鉄道駅のホームは危険
昨年2017年1月に、蕨駅において、盲導犬を連れた全盲の方が、誤ってホームから転落し、電車に轢かれて死亡するという、とても痛ましい事故がありました。
毎日新聞 2017/1/15 : 埼玉・JR蕨駅の男性転落 転落の全盲男性死亡 ホームに駅員不在
駅のホームはとても危険です。
目が不自由な方のみならず、車イス利用者などのしょうがい者、足腰が弱った高齢者、子供にとっても転落の危険があります。
酔っ払いが落ちたり、自殺志願者が自ら飛び込む可能性もあります。
健常者でも、誤って落ちた時に打ち所が悪ければケガをするでしょう。
駅のホームドアの安全確保のための対策:ホームドアの設置
この種の、駅のホームの危険を減じて、安全を確保するための対策として、「ホームドアの設置」が有効とされており、世界の鉄道の主流となっています。
2016年1月、東海道新幹線 東京駅。
がっちりしたホームドアで、左右からするすると伸びてきて閉まる仕組みです。
東京駅は、全ての列車がかならず停車するはずなので、全ての車輌が低速でホームに進入してくるはずなのですが、ホームドアはしっかりと設置されています。
他方で、ひかり・やまびこ等がスキップするような新幹線駅においては、高速で車輌が通過するわけですが、未だホームドアが完備されていない駅もあります。
2017年12月、那覇のモノレール駅。
次に海外を見てみましょう。
2017年3月、台湾の台北。地下鉄のホームドア。
日本の新幹線、那覇モノレールと同じように、人の胸くらいまでの高さのものです。
2016年6月、中共の広州。地下鉄のホーム壁。
2016年4月、中共の天津。地下鉄のホーム壁。
2016年3月、台湾の高雄。地下鉄のホーム壁。
2016年3月、韓国のソウル。地下鉄のホーム壁。
2017年3月、香港。エアポートエクスプレスのホーム壁。
2016年12月、スペインのバルセロナ。地下鉄のホーム壁。
以上のように、新しい鉄道路線においては、ホームドアと言うよりも「ホーム壁」が整備されています。車輌が通る線路の部分と、人がいるホームの部分は、完全に隔離されています。これは安全ですね。
クルマが縦に2,3台並べられるくらいの幅の広いホームを、「壁」で線路の部分と隔離するのが、世界の新しい地下鉄駅の設計の主流となっています。
尚、古い鉄道は、どこの国でもさっぱりホームドア設置は進んでいません。
根本的に、設計上難しいのだと思われます。
2016年5月、英国のロンドン。地下鉄のホーム。
東京の地下鉄も同じですが、古い地下鉄は、人の動線設計はメチャクチャだし、駅のホームは狭くて新たにホームドアを設置する余裕がなさそうなところが多いです。
参考として、2016年4月、北朝鮮 平壌の地下鉄。
車輌の長さは4輌。
アイランド式のホームは天井が高くて幅広で真っ直ぐなため、見通しがよいです。
やる気なさそうな駅係員がホームに常駐して監視しています。
いくらスタッフがいても、人が落ちてすぐに発見することは可能ですが、転落を未然に防ぐことは出来ません。ましてや、車輌が進入してくる直前に人が転落したら、救い出すことは不可能です。
やはり、ホームドアもしくは「ホーム壁」に勝る安全対策はありません。
蕨駅へホームドア設置を要望していた
行政当局も、市議会も、「ホームドアの設置」を要望していました。
蕨市議会 webサイト : 議員提出議案第2号 蕨駅に早期にホームドアを設置し安全対策を求める意見書
基本的に、駅の安全対策に責任を負うのは、鉄道運営会社であるJR東日本です。
ホームドアを設置する主体も、JR東日本です。
この意見書は、「早期のホームドア設置」を求めるものですが、ホームドア設置はあくまでも手段です。
目的は、「駅の安全対策の確保」です。そのために「ホームドア設置」がベストであろうと考えたからこそ、ホームドア設置を求めたわけです。
JR東日本:首都圏の全駅にホームドアを設置することを発表した
毎日新聞 2018/3/8 : JR東日本 首都圏全駅にホームドア 32年度末までに
つい先日、JR東日本は、2032年度末までに首都圏の主要24路線の全243駅にホームドアを設置することを発表しました。2032年度というとだいぶ先の話ですが、全ての駅にホームドアを設置するとなると、それだけ規模の大きな案件だ、ということです。
また、合わせて、JR東日本が今後新たに設置するホームドアは、町田駅で試行・実用化実験を行っていた、新しいタイプの「スマートホームドア」とすることを発表しました。
朝日新聞 2018/3/7 : JR東、ホームドア大幅増へ 今後15年で243駅に
朝日の記事によると、従来型と比べると、大幅に軽量化されるため、費用は半額、工期は4割短縮できるとのことです。
ホームドアというものは、素人が想像する以上に重い物であるため、駅ホームの構造によっては構造補強が必要になるため、かなりお金がかかります。また、列車運行を止めて工事を行うわけにはいかないため、工事期間もかなりかかります。
(後述のように、蕨駅の場合は12億円、2年間)
軽量化よる、費用減・工期短縮によって、それだけ首都圏全駅ホームの安全性の確保が早く実現するわけですから、素晴らしいことです。
蕨駅のホームは危険であり、実際に不幸な事故も発生しましたが、危険なのは蕨駅のホームだけではありません。
私は蕨市の議会議員ですが、蕨駅のホームだけが安全になれば他の駅はどうでもいいとは思いません。
一部には、「従来型と比べると、スマートホームドアは簡易な造りに見えるので不安だ」という意見もあるようですが、安全性が確保出来ないわけではありませんし、首都圏全駅の早期の安全性確保を実現するスマートホームドアは歓迎すべきものと考えます。
このJR東日本が開発したスマートホームドアの技術が、他の鉄道会社や、世界中の古い鉄道路線に広まって、一件でも不幸な鉄道事故が少なくなることを望みます。
蕨駅のホームドア設置:平成30年度から2年間で工事を行い、総工費12億
蕨駅のホームドアは、JR東日本が主体となり、来年度 2018年度から2年間で実施することとなりました。
総工費は12億円とのことです。
え!そんなにかかるの!とビックリした方が多いのではないでしょうか。
蕨駅の場合は、古い構造の駅であるために、構造補強が必要だから規模が大きくなってしまうのだそうです。
この12億円の総工費に対して、2年間で1億20百万円を市・県で補助することになっています。
来年度 2018年度は、7百万400千円が補助金として、ただ今開会中の3月定例議会に予算案として上程されています。
7百400千円のうち、半分は県が負担します。
(一旦、県が市に支払い、市がまとめてJRに支払う流れを取ります)