令和2年(2020年)7月は、全国的に豪雨が続きました。特に九州北部には線状降水帯が発生し、あちこちで大規模な水害発生しました。
この時の大きな水害としては、熊本県の球磨川の氾濫が有名ですが、大分県日田市の天ヶ瀬温泉でも、玖珠川が氾濫して、温泉街は壊滅的な被害を被っています。
私は、同年12月に妻とこの温泉地を訪れたことがあります。

(この写真のみ、2020年12月撮影)
空中で寸断されたまま垂れ下がった橋など、被災したままの姿が生々しく残る中、復興に向けた地元の方々の力強い動きも感じることができました。
このたび、5年ぶりに、現地を視察しました。
結果として、復興状況というよりも、「復興していない状況」を視察することになりました。

玖珠川の両岸に沿って、温泉街が立ち並んでいます。
両岸ともに、後背にはすぐに山が迫っいます。
堤防はありません。
川沿いの一段低くなったところに、露天の共同温泉浴場が何箇所か設けられています。これが、天ヶ瀬温泉の名物となっていました。

こんな感じで、見晴らしのいいオープン構造です。
程よいぬるさで、いつまでも入っていられるほどです。
更衣室はないので、その辺の岩の上に服を置いて入浴する仕組みです。
赤色のボックスに、入湯料100円をお支払いします。

露店公衆湯の一つ、薬師の湯。
オープン構造はやはり女性には敷居が高いので、囲いを設けています。
地元の人だけが入って楽しめばいい、ということではなく、ツーリストにも楽しんでもらおうというホスピタリティが伺えます。

益次郎の湯。

新しく建物を建て直して旅館として営業しているところも複数あります。

水の高さによって注意を促すペイントが施してあります。
2020年7月豪雨の際は、「5」を遥かに超えて、橋を押し流してしまいました。

水害から5年が経ちましたが、まだ被害の大きさを物語るモノが残っています。
災害遺構として敢えて撤去せずに残しているのかもしれません。

写真左側奥(左岸側)のクリーム色字に茶色い格子柄の建物は、スイスの山小屋風の外観を特徴とした、ホテル水光園という名で営業してました。
2020年7月の水害の動画投稿を最後に閉館しています。

復興の桜
ということで、小さな温泉街を一通り見て回りましたが、建て替えて新たに営業を始めるなど、力強く復興に向けて歩みを進めている旅館・ホテルがある一方で、廃業した旅館・ホテルもあり、廃墟のような建物も多数ありました。
県の玖珠川改修計画と、その進展
大分県では、玖珠川の川底を深く削った上で、川幅を拡張する工事の計画を立てています。
上記に見来てきた通り、川沿いに家々が立ち並んでいるため、移転を迫られる家屋も出てきました。その中には、水害後、家を建て直した方もいます。
立ち退き交渉は、なかなか進んでいないようです。
この種の、復興計画は、どうしても、土木工事を行う自治体と、地元住民とで、復興に向けての意識の時間軸にズレが生じてしまう傾向があります。
自治体は、数十年後を見据えて、今後何世代にも渡って安心して暮らせるよう、防災・減災対策を行おうとします。そのような土木工事は、大規模なものになります。計画を建てるだけでも、数年間かかることもありますし、地域住民の合意形成には更に数年間、工事が始まってから完成するまでにさらに数年間・・・と、年単位での時間がかかります。
他方で、地元住民は、家が壊され、家財道具がだめになってしまった場合は、今すぐに生活を再建しなくてはなりません。宿泊業や、その他の小売・サービス業を営んでいた場合は、災害によって収入がゼロになってしまいますので、何らかの対応を今すぐにしなくてはなりません。
その地域で、すぐに家・店を建て直して商売を再開する方もいるでしょうし、その土地での暮らし・商売の再建を諦めてよその土地に移転する方も出てきます。
この時間軸のズレは、どうしても埋められないものがあります。
東日本大震災の被災地においても、盛り土、区画整理、高い堤防造りによる大規模な土木工事は完成したものの、地元住民は既にその土地で生活を再建することを諦め、よその土地に移転してしまい、誰も住まない広大な空き地が広がっている・・・という場所がたくさんあります。