令和元年(2019年)9月9日(月)未明に、関東地方に上陸した台風15号は、雨は大したことはなかったものの、記録的に風が強く、房総半島では送電線の鉄塔をなぎ倒し、広範囲に停電と断水をひき起こした。
そろそろ丸6日間経つが、広い地域でまだ断水と停電は復旧していない。
ということで、被災地を見学してきた。
当地には縁もゆかりもなく、ボランティアではなくて、ただの見学。
茂原に大学時代の友人が住んでいるが、停電に見舞われることはなく、無事だったとのこと。
ガソリンスタンド、コンビニは、かなり平常営業に戻っていた
バイクに乗って、首都高C2、アクアライン経由で木更津から房総半島に上陸。
停電のために給油ポンプが動かせず、営業していないガソスタが多い上に、営業していても長蛇の列、という報道を見聞きしていたので、木更津のガソスタで満タンにする。
アクセルをあまり開けずにエコランすれば航続距離:500kmは走れるバイクなので、これで大丈夫。
食べ物や飲み物が入手できない可能性に備えて、コンビニで一通り買い込んで行ったけど、杞憂だった。
どこに行っても、ガソリンスタンドはかなり平常営業に戻っており、クルマが列をなしているということもなかった。
コンビニ、スーパーやドラッグストア、ホームセンタ類は、開いていないところもあったが、開いているところのほうが多かった。しかし、弁当類、食材類の棚はほとんど空っぽだった。
鋸南町:屋根が壊れた家が多い
あっちもこっちも、家々の屋根がブルーシートで覆われている。
瓦が吹き飛んだりして屋根が壊れたところを、応急処置している。
被災直後にTVを見ていたら、「各地から足りない物資情報」を取り上げていたのだが、食べ物や水ではなく、「ブルーシート」を挙げている街が多くて驚いたものだ。
屋根は、地震でも壊れることがあるが、今回は台風による強風の被害なので、事前の想定以上の規模で屋根が壊れてしまったようだ。
あくまでも応急処置なので、この程度では、家の人は、心配でたまらないだろう。
被害の様子をTVで見て、ぼんやりと「停電や断水といっても、せいぜい1週間くらいなんだから、被害がなかったエリアに旅行にでも行って、復旧するのを待ってればいいんじゃね?」と思ったものだが、とてもではないが、家が心配で遠く離れることなんてできないだろう。
あちこちブルーシート。
保田漁協直営の、港に建つ日帰り温泉施設。
瓦礫が山積みされている。
倒れた木を受け止めた金属製フェンスが、くにゅっと曲がってしまっている。
窓ガラスが割れたクルマが多数
あちこちでこのように窓ガラスが割れたクルマを見かけた。
透明なビニルシートや、ダンボールなど(前側でない場合は)で応急処置をしている。その状態で高速道路を走っているクルマもいた。
風だけの力でガラスが割れたのだろうか?
