蕨市ではちょうど一ヶ月後の令和元年6月2日(日)に、市長・市議選挙が同日に行われる予定です。
私も、ただ今、しこしことポスター、配布パンフレットなどの印刷物類の原稿を作っております。
私自身はデザイン制作はできないので、私自身が行う作業は、テキストの原稿を書いて、過去に撮りためた写真素材を選んで、簡易な指示書を作るところまでです。
これが、4年前の2015年版のリーフレット。
さて、この種の地方議会選挙における、ポスター、配布パンフレットなどの印刷物の類の読み方について、私見を交えて解説しましょう。
掲載してある要素は、概ね、以下のようなものです。
- 氏名
- 人物写真
- プロフィール
- 政策案・公約・マニフェスト
- 実績
大きなポイントとしては、書いてあることではなく、書いてないことを読み解くのが一つのコツです。
ちなみに、4年前、2015年の蕨市議会議員選挙のときに私が配布したリーフレットは、こちらです。
http://www.hoyatakeshi.com/data/hoya_leaf_fin.pdf
プロフィールの読み方
略歴と役職、趣味や家族構成なんかを載せるわけですが、
学校を卒業後、初当選までの間に何をしていたか?
というのが、一つのポイントでしょうね。
その人物のバックグラウンド、スキルセットを把握するのに必要な情報のはずなのですが、意外なことに空白になっていることが多いのです。学校卒業の次の項目が、○年△初当選となっていて、その間が10年間空白、といったように。
印刷物のスペースには制約があるし、あくまでも略歴なので、省略されていても構わないのですが、逆に言うと、候補者本人が「重要なインフォメーションではない」と判断したからこそ載せていない、ということになります。
よくあるのは、国会議員秘書を転々としたり、家業に入ったり、というパターンですが、国会議員秘書もピンキリだし、家業を手伝うと言ってもニートと紙一重の場合もあります。
企業名が書いてある場合は、「企業名 + 人物名」でぐぐってみると、細かい情報がヒットすることもあるでしょう。
また、私は、その人が新卒で初めて入った業界・会社、就いた仕事が何か、というのも、一つの人物評価のポイントだと思います。その人の先読み力を示しているし、社会人としてのベースとなる考え方に大きな影響を与えているはずです。
私は新卒でニチメンという会社に入社したのですが、当時9社あった総合商社の序列下位であり、規模が意味を持つ業界なので、まあ良くも悪くもその程度ってことですね。
2年で転職しましたが、やはり物事の考え方に大きな影響を受けました。
その後、日商岩井と合併して双日となり、新卒当時の同期はあちこちに散らばっていますが、みんな良くも悪くも共通する類型がある気がしますね。
ちなみに、私の場合は、上記リンク先の2015年版リーフレットでは、けっこう細かく書いております。「転職するようなヤツは、堪え性のない、どうしょもないヤツだ」という見方をする方が依然として多い中で、敢えてサラリーマンとして所属した企業名は全部載せています。しかし、スペースの制約もあるので、そこでどんな仕事をしたか、というところまでは載せていません。2004年に起業してから、はや15年も経つのですが、そこで何を為したか、という点も触れていません。
2000年代のネット業界で、それなりに最先端で、それなりに結果を出してきたつもりではありますが、すべて過去のことであって、今は自分の会社もほとんど休眠状態だし、現場を離れて10年近く経つ今となっては、動きの早いこの業界においては、過去の知見も経験も役に立たず、使い物にはなりません。
・・・ということが、私のプロフィールからは読み取れると思います。
蛇足ですが、趣味の欄は、「映画と読書と散歩と食べ歩きです」みたいに無難に書いてある事が多いですね。
私の2015年版リーフレットのプロフィールでは、「トライアスロン」を入れておいたのですが、税金で飼ってやってるのに遊んでんじゃねえ的な見当違いな批判を受けたことがあり、2019年版では消すことにしました。何故かこのスポーツは、実態に反して「セレブに人気」みたいなマーケティングをしている集団があり(これとかこれとか)、それはそれで腹が立つのですが、まあ、いちいち説明するのも面倒なので消しました。
ということで、私はオフィシャルにはトライアスロンはやっていないことになっていますので。やってるけど。
政策案・公約・マニフェストの読み方
基本的に、ポジティブワードを散りばめて、あらゆる分野を網羅的に取り上げつつ、地元ネタについては更に掘り下げる、というのが定石です。
地方議員は、特定の得意分野におけるスペシャリストではなく、ゼネラリストであることを求められているので、全分野を網羅しなくてはなりません。
