【蕨市議会】2017年3月定例会一般質問(3) 今後の公共施設等マネジメントの推進体制について

3題のうちの3つ目。

過去にも何度か取り上げられてきた、ファシリティマネジメントについてです。

 

 

今後の公共施設等マネジメントの推進体制について

蕨市公共施設等総合管理計画(案)の内容は。
今後の公共施設等マネジメントの計画立案・実行スケジュール、組織体制、想定する政策決定過程は。


ファシリティマネジメント(公共施設等マネジメント)は、過去に何度も取り上げてきたテーマです。

 

ファシリティマネジメントとは何?

hoya_t blog 2016/3/29 : 蕨市議会 2016年3月定例会の一般質問(2) ファシリティマネジメント(公共施設等管理)について

ちょうど1年前のこの記事で解説した通りで、ファシティマネジメントとは、
庁舎・学校・公民館など全ての公共施設の建物、その建物の中にある各種設備(什器、水道管、ガス管、電気配線なども含む)、道路・橋などの都市インフラを、市全体を俯瞰した視点で、一元管理して、全体最適を目指して、建て替え・修繕更新・統廃合の計画を立てて実行していこう、という方法論のことです。

 

「市全体を俯瞰した視点で、一元管理して、全体最適を目指す」という点がポイントです。

従来のアプローチでは、各部署ごとに公共施設の建物・都市インフラを保守管理していました。
縦割り組織というのは、デメリットもそれなりにあり、悪いイメージで語られる事が多い言葉ですが、実際の処、規模の大きな組織をコントロールするには効率のいい方法論です。

教育委員会は学校のことだけを考えており、道路の部署は道路のことだけを考えています。
各部署がバラバラにその担当範囲のベストの仕事をすることを目指す訳です。
個別の部署が、個別管理して、部分最適を目指している訳です。

これはこれで、拡大成長フェーズでは有効なやり方です。インセンティブを付与して、個別部署間を競争させれば、更に効果は増します。

しかしながら、縮小撤退フェーズでは、このやり方は上手くいきません。

開戦して一度広げた戦線は、たとえ総理大臣でも簡単に縮小して講和を結ぶことは出来ないのです。鈴木貫太郎元首相が終戦内閣を引き受けるに当たっては、死を覚悟する必要がありました。
ましてや、担当部署が自らの業務範囲の縮小撤退の意思決定をすることは、絶対に不可能です。キスカ撤退は大成功した作戦ですが、キスカ島守備隊自身から撤退の方針案が出てくることはあり得ません。

 

現下の我が国の少子高齢化が進む状況は、まさに縮小撤退フェーズであり、従来型の個別部署が個別管理して部分最適を目指すアプローチではうまくいかないのです。
このフェーズでは、ファシリティマネジメントの方法論、すなわち市全体を俯瞰した視点で一元管理して全体最適を目指すアプローチを取らなくてはならないのです。

 

 

ファシリティマネジメントの進め方、組織論に関する私見

ということで、このファシリティマネジメントの進め方は、ボトムアップのコンセンサス重視型アプローチでは、絶対に上手くいきません

公共施設の廃止には、間違いなく反対意見が出ます

例えば、学校の統廃合なんていうものはもう、本当に大変です。
学校というものは、その地域に住む人達の甘酸っぱい思い出がたくさん詰まっていて、心の拠り所だからです。誰でも自分の母校が廃校になるかもしれない、と聞いたら、落ち着いた気分ではいられないはずです。絶対に反対するはずだし、何とか残したいと思うのが当然です。
そのような状況で、限られた時間の中で、一人残らず全員を説得し尽くすことは、不可能です。

 

ファシリティマネジメントは、トップダウンで、首長が血を流すことを覚悟の上で、リーダーシップを発揮してずばずば進めていかなくてはならないのです。

もちろん、反対を含めた多様な意見を聞くことは必要で、その労を惜しむべきではありません。様々な意見を聞いた上で、首長が、孤独に判断するしかないのです。

 

公共施設の廃止、学校の統廃合というのは極端な例ですが、限られたリソースの下で優先順位をつける、というのは、同じことです。

 

ということで、ファシリティマネジメントをやるなら、市長直轄でやるしかないですね。担当者を設けるならば、部長・室長クラスをアサインしないと。

 

 

市による蕨市公共施設等総合管理計画(案)

