先のエントリの続き。
掲題の新規システム構築案件が、26年度予算案に乗っている。
これが、どう考えても必要最低レベルを超えて過剰性能だと思われるので、以下、指摘する。
蕨市のスポーツ施設予約システムの概要
今回作ろうとしているのは、
・錦町の富士見球場と塚越球場の野球場2面
・錦町の富士見テニスコート4面
・錦町の多目的スポーツ広場1面
の、オンライン予約システムだ。
つまり、予約施設数は、7施設(データの数で言うと)。
従来は、スタンドアロンで管理されていたので、使いたい人は、市役所の担当部署に電話して予約しなくてはならなかった。
当然、夜や休日に予約することは出来ないし、電車の移動中やくだらない会議の合間にさくっと予約することも出来なかった。
この度作る新システムは、これが出来るようになるもの。
元々、市長の公約「新あったかプラン」にも入っており、市民からもオーソライズされている。
今どきwebで予約するのは当たり前なので、これを作るのはイイと思う。
26年予算案に計上されている内容
予算案には、
公共スポーツ施設予約システム導入委託料 5,130k円(←イニシャル?)
公共スポーツ予約システム利用料 497k円(←ランニング?)
庁用器具(サーバ購入費か?) 497k円(サーバ購入費か?)
が計上されている。
初年度年間合計で、6,124k円。
2年目以降の年額は、497k円かな?
蕨市の人口7.2万の全員が使うわけではなく、おそらく、主に使うのは、市内、近隣市の野球、テニス、グラウンドゴルフの愛好団体、個人に限られるだろうから、おそらく想定ユーザ数は、100とか200くらいだろうか。
施設数は上記のように7施設であり、市内にこれからスポーツ施設を新設する計画はないし、時代の流れ的にもこれからその種の施設を作れるはずもないので、この数字が増える可能性はない。
そうすると、ちょっとこれって、高過ぎるんじゃないか?
というのが、第一印象。
しかも、予算書の説明資料を見ると、平成27年2月稼働予定と書いてある。26年4月から最初の作業に着手するとしても、兼任で他の作業をやりながらだとしても、10ヶ月もかかるというのは、ちょっと掛かり過ぎな気がする。
(まあ、入札とかしないとならないので、そこで時間がかかるんだろうけど。)
スポーツ予約システムの要件
実は、新卒で入った会社が総合商社だったのだけど、なぜか情報システム部門に配属されて、会議室予約システムとかを作っている人が同じ部署内にいたので、この種のシステムはだいたい分かる。
→分かる言うのは言い過ぎかもしれないけど、何となく土地鑑がある。
基本的に必要な機能は、
・施設管理
・ユーザ管理
・トランザクション(予約)管理
・決済管理(←これは、オンライン決済をサポートしないのであれば、不要)
を中心とするデータベースアプリケーションということになる。
この種のものは枯れたシスタムなので、スクラッチで開発するということはあり得ないので、パッケージを導入するなり、SaaSを使う、ということをまず最初に考える。
そこで、この種の施設予約システムのパッケージとSaaSにはどんなものがあるか、調べてみた。
公共施設予約システムのパッケージ/SaaS
このワードでググってみてヒットしたwebサイトを見てみる。
だいたい価格は書いていないので(個別お見積りだから)、電話して聞いてみる。
そうすると、
この種のソリューションは、
(1) 高スペック/高価格:
100施設以上の規模を想定した、数百万円規模のパッケージまたはSaaS
(2)低スペック/低価格:
10施設くらいの規模を想定した、月額数万~20万円くらいのSaaS
といった2種類があることが分かった。
ミドルレンジのサービスは、ざっと見たところ、見つからなかった。
(1)の例は、
NEC:GPRIME施設予約システム
富士通:InterCommunity21施設予約SaaS
NTT PCコミュニケーションズ:公共施設予約システム
誰もが知っている大手ベンダで、自治体への導入事例も豊富っぽい。
でも、高い。
(2)の例は、
リザーブマート:施設予約システム(SaaS)
こちらはイニシャル52,500円~、ランニング月額21,000~
リザーブリンク:チョイスリザーブ(SaaS)
こちらはイニシャル31,500円~、ランニング月額21,000~
次に、近隣市の状況を調べてみる。
お隣りの戸田市は、どうしてるんだろう?
戸田市:スポーツ施設予約
ドメインを見ると、「cultos-y.jp」のサブドメを使っているので、SaaSだろうと見当をつけて、whoisでこのドメインを調べて辿ってみると、
ワイイーシーソリューションズ:施設予約管理システム CULTOS-V2
を使っていることが分かった。
この会社の会社概要ページを見ると、NECの100%グループ会社なので、上記(1)パターンのNEC:GPRIME施設予約システムのSaaS版を提供しているのかもしれない、あるいは、別モノかもしれないが、いずれにしても、(1)高スペック/高価格のパターンに分類されるだろうと推測出来る。
(戸田市図書館に行って決算書見てみれば、幾ら払ってるかも分かるけど、面倒なのでそこまではやらない。)
蕨市の場合、(1) 高スペック/高価格 と (2)低スペック/低価格の、どちらが必要か?
施設数:7
ユーザ数:100~200
という前提で考えると、(2)低スペック/低価格のソリューションで十分ではないかな?
この(2)の各サービスは、安価ゆえにカスタマイズは基本的にしない(出来ない)ので、現行の蕨市のワークフローに合わない部分もあるかもしれない。
しかし、はっきり言って、スポーツ施設予約はそもそもミッションクリティカルな業務ではない。
徴税、教育、福祉などのミッションクリティカルな業務に関わるシステムであれば、カスタマイズをして既存のワークフローにシステム側を合わせる必要があるが、スポーツ施設予約ならば、システム側に合わせてワークフローを変更してもいいと思う。
ということで、(2)低スペック/低価格のSaaSソリューションで十分だと思います。
これだと、導入期間は、ユーザ教育も含めてせいぜい1ヶ月といったところだと思います。