本日、平成31年2月7日(木)、蕨市民会館において、北朝鮮による日本人拉致問題啓発舞台劇公演『めぐみへの誓い — 奪還 –』がございました。
全国各地で公演して回っているようで、
・政府拉致問題対策本部による、拉致問題の概要説明
・拉致被害者の家族会の方のスピーチ
・シンガーソングライターによる被害者救出を願う歌の演奏
・90分間の拉致啓発演劇
が一つのパッケージになっています。
二中生も、授業の一環で見学しておりました。
たいへん感動する素晴らしい公演でございました。
関係者の皆様、ありがとうございました。
感想は、「酷い、悲しい、かわいそう」
会場で耳にした感想は、だいたいこのようなものです。
今回のパッケージは、あくまでも啓発が目的ですので、これでいいと思います。
啓発というのは、知らなかった人に、知らしめること、です。
AIDMAすなはち、
Attention 注意をもたせる
Interest 興味、関心をもたせる
Desire 何かを望むようにさせる — 拉致問題においては、被害者の救出を望む
Memory 記憶させる
Action 行動させる
のプロセスにおける、A~I あたりが啓発であり、本パッケージの目的となります。
人に何かを伝え、認知させるためには、喜怒哀楽の感情をフックとするのは定石でありますので、「酷い、悲しい、かわいそう」という、オーディエンスの感情に訴求するのは正しいやり方です。
北朝鮮による日本人拉致が、今どきの小中学校でどのくらい教えられているのかは寡聞にして知りませんが、少なくとも私の世代では、小中学校ではまったく教えていませんでした。
この問題については、むしろ子どもたちより、大人世代の方が知識が乏しいかもしれません。
拉致問題における、Desire
北朝鮮による日本人拉致問題を初めて知った人は、「救出しなくては!」と、まあ普通は思うでしょう。
思わない人も、いるのかな?
さすがにいないと思いますけどね。
これが、拉致問題のAIDMAにおける、Dですね。
Aの段階から、I、Dの段階まで引っ張ってくるのは、難しくないと思います。
拉致問題における、Actionの難しさ
今日の蕨市民会館の公演が終わって、「酷い、悲しい、かわいそう!」という気持ちに身を震わせて会場を出ると、救う会(ボランテイア団体)による署名活動をやっていました。
ここで、まあ普通の人は署名するでしょう。
「これでかわいそうな拉致被害者が帰ってくる!」と短絡的に考える人はさすがにいないと思いますが、ここで「私は傍観者じゃない。私もActionを起こしたんだ」とカタルシスを得られる仕組みになってしまっています。
真面目な気持ちで署名活動を永年に渡って続けてこられた、家族会、救う会の方々には頭が下がりますし、かつては、彼らの努力のおかげで政府が重い腰を上げてようやく動くようになってきた、という面もあったと思います。
署名活動の宛て先は、あくまでも日本国政府であり、その要求内容は「救出活動に力を入れること」となっています。
既に今日においてはかなり力をいれて取り組んでいる政府に対する、さらなる圧力にはなりますが、北朝鮮政府に対する直接的な圧力にはなり得ません。
それでは、
どんなActionを起こせばいいんだ?
拉致被害者を救い出すためには、何をすればいいんだ?
ということなのですが、
現下の拉致問題啓発・救出活動の難しさは、このActionプランを提示できていない、ということです。
国家間の外交問題において、個人ができることというのは、ほとんどありません。
(繰り返しますが、署名活動をなさっている方々は素晴らしいと思いますし、心から尊敬しています)
蕨市における、拉致被害者救出に向けた具体的アクションプラン
現下の、我が国における拉致被害者救出のための政策は、国際社会の協力を得て、北朝鮮に対して制裁を加え、圧力を掛け続ける、というものです。
蕨においても、北朝鮮、我が国における北朝鮮の出先機関である朝鮮総連に対して圧力をかける方法があります。
たびたび市議会で取り上げておりますが、蕨市には、朝鮮学校に通う子供の保護者向けの不可解な補助金制度が存在します。
(平成30年度 蕨市予算書より)
これを廃止することが、蕨市における、蕨市民が行い得る、拉致被害者救出に向けた具体的なアクションです。
北朝鮮は地獄のようなところ?
さて、今日の演劇の中で、拉致された日本人被害者が、北朝鮮において理不尽な暴力を振るわれたり、酷い扱いを受けたりするグロテスクなシーンがありました。
北朝鮮がいかに極悪非道で人権無視の邪悪な国であるか、ということを強調するようになっています。
これはもちろん私は真実だろうと思うのですが、相手方を感情的に敵視して非難するだけでは、本質を見誤り、冷静にアクションプランを考え、実行することの妨げになります。
彼らがいかなる考えの下で、日本人を含む外国人の拉致を行ったのか、そしてその事実を部分的に認めておきながら現在も身柄を返そうとしないのか、冷静に研究した方がいいでしょう。
私は3年前に平壌を視察(兼 平壌マラソン参加)で訪れたのですが(私費旅行)、その時に、もし自分がこの邪悪な国で生まれ育っていたら、どうしただろうか?ということを考えました。
その時は、自分はどの分野においても高い能力を持っているわけではない弱い人間だけど、中途半端に要領はいいので、窮屈な体制の枠組みの中でそれなりに上手く立ち回り、自分なりの楽しみを見つけて、それなりに面白おかしくやっていくのではないだろうか、と考えました。
よし!クーデターを起こして体制を転覆してやるぞ!とかは考えないと思います。
この結論に至ったときは、我ながらちょっと愕然としましたが、率直な感想でした。
私には、邪悪な体制の手先となっている、一人ひとりの北朝鮮の人たちを非難することは出来ません。
メーデースタジアム。
会場を埋め尽くしているのは、職場単位で動員されてきた労働者たち。
平壌市内。
平壌マラソンに出走し、チビッコたちとハイタッチしました。
街路樹は杏です。
道路上の電線はトローリーバスのもの。
レース中に軍人や警察官を撮影した外国人選手たちは、カメラを没収されていました。