先日の記事に紹介した通りで、つい先日、これが発表になりました。あくまでも今の段階では「案」であり、既に締め切ったパブリック・コメントの反応を受けて修正を入れた上で確定することになります。

hoya_t blog 2017/2/10 : 蕨市公共施設等総合管理計画(案)が出ています。

上記記事で指摘した通りで、バチッとした行程表(ロードマップ)が発表になるものと想像したいたのですが、それは含まれていませんでした。

今後の担当組織体制については、

公共施設等マネジメントの担当部署の設置の検討を進めます・・・(中略)・・・個別施設計画の策定については、各施設の書簡部門が担当し、本計画に基づき、マネジメント担当と連携しながら策定します

ということになっています。

上記で述べたように、ファシリティマネジメントはトップダウンで進めないとならないので、正直、この組織体制だと、さっぱり上手くいくイメージが湧きません。残念。

 

 

(書き途中です。)

 

 

 


【蕨市議会】2017年3月定例会一般質問(2) 定住外国人実態調査について

3題のうちの2つ目です。

 

この件は、取り扱いが若干デリケートです。

外国人差別やらヘイトやら、偏狭な排外主義やらではなく、純粋な政策論議のために取り上げるものです。

 

 

定住外国人実態調査について

定住外国人の実態の把握状況は。
各種行政サービスにおける外国人の利用実態は。

来年度予算案における拡充事業「日本語特別支援教育支援員設置」の、内容と背景、期待される効果は。
小中学校の現場における、外国人児童・生徒の教育、保護者対応の悩み、実態は。

定住外国人の生活支援・災害対策等の政策立案に資するため、実態調査を行ってはどうか。


来年度(2017年度)拡充予算 — 日本語特別支援教育支援員の設置

この2017年3月定例議会に上程されている、2017年度予算案において、既存サービスの拡充分として、

教育センターへの、日本語特別支援教育支援員の配置

が入っております。

「急増する在住外国人児童・生徒、並びのその保護者対応の支援として」ということで、金額は人件費2,340千円+備品代が計上されています。
正規の市職員ではないようです。この程度の金額なので、フルタイムではなく、週の何日か勤務といったパートタイムだと思います。

 

 

市内に定住外国人が増えている

体感値として、市内に定住している外国人が増えたな~と感じる方は多いかと思います。

 

統計データを見てみると、

蕨市webサイト : 蕨市の人口推移(外国人の推移)(PDF)

2015年1月1日時点で、定住外国人は3,851人で5.3%です。
このページの折れ線グラフをみると、漸増トレンドであることが分かります。

 

 

外国人比率の市区(町村)別のランキングは、

日本☆地域番付 : 全国・全地域の外国人比率番付

↑このwebサイトによると、2010年の数字で、外国人数2,605人、外国人比率3.64%で全国42位(市区町村の中で)ということになっています。
(このサイトは、運営者は匿名だし、データの信頼性は不明なのであくまでも参考情報ということで。人数は上記蕨市webサイトの数値と異なっており、どこから引用したものか不明。)

また、別のサイトでは、

生活ガイド : 蕨市の行政情報

↑こちらでは、2015年の数字で、外国人数4,543人、計算すると外国人比率は6.20%で、全国93位(市区のみの中で)ということになっています。
(こちらは運営会社が旧SBIグループの企業なので、比較的信頼出来るデータかと。しかしながら、こちらもまた人数は上記蕨市webサイトの数値と異なっております。)

 

 

定住外国人の対応で、行政サービスの現場はとてもたいへん

過去に議会で答弁された話を抜き出してみると、

・小中学校
日本語が話せない児童・生徒が編入してくる。
体調が悪くても日本語で説明できない。保護者をお呼びして面談しようとしても、保護者も日本語でのコミュニケーションが出来ない。

・病院
例えば産婦人科の分娩においては、外国人比率が高まっている。
平成26年度 分娩 全体数 536件 内、外国人 136件(25.4%)
平成27年度 分娩 全体数 525件 内、外国人 131件(25.0%)
平成28年度(11月末まで速報値) 分娩 全体数 260件 内、外国人 105件(29.2%)
学校と同様に、日本語でのコミュニケーションが取れないケースが増えており、タブレットを介して(翻訳・通訳アプリ?)コミュニケートしている。

・消防(救急を含む)
外国人からの通報により出動することもあるが、日本語でコミュニケーションしにくい場合は、「近くに日本語が分かる方はいますか?」と通訳を通報者自ら手配してもらってしのいでいる。