その結果、「お年寄りが安心して暮らせる街づくり」といったように、具体性が皆無で、取り敢えず載せただけ、という項目も掲載されることになります。
言わば、ごまかしですね。
私の、政策リーフレットにもこの手の項目は多数載せています。
他方で、様々な軋轢を生みかねないために、敢えてぼかした表現の項目もあります。
私は、少子高齢化に対応するための行政サービスのリバランスの一環として、小学校の統廃合は避けられないと考えているのですが、当然ながら、統廃合候補となっている小学校の学区の住民は激しく反対するはずなので、現在作成中の2019年版政策案では、敢えてぼかした表現をしています。
ごまかしで載せただけの項目、敢えてぼかした表現の項目が散りばめられた中から、その候補者が本当に力を入れたいと思っている分野は何かな?ということを、丹念に読み解いていただきたいと思います。
議会において、一議員が単独でできることは、議会において発言することだけです。議会における発言は、重みがあり、半永久的に記録されますが、しかしながら聞き流されてしまえばそれでおしまいです。
議会における意思決定の原則が数の論理である以上、他者を説得していく手続きが必要になります。
予算をつけるためには、首長の理解を求め、予算編成の過程で採用してもらうことも必要です。
このように、掲げる政策案の実現のためには、本人の努力だけではどうにもならない、他者に依存する部分が多々あります。
ましてや、実現・達成を確約したり、数値目標やスケジュールを設けるのは、ほぼ不可能です。
絶対確実に言えることは、「○×に真剣に取り組みます」という努力目標くらいです。
数値目標やスケジュールが書いていないからと言って、いいかげんに載せただけではない、という点にも注意してください。
この点は、予算編成権を持つ首長候補の政策案との大きな違いです。
実績の読み方
私がこれを実現しました!あれを作ったのは私です!というアピールです。
新人候補にはできない、現職ならではのワザですね。
上記で述べたように、一つの政策が、一議員の活動だけの結果として実現されることはありません。所属会派を巻き込み、他の会派を説得して、首長の理解を求めて予算をつけるという過程を経て実現されるわけで、多くの議員・首長が関わることになります。
その過程で、その人が何を為したのか、がポイントです。
一番、最初に唱えたからエラい、ということではありません。
一番、声が大きかったからエラい、ということもでもありません。
一番、議会で取り上げた回数が多かったからエラい、ということでもありません。
無駄なアピールを識別する視点も必要です。
よくあるのは、視察アピール、署名アピール、現場でやりましたアピールです。
視察しました!全力で取り組んでます!
まあ、悪くはないのですが、よそを視察しただけでは無意味で、それをどう自らの自治体の政策の実現につなげていくのかが重要です。
私もよく自然災害の被災地などに視察に行きますけどね。
署名活動をやってます!ご協力を!頑張ってます!
まあ、いいのですが、署名が何かを動かすことはあまりないですね。私見ですけど。
2013年に、以下のような署名活動を行い、今に至るまで要望を投げ続けていますが、行政側・市長側の回答はゼロですね。
市長を替えれば動き出す可能性はありますけど。
地方政治における署名活動がマスメディアに取り上げられることは、まずあり得ないし。
【蕨市】西小学校の屋外トイレ新設と地域運動クラブへの体育道具倉庫一部の貸与を求める要望書を、市長宛てに提出しました。
現場でやりました!
例えば、政策案として緑化推進を掲げている人が、自ら公園の雑草取りをしたり、河川の浚渫を唱えている人が、自ら長靴を履いてヘドロを掻き出したり。
うーん、うん。いいと思います。
私は腰が重くて出不精なので、頭が下がります。
ところで、あるネット業界の友人がFacebookに「候補者を選別する参考にしたいので、個々の現職議員の、条例案提出件数を掲示してほしい」と投稿していました。
基本的に、市町村議会では、議員提出条例案というのは、ほぼありません。
条例案には、独特の文法があり、上位の法(国の法律、県の条例)と整合を取らねばならず、それを作るのは高度な職人技の世界です。
政策スタッフを雇って育成する余裕がある国会レベル、県議会レベル、政令指定都市の議会なら、自ら法案・条例案を作ることができますが、政策スタッフを抱えられない市町村議会レベルでは、自ら条例案を作ることは、技術的に不可能です。
行政側に要望を投げかけて、首長の理解を得て、条例案を提出させる、という手法が、最も効率がいいのです。
結論
ということで、ポスター、配布された印刷物だけから候補者の真贋を見定めるのは、とても大変ですよ。
写真やキャッチコピーを見て直感で選ぶのも悪くないでしょう(笑)