埼玉県議会 文教委員会にて、福井県立 恐竜博物館に視察に行ってまいりました。

この博物館は、公立の博物館としては、全国屈指の成功例として知られています。
恐竜博物館の来館者数
年間の来館者数は、なんと、126万人です。
これがどのくらいスゴい数字なのか?
埼玉県の県立博物館と比べてみましょう。

(c)埼玉県教育委員会
埼玉県立博物館は、6館あり、令和6年度の年間来館者数は、
| 歴史と民俗の博物館(さいたま市) |
13万人 |
| さいたま史跡の博物館(行田市) |
11万人 |
| 嵐山史跡の博物館(嵐山町) |
6万人 |
| 近代美術館(さいたま市) |
21万人 |
| 自然の博物館(長瀞町) |
9万人 |
| 川の博物館(寄居町) |
26万人 |
6館合計で85万人です。
福井県立恐竜博物館の来館者数が、いかにダイナソー級に大きいかということが分かります。恐竜だけに。
もちろん全国の都道府県立博物館の中で、来館者数は圧倒的な1位です。
体系的な最新の来館者数のデータは入手できなかったのですが、おそらく2位は滋賀県立琵琶湖博物館で、53万人です。
恐竜博物館の成功の秘訣は?
まず、入館者数の年度別推移を見てみましょう。

(c)福井県立恐竜博物館
平成12年度(2000年度)にオープンしました。
オープン初年度は別として、オープン後数年間は、20万人台で横這いでした。
ターニングポイントとなったのが、平成21年度(2009年度)で、この年に、教育委員会から、観光系を管轄する交流文化部に所管替えになっています。
この前後の年から、躍進が始まっています。
研究・教育機関という位置付けだったものから、ガッツリ観光客を集めて稼いでいこう、地域と連携して経済効果を高めていこう、というマインドに切り替わったようです。
今の館長は、産業労働部にて企業誘致に携わっていた県職員の方で、営業マインドを持った方です。
帰ってきてからプロフィールを調べていて気がついたのですが、学類違いですが、大学の先輩でした。先輩のご活躍を嬉しく頼もしく感じます。
令和2年から数年間のコロナ禍において激減しましたが、コロナ禍からの回復期における増加トレンドは、異常なほどです。
令和6年(2024年)3月に北陸新幹線が福井駅に延伸しましたが、その前から始まっていた、観光業界を挙げての北陸キャンペーンのポジティブインパクトは大きいでしょう。
次に、館内の写真を見ていきます。

館内に入ると、長いエレベータで地下に潜って行くプロローグ空間があります。
現代から、恐竜の時代へ、という気持ちの切り替えを促す演出となっています。

これらの実物大恐竜たちは、レプリカもあれば、本物の化石を組んだものもあります。

こちらは、本物の恐竜のミイラの化石。

発掘現場のレプリカ。
大型予算を投じていることもさることながら、この福井の地では多数の恐竜の化石が発掘されており、それらを展示しているという唯一無二のコンテンツ力が、競争力の源泉でもあります。
規模は大きく、とてもとても1時間程度で見きれるものではありません。
次回は、1泊2日で個人的に見学に訪れたいと思います。
また、これらの展示された化石たちは、県予算を投じて発掘調査を行い、見事に恐竜の化石を掘り当てた、という経緯があるそうです。
果たして化石が出てくるかどうか、当たるも八卦、当たらぬも八卦というバクチ感覚で県予算を投じてチャレンジした化石発掘調査が、めでたく当たった、ということです。よく議会が認めましたね。副館長は「山師と同じですわ」と言っていました。
恐竜は、誰もが好きですし、ロマンを感じますね。
「恐竜」という唯一無二のコンテンツ力、これも成功要因の一つです。
そして、次の要素が、アカデミズムとの連携の重視です。
前述のように館長は文系で営業経験を持った県職員なのですが、副館長は理学博士の学者の方で、2000年の開館当時から恐竜博物館に携わっています。他にも多くの学者が、恐竜博物館に所属して研究を進めています。
学芸員ではなく、研究者です。
研究を行いながら、福井県立大学に恐竜大学を立ち上げたり、東京都内のデパートに出張して子供向け恐竜教室を開催したりしています。

恐竜の発掘現場体験コーナー。
このコーナーは、事前予約制で、有料です。
掘り出したばかりの状態とか仮定した、レプリカの化石を、クリーニングする発掘作業を体験することができます。

化石のレプリカを用いた、恐竜の頭骨復元作業の体験。
骨組みに、化石のレプリカをパズルのように組み合わせていきます。
家族連れがここにやって来ると、子どもたちよりも大人の方が夢中になっている、とのことでした。
ところで、福井駅までは北陸新幹線で訪れたのですが、駅を降りたときから、あちこち恐竜だらけなんですよ。

北陸新幹線の福井延伸に伴い、新しくなった福井駅構内。
恐竜の化石のレプリカが展示してあります。

恐竜博物館に行く途中、道端に突如として見かけた恐竜の模型。
他にも、橋の欄干に恐竜が立っていたり、恐竜の足跡をデザインしたランドセルの看板があったり、交番の外壁は制服を着た恐竜のゆるキャラが描かれていたり、あちこち恐竜だらけです。

宿泊した福井市内のホテルにて。

ホテルお勧めの「福井県のお土産」は、もちろん恐竜グッズで決まりですね。
地域を挙げて恐竜コンテンツを誇りとする気運の醸成がなされています。
福井県立恐竜博物館の成功要因まとめ
ということで、まとめると、
- 北陸新幹線の福井延伸(2024年3月)
- 恐竜という唯一無二のコンテンツ力
- アカデミズムとの連携の重視
- 教育委員会から観光部門へ所管替えしての、営業体制の強化
- 地域を挙げての恐竜コンテンツを誇りとする機運の醸成
と言ったところかと思います。
いやはや、簡単に真似できるものではありません。
しかしながら、
- 埼玉県(732万人)と福井県(73万人)の人口差(奇しくも10倍)
- 首都圏に位置しインバウンドツーリストを取り込みやすいという地の利
を活かせば、埼玉県の県立博物館もまだまだ伸びしろが大きい、とも言えると思います。
埼玉の県立博物館をもっと魅力的に、もっと多くの方に届けるために、政策提案を続けてまいります。