先の2012年3月議会において、頼高市長による23年度補正予算案「6.8億での市役所第二駐車場の土地開発公社からの買い戻し」を、私 ほやたけし(保谷武)が所属する保守系会派 新生会、公明党、民主党が否決しました。
この件に関して、頼高市長による反論を記した広報誌「フレッシュみんなの会ニュース No.105」を入手しましたので、さらにそれに対する反論を以下申し述べます。
フレッシュみんなの会(以下、頼高市長派と記す)とは、日本共産党籍を持つ共産主義者である頼高市長の後援団体でありますので、事実上、日共の関連団体であるものと思います。
尚、この広報誌は、私の地元の支持者のお宅にポスティングされていたものです。
①頼高市長派
「土地開発公社の借金は64億。すべて前市長時代のもの。校舎にかかる将来負担比率は県内ワースト2位」
公社にかかる将来負担比率は50%超である。25%以上が要注意とされており、健全化は待ったなしである。
↓
保谷武
「土地開発公社の保有土地:簿価64億は、前市長時代のバブル期に買ったもの。これは、今考えれば失敗だった。」この点については頼高市長派と認識は同じです。
参考:埼玉県 土地開発公社の現況
によると、
蕨市の、公社に係る将来負担額は、6,381百万円、比率は53.4%。
川口市に次いで、ワースト2位です。
ここまでは事実です。
ところで、「健全化」ってなんでしょうか?
地方自治体(すなわち都道府県と市町村)の財政の実態を数字であらわにし、やばい自治体財政をまともにする、ことを目的としたものです。
自治体の(自治体全体の)各種数値について、2つの基準(早期健全化基準と財政再生基準)を設けています。
市町村レベルと都道府県レベルにおいても、基準値は異なります。
参考:総務省webサイト「地方自治体」
市町村の(市町村全体の)将来負担比率については、350%を早期健全化基準として定めています。財政再生基準は無し。
前述の埼玉県の資料「土地開発公社の現況」は、本来は市町村全体の基準値であるものを、土地開発公社の基準値として当てはめて論じたものです。
他の都道府県においては、必ずしも同種の資料・議論は見当たりません。
それでは、財政健全化法における将来負担比率の基準値が「早期健全化基準:350%」であるにもかかわらず、埼玉県の資料において「要注意:25%」となっているのは、これは何でしょうか?
どうやら、第三セクターや土地開発公社などの塩漬け事業、塩漬け土地については、早期に清算するべき、という国の政策的判断によって定められた基準値のようです。
(通達か何かで出されたもののようで、出展は見つけられませんでした)
つまり、「要注意:25%」という基準値は、政策的に赤字三セクや塩漬け土地を清算するように誘導するために定められたものであり、この数値を超えたからといって「やばい!待ったなしだ!」ということはないのです。
それでは、蕨市全体の財政は、健全なのか?不健全なのか?
参考:総務省 平成22年度決算に基づく健全化判断比率・資金不足比率の概要(確報)
このページの中の「資料」というリンクをクリックすると、全市町村、前都道府県の将来負担比率(を含む各種数値)を見ることが出来ます。
何かと話題になる、夕張市は、922.5%。
全国平均は、
市町村平均が79.7%
政令指定都市のみ平均が176.1%
市区のみ平均が57.1%
それでは我が蕨市は→→→46.5% です。
(近隣の戸田市が42.0%、川口市が86.6%)
蕨市の財政は健全です。
「待ったなし」な状況などではありません。
②頼高市長派
「銀行からの多額の借金を続け、金利は市民の税金で負担。金利負担額は、この10年間で約7億4000万円」
↓
保谷武
10年間で約7億4000万円ということは、ざっくり計算すると、1年間で7,400万円ということです。
この数字、大きいと思いますか?小さいと思いますか?
蕨市の一般会計予算は、210億2,000万円(24年度)です。
7,400万円という金利負担額を210億2,000万円で割ると、0.35%です。
例えば、月の世帯手取り35万円(年間手取り420万)の一般家庭があったとすると、相当する金利負担額、月1,232円(年で1万4,786円)です。
「10年間で7億4000万」という数字だけを目にすると、「なんて大きな金額!」と思ってしまいますが、蕨市の財政規模において考えると、たいした金額ではありません。
③頼高市長派
「防災対策に回せと言うが・・・頼高市長になって、学校校舎の耐震化完了、学校体育館の耐震化など防災対策は大きく前進」
土地開発公社の借金を減らせば、その分、金利負担が減り、市民サービスに回せる。
↓
保谷武
頼高市長の防災対策については、頑張ってやっていると、ある程度は評価します。
「土地開発公社の借金を減らせば、その分の金利負担が減るので市民サービスに回せる」というのは、詭弁以外のなにモノでもありません。
「土地開発公社の借金6.8億」を清算するパターンと、塩漬けにしたままのパターンとを比較してみましょう。
6.8億円の借金の利息は、年で244.8万円。10年間で2,448万円となります。
パターン1:借金を清算
10億円を払って、借金を清算する。
金利負担がなくなるので、10年間で2,448万円が節約できます。
国と県から50%の補助金が出るような事業を行えば、4,896万円として自由に使えます。
パターン2:土地を塩漬けにしたまま→10年後に清算
金利負担として、10年間で2,448万円がかかります。
他方、6.8億円を自由に使えます。国と県から50%の補助金が出るような事業を行えば、13.6億円として自由に使えます。
つまり、真水で 13.6億 – 2,448万円 = 13億3,552万円の自由に使えるお金が出来るのです。
10年間十分に運用した上で、借金6.8億は10年後に清算すればいいのです。
問題は「このお金を何に使うか」です。
使い道、使う目的が問題なのであって、借金そのもの、土地を塩漬けにしておくことそのものが問題なのではありません。
④頼高市長派
「子ども達に借金のツケを残さないために。市民の願い実現と市財政健全化の両立は、多くの市民の願い」
↓
保谷武
借金は悪ではありません。
「借金のツケ」というのは、「悪い借金」が世代を越えて引き継がれ無くてはならないときに使われる言葉です。
例えば、「親が身分不相応にベンツを買った借金を返す途中で死んでしまい、残った借金を子供が返さなくてはならない」→これは、悪い借金であり、子供にとっては親の「借金のツケ」です。
例えば、「親が家を建てた。親は借金を返す途中で死んじゃったけど、子供は借金を返しながら、親の思い出とともにその家に住み続けている」→これは良い借金です。
正しいお金の使い方、私達現役世代だけではなく子ども達にとっても利益のあるお金の使い方をするならば、借金は悪いことではありません。
既に述べたように、蕨市の財政は健全であり、危険な水準ではありません。
企業経営においても「無借金経営」がさも美徳であるかのように褒め称えられることがありますが、これは間違っています。借金をして、限られた経営リソースに最大限レバレッジをかけて活用し、利益を極大化することが正しい経営です。
本来やるべきことをやらずに借金を闇雲に減らすことは、間違っています。