推測だが、そうではなく、風で飛ばされてきた何かがぶつかって割れたのではないかと思う。
「記録的な強風」と事前に天気予報では注意喚起されていたので、クルマの窓ガラスに毛布を巻きつけるなり、ベニヤ板を貼り付けるなどしておけば、被害を防げたかもしれない。
小さなコンクリートブロックの基礎の上に、トラックのコンテナを置いて倉庫として使っていたもの。
風に飛ばされてゴロンと横倒しになっている。
館山市:街の中は、一見すると平常運転のようだが
お腹が空いたので、館山市内の海沿いのファミレスへ。
食材が一部入荷していないとのことで、メニュと営業時間を絞って営業していた。
たまたま2つ隣りの席にいた20代くらいのおねーちゃん二人組の会話を、聞くとはなしに聞いていると、
自分のクルマは奇跡的にノーダメージで良かったー、停電やだもういつになったら復旧するんだろ、といったことを話していた。
漁港に行く。
長屋形式の倉庫は、屋根がベロンベロンに剥がれていた。
漁船はなぎ倒されていた。
電気の復旧は進む
館山市内で、高所作業車を5台くらい並べて、電柱の復旧作業をしていた。
このような高所作業車が、あちこち走り回っている。
電気はかなり復旧しているようだが、まだ通っていないところもある。
復旧した地域では、いつも通りの日常生活に戻りつつあるが、その隣りのまだの地域では、夜になれば真っ暗で何もできない、天と地ほども違う状況。
南房総市:陸上自衛隊がお風呂を提供している
房総半島のほぼ南端にある、南房総市の白浜コミュニティセンタへ。
土のう袋とブルーシートが山積みになっていた。
センタの中では、食べ物とかその他の物資を配布していたりしたようだが、中に入るのは遠慮した。
陸上自衛隊第1後方支援連隊の車両。
第1後方支援連隊は、首都圏各地に中隊が駐屯しているが、この部隊は練馬の部隊。
お風呂を提供している。
男女別々。
湯船だけではなくシャワーもあるが、銭湯に入るときと同じように、洗面器、石鹸、シャンプー類は持参しないとならないようだ。
シャワーだけではなく、湯船まで揃えたお風呂に入れるのは、世界中の軍隊の中で、我が国の自衛隊だけらしい。
なぜ広範囲に断水しているのか、謎
市の給水車で水を汲む人たち。
今回、謎なのが、広範囲に断水していること。
地震ではなく台風なので、水道の管路がダメージを受けたわけではない。
一般家屋は、屋根や壁が吹き飛ばされたところもがあるだろうが、水道施設の建物は頑丈に造ってあるはずで、運転できなくなるほどの直接の被害を受けたとも考え難い。
停電によってポンプが動かせなくなっているとしても、当然ながら、自家発電装置は備えているはず。
発電用の燃料の備蓄を使い果たしてしまえば終わりだが、1日に数時間だけ水を流すといった措置を講じて、補充が得られるまで耐えることもできるはず。
蕨市水道部の技術系の某幹部にお聞きしたが、蕨市の場合であれば、当然、自家発電装置を回して給水することは可能だし、管路と設備が生きていて、燃料さえ得られれば、停電してても水道が止まることはあり得ない、とのことだった。
なおかつ、各町会にスタンドパイプ(消火栓に挿して、手動で給水できる装置)が配布されており、一般家庭への配水系が止まったとしても、各地域において、消火栓から給水することが可能だ、と。
その方は、そうは言っても、災害の時には何が起こるかは分からないので、絶対とは言い切れないけど・・・と言っていた。絶対大丈夫と言い切らない点は良心的だ。
「想定外は、あってはならない」などと唱えられることもあるが、想定外を100%潰すことなんて幾何級数的に無限に近くリソースを投じない限りは不可能である。
停電した闇の中を走る
日没後、内房の海沿いのルートを折り返して帰る。
停電している地域と、平常通りに電気が通っている地域が入り混じっている。
停電していても、交通信号だけはついているところもあれば、交通信号も止まっている地域もある。
真っ暗な中で煌々と明かりが灯っている建物があり、何だろうと思えば警察署だった。
警察署はさすがに自家発電装置を持っているんだろう。
完全停電地域にて、幹線道路を外れて、内房線の上総湊駅へ。
JRの駅やプラットフォームは、平常通りに電気が点いている。
(写真だとかなり暗く見えるが、これで平常通り)
JRは、独自に発電所や送電設備を持っているので、東京電力の電力グリッドが止まっても没問題。
そして、駅から、駅前のメインストリートを振り返ると、真っ暗。
幸い月が明るいが、それでも真っ暗。
山の上に十字架が光っており、後で調べたらキリスト教系の特養老人ホームだった。この特養も自家発電装置を持っているのかな?
被災された皆様の、一日も早い復旧をお祈り申し上げる。
そう言えば、全然関係ないけど、本日9月14日は、弊社、株式会社ブレード・コミュニケーションズの創業記念日だった。たまたま登記したのがこの日だっただけで何の感慨もないけど、取り敢えずめでたい。