令設備、車両・資機材などの重複を減らし、共同化・集約化する。
管理部門を集約し、消防・救急・救助など現場部門へ人員を振り向ける。人事ローテーションもしやすくなる。
救助、救急、予防、特殊災害、大規模災害などに対応する専門人材・専門部隊・高度な資機材を確保しやすくなる。
人口7.7万に過ぎない蕨市においては、消防の広域化は、喫緊の課題です。
消防の広域化のデメリット
基本的には、住民にとってのデメリットはありません。統合にはコストは掛かりますが、それは一時のものですし、国や県からの財政支援もあります。
首長にとっては、消防本部・局が自分のコントロールを離れてしまい、式典で挨拶する機会が減ってしまう、と言うデメリットがありますが、これは住民のデメリットとは無関係です。
消防関係者にとっては、統合に伴いポストが減るというデメリットがありますが、これもまた住民のデメリットとは無関係です。
指令機能の共同運用 ≠ 消防の広域化
この度、視察した、東埼玉消防指令センターは、7市町(5消防本部・局)により、指令機能を共同運用するものです。
組織の合併・統合ではなく、従って、消防の広域化とは別の流れにあります。
例えて言えば、
7市町(5消防本部・局)が、出資し合って合弁会社を作り、その合弁会社に指令機能を業務委託する、というイメージです。
消防関係者にとっては、ポストが増えました。
スタッフは、それぞれの消防本部・局に所属しながら派遣されています。
指揮命令は、所属元の消防本部・局から受け、給与体系、休暇取得ルールも元の消防本部・局のものがそのまま適用されます。
7市町(5消防本部・局)にとっては、指令機能の共同運用の先に、消防本部・局の統合を見据えているわけではありません。
東埼玉消防指令センターの中へ

2階建ての建物。
24時間365日稼働するために、個室宿泊ルームを多数備えています。

指令センター内部は写真撮影は禁止でしたが、唯一、この記念写真だけは撮影が許可されました。
この部屋が、119番を受電するコンタクトセンタとしての機能、一次出動する部隊を7市町(5消防本部・局)の消防署・車輌の中から選定して、指示を出すまでの機能を担っています。
一次出動した部隊だけでは不足しているなど、二次出動が必要な場合は、この指令センターではなく、7市町の5つのそれぞれの消防本部・局において意思決定し、指示を出します。

個室ベッドを跳ね上げると、布団ボックスとなっています。
個室・ベッドは共有されますが、布団・シーツ類は共有ではなく、自分専用のものを使うことが出来ます。

屋上へ。
自家発電装置があります。

固定電話網が使用不能になった場合に備えた、NTTドコモ携帯電話回線用のアンテナ

NTTドコモ回線のアンテナと機器。
尚、7市町での費用負担比率が気になるところです。
人口割、基準財政需要額割、119番通報件数割、救急出動件数割など10種類の算出方法を比較検討した結果、住民基本台帳人口割とし、毎年見直すことになったそうです。
この種の条件・比率を決めるに当たっては、企業のM&Aの時と同じように、大きい側が条件を譲るのが秘訣のようです。
かなり速いスピード感での実現
令和2年8月 勉強会をスタート
令和4年2月 任意協議会を設立
令和5年3月 構成市町の議会で議決
令和5年4月 協議書調印
令和5年5月 法定協議会を設立
ここから土地の選定~建設工事を行って、
令和8年4月 運用開始
ということで、かなり速いスピードで指令機能の共同運用は実現しました・・・と書こうと思っていたのですが、ん?こうして文章にしてみると、6年間もかかっているのか。そんなに速いってほどでもないかな。
まあ、役所にしては珍しいくらい速いということです。
緊急防災・減災事業債という国の財政的支援メニュがあり、これを使える期限があったことから、大急ぎで手続きを進めた、という側面もあるようです。
財政的インセンティブの効果は大きいです。
蕨市における消防の広域化
これから必要な課題です。
現実的に、消防を広域化するに当たっては、隣り合う自治体同士で進める必要があります。
市町村合併の場合は、飛び地合併というものもあり得ますが、消防の広域化に関しては難しいものと言わざるを得ません。