宮城県水道事業のコンセッション方式
宮城県は、水道事業について、2022年より、コンセッション方式を導入しています。
コンセッション方式とは、県が水道インフラを所有したまま、民間事業者に運営権を期間限定で売却するという仕組みのことです。これは、指定管理者制度とは異なります。
コンセッション方式について、ちょっと分かりにくいので整理すると、
| 自治体 |
水道インフラを所有し続ける |
| 民間事業者 |
期間を定めた運営権を購入して、運営する |
指定管理者制度は、経営リスクはあくまでも自治体側が負います。
コンセッション方式においては、民間事業者が経営リスクを負い、その対価としてリターンも得ることが出来ます。
多くの指定管理者制度において、一社が単独で引き受けることはほとんどありません。
複数の企業が、それぞれの得意分野を活かしてジョイントベンチャーを作り、引き受けるケースがほとんどです。
宮城県の水道事業の運営権を購入したのも、複数企業によって構成されるジョイントベンチャーです。
このJ/Vが、(株)みずむすびマネジメントみやぎという会社で、10社の株主によって構成されています。メタウォーター(株)が51%を持っています。10社のうちの1社に、ヴェオリア・ジェネッツ(株)があり、この会社は、Veolia Environnement S.A.というフランス国内の上場企業の、我が国における現地法人(資本構成は不明だが、100%の可能性が高い)です。
宮城県は水道インフラを「外資に売り渡した」のか?
水道インフラは、引き続き県が所有し続けており、売却したのは「期間限定の運営権」に過ぎません。
その売却先のジョイントベンチャーを構成する10社のうちのマイナー出資の1社が、フランス資本ということです。
つまり、宮城県は水道インフラを外資に売り渡していません。
先の参院選(2025年7月)における参政党の主張
選挙戦において、参政党は「水道という大事なものを民営化。なんで外資に売るんですか。彼ら金もうけですよ」と主張し、県政を批判したとのことです。
参政党の主張する「民営化」、「外資への売却」は、間違いです。
間違いであることを認識していながらそのような主張を行ったのであれば、それは虚偽と言うことができます。
宮城県は抗議し、訂正と謝罪を求めました。
これに対して、参政党は、自らの主張に誤りはないとして、内容の訂正と謝罪を拒否しています。
その理由として、(株)みずむすびマネジメントみやぎが、業務の一部を委託している(株)みずむすびサービスみやぎの51%出資企業がヴェオリア・ジェネッツ(株)であるため、としています。
これは、屁理屈というものです。
その後、宮城県知事は、参政党に対して、公開の場での意見交換を求めていますが、これに対して、参政党は拒否しています。
これは、参政党としても、自らの発言が虚偽であり、分が悪いことを理解しているためと推察できます。
参政党の虚偽による主張が、宮城県知事選(2025年10月)にも影響を及ぼす
苦戦を強いられましたが、参政党の支援を受けた候補を退け、現職が再選を決めました。
選挙システムは、性善説で成り立っている
すべてのプレーヤが、自由と公正を重んじて、ルールを守って行動することを前提としています。
性善説で成り立っているシステムを悪用して、自らに利益誘導しようとする勢力が出てきた場合に、これを防止する仕組みがありません。
参政党の手法は、性善説に基づく選挙システムを悪用したもの
今回の事例においては、参政党の「宮城県は水道インフラを外資に売り渡した」という虚偽の主張は、参院選・知事選において自らの利益を目的としたものでした。
この虚偽の主張を、宮城県や、選挙戦における対立陣営は、反論することしか出来ず、それ以外には為す術がありませんでした。
虚偽の主張は、SNSを通じて繰り返し拡散され、世論操作され、選挙戦において参政党に対して有利に作用しました。
参政党のやり方は極めて悪質で、性善説に基づく選挙システムを、自らに有利なように悪用するものです。
NHK党の手法も同様
NHK党が過去に行ってきた、
- いわゆる「二馬力選挙」
- 供託金没収覚悟での、マスメディア露出を目的とした大量候補擁立
- 政見放送・公営掲示板を、選挙目的ではない商業目的での利用
も同様のものです。
彼らは、「選挙制度をハックする」という表現を盛んに用いていました。
参政党もNHK党も、選挙システムの悪用手法は、海外事例を模倣している可能性が高い
この種の問題は、我が国よりも海外の方が先行して発生しています。
参政党も、NHK党も、おそらく、海外事例を研究して模倣しているものと推察します。
具体的に、どこの国のどこの政党・勢力のやり方をどのように模倣しているのかまでは、私自身は分析しきれていませんので、ここでは課題提起に留めておきます。
選挙システムの悪用に対する対策
長期的には、有権者の「情報リテラシ教育」なんかが必要であることは言うまでもないのですが、これらが効果を発するのは、10年、20年単位の時間が必要です。
今、目の前で大きな問題が生じており、今すぐに対策を打つ必要があります。
これもまた、海外では先行して、対策が進んでいます。
基本的な流れとしては、民主制度の根幹を為している、言論の自由を封じないように細心の注意を払いながら、虚偽の主張を制度的に監視・訂正の仕組みを部分的に導入する、というものです。
言わば、性善説に基づく選挙システムにおいて、部分的に性悪説ベースの仕組みを取り入れていく、というやり方ですね。