 

これらは断片的なエピソードですが、他にもおそらく、市民課の窓口や、ごみ処理関連、災害対策などでも多数の、大変な状況が生じていることが想像できます。

これらの苦労のほとんどは、対象となる定住外国人の日本語によるコミュニケーション力の欠如が原因であろうかと思います。それ以外の、例えば生活習慣・宗教・食生活などが原因となるケースはほとんど無かろうかと思います。

 

私が把握している限りでは、このような、定住外国人の日本語によるコミュニケーション力の欠如が原因となる、行政サービスの現場の苦労を、組織的・体系的にフォローしていく仕組みはなく、現場の頑張りでどうにかやり繰りしているのが現状だと思います。
(せいぜい、タブレットを買って翻訳・通訳アプリを使うくらいか)

 

 

合法的な定住者以外にも、非合法的な外国人滞在者もいる?

この種の外国人に関する法律・制度には詳しくないが、オーバーステイ、ビザの在留資格違反(留学生なのにバイトをしていたり等)、といった類の外国人も少なからず市内に事実上住んでいるのではないかと思います。
某国人向けのタコ部屋ビジネスが市内で問題になったこともあります(実態はよく分からない)。

これらは、非合法であるが故に、行政も議会も基本的には把握していない(把握する術がない)し、各種統計にもまったく現れてきません。

非合法滞在が良いか悪いかといういうと、もちろんダメなのですが、だからと言って、いざ自然災害が発生したときに、助けないわけにはいきません。
人数・実態を把握しておく必要があります。

 

おそらくこの辺りの実態を最も正確に把握しているのは警察のはずで、行政としても議会としても情報交換が必要ですね。

 

また、世間一般に、何故か蕨市にクルド人が多いというイメージが広まっていますが、クルド人は国民国家を持っておらず、国籍でいうと、トルコ、シリア、イラクに分かれているために、クルド人コミュニティの実態はおろか、クルディの合法的定住者の人数を把握することすら出来ていません。

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2014年12月、トルコのセルチュクでたまたま入ったクルド料理屋のメシ。
一見すると、普通のトルコ料理のピデと同じようだが、本当にこれがクルド料理なのか、たまたまメニュの中から選んでしまった普通のトルコ料理なのかどうかは不明(笑)。

 

 

狭い蕨市内でも定住外国人の人数・居住実態には地域差がある

具体的な統計データに基いて述べるわけではないのですが、印象論で言うと、

・蕨駅東口エリア(塚越)
・蕨駅西口エリア(中央・南町)
・埼京線エリア(錦町)

では、まったく異なるようです。
人口比の人数が多いのは、蕨駅東口エリアですね。

 

 

定住外国人の実態は、実はあまりよく分かっていない。そこで体系的な調査をしよう

以上述べてきたように、非合法滞在者を含む、定住外国人については実態も正確な人数も、実はあまりよく分かっていないのです。

そこで、
今後、定住外国人(合法的滞在者、非合法的滞在者の両方)とどのように向き合っていくのか、政策立案の資料とするために、体系的な実態調査をやってみるべきだと考えました。

毎年継続的にやる必要は(取り敢えず今のところは)無いと思いますが、まずは一回やってみたいところです。

アンケート調査+インタビュ調査のハイブリッドでやった方が良さそうですね。

調べたい項目は、ざっくり以下のような感じです。

  • 属性 地域、性別、年齢、家族状況、在留資格の有無・種類、国籍、民族
  • 我が国にやってきた目的・理由
  • 蕨市にやってきた理由
  • 就労状況
  • 生活実態(居住環境、地域への満足度)
  • 子供の就学状況
  • 日本語の能力、学習状況・意欲
  • 日本人住民との交流状況・意欲、町会加入状況、地域の行事・祭りへの参加状況
  • 定住意向

(ところで、エスニシティを問うのって、ポリティカル・コレクトなんだろうか?? どなたか教えて下さい。)

 

他地方自治体の事例としては、ざっと探してみたところ、以下のようなものが見つかりました。どこも、外国人が多いとされている自治体です。

川崎市
川崎市webサイト : 外国人市民意識実態調査報告書

新宿区
新宿区webサイト : 平成27年度新宿区多文化共生実態調査

群馬県
群馬県webサイト : 定住外国人実態調査概要
(平成22年とかなり古い)