昨日のエントリの続き。
臨時福祉給付金の概要
この2014年4月の消費税率が5%→8%上がるに当たり、低所得者に国がお金を上げる、というもの。
今回一回だけのもの。
国がお金を出すのだが、市町村が作業を行う。
給付金と事務費(作業に関わる人件費、オフィス家賃、システム代、郵送料、振込手数料など経費全て)は、国がお金を出す。
参考サイトとして、
厚生労働省:臨時福祉給付金
(このページ内のPDFファイルが詳しい。)
対象は、市町村民税の均等割が非課税の人(課税対象者の扶養親族は除く)。
つまり、単身世帯の場合は、課税所得(年間)が35万円以下の人。普通に働いている人やその家族はもらえない。
生活保護受給者は対象外。
金額は、1万円。
さらに、老齢基礎年金、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給者等は、+5千円。
対象者の数
日本全国で:
上記の厚労省のwebサイトによると、2,400万人。つまり、国民1.28億人のうちの18.8%。
この内、加算分の対象者が、1,200万人。
蕨市で:
対象者:2.0万人。つまり、市民7.2万人のうち、27.8%。
この内、加算分の対象者が、7千人。
(先日の本会議での答弁による)
蕨市って、意外と低所得者が多いんだね。
給付の作業に関わる事務経費
国全体では、420億円。
つまり、
給付総額は3,000億円なので、事業全体に対する経費率は、12.3%。
給付対象者一人当たりの経費額は、@1,750円
では、蕨市ではどうか?
26年度予算案を見てみると、
蕨市の事務経費は、66,327k円。
つまり、
給付総額は235M円なので、事業全体に対する経費率は、22.0%。
給付対象者一人当たりの経費額は、@3,316円
→→
と言うことで、
ちょっと蕨市の経費見積りは、高過ぎるのじゃないかな?
(後で話を聞いてみると、詳細が未だ決まってないし、国から通知も来てない部分もあるので、ざっくり多めに見積もらざるを得ない、という事情があるとのこと。)
過去の同種事例:2009年の定額給付金
ところで、5年前の2009年に、定額給付金というのがあったそうです。
総務省:定額給付金について
景気回復のためという名目で、国内に住んでいる人(外国人を含む)全員に一律12,000円を国が上げたらしい。
(18歳以下と65歳以上は、+8,000円)
みんな、知ってた?
私は知らなかった。
これ、私も対象のはずなんだけど、もらってないな。
あるいは、もらったけど忘れちゃったのかな。
そもそも通知の類を受け取った記憶もないんだけど。
それ以前に、こんな制度があったなんて知らなかった。
2009年といえば、仕事がむちゃ忙しかった時期で、通知をもらっても面倒だから捨てちゃったのかもしれない。
当然、新聞は毎日読んでたけど、興味がないからさっぱり自分のアンテナに引っ掛からなかったみたいだ。
国内に住む人全員に一律12,000円上げるなんて、単なるバラマキじゃん、くだらない!と思ったが、これ、当時の自民党:麻生政権の政策だったらしい。
まあ当時は私はまだ自民党員ではなかったし、このくだらない政策については置いとくとして、
この時かかった経費は、いくらだったのか?
国全体では、
↑上記の総務省のwebサイトによると、決算ベースでは
給付対象者:不明。(世帯数は書いてあるんだけど)
給付総額:1兆9,367億円
事務経費総額:不明。(予算ベースでは825億13M円)
ということで、
事業全体に対する経費率は、不明。しかし、決算ベースの(給付総額+事務経費総額)を、予算ベースの事務経費総額で割ると、4.1%
給付対象者一人当たりの経費額は、不明。
蕨市は、
→2009年(平成21年)度の決算書を見てみると、
給付対象者:69,701人(内、加算対象者は24,328人)
給付総額:1,031,036k円
事務経費総額:35,712k円
つまり、
事業全体に対する経費率は、3.3%。
給付対象者一人当たりの経費額は、@512円
2009年の定額給付金の時は、蕨市は、全国平均と同じくらいあるいは若干安めに給付事務を行うことが出来た。
このたびの臨時福祉給付金の給付事務に関しては、全国平均の2倍近くに見積もっており、これは、いくら余裕を持たせてあるとは言っても、過大過ぎるのではないか。
今回の臨時福祉給付金と2009年定額給付金の給付ワークフローの違い
ここで、2009年定額給付金のときの給付対象者一人当たり経費額(決算ベース)が@512円だったのに、今回の臨時福祉給付金の予算ベースでは@3,316円と見積もっているのはおかしいじゃないか!と思ってしまうところだが、これは、そもそもワークフローが違うからだ。
2009年定額給付金では、全居住者に一律お金を払えばよかったのだが、
今回の臨時福祉給付金では、1次申請者からパーミッションを付与してもらった上で納税情報にアクセスして給付対象がどうかを判定して結果を通知し、再度2次申請をしてもらう、という手続きが必要になるので、比較は出来ない。
それにしても高く見積もり過ぎだろうとはおもうけど。
(図はクリックすると拡大する。
私の理解に基づくものなので、実際は違うかも)
臨時福祉給付金のワークフローにおける、オーバースペックな点
今回の予算案では、
正規スタッフ 1人
臨時スタッフ(嘱託) 2人
派遣スタッフ 5人
を想定しているそうだ。
オフィスは、自治会館の部屋を一定期間借り切ることを想定しているそうだ。
このボリュームが適切なのかどうかは分からない。
郵送物の処理作業は、作業量を平準化することが出来る。
他方で、問合せ対応作業は、ピーク時期に集中する可能性がある。
そもそも、市役所内で人を抱えて作業をやる必要はないので、全ての作業をアウトソーシングすることを検討してもいいかもしれない。
しかし、この給付作業は、「国のお金で蕨市内に雇用を生んでいる」という副次的な効果もある。これはこれで蕨市の利益である。
人工の部分は分からないので、それではシステムの部分を見てみよう。
2009年(平成21年)度決算書によると、2009年定額給付金システム等開発は、
NECに発注していて、4,725k円。
この度の26年度予算案における、「臨時福祉給付金システム開発委託料」は、
7,560k円。
いくら2009年定額給付金のときと比べてワークフロー上の工程数が多く、不確定な部分が多いとはいえ、これは大きく見積もり過ぎではないだろうか。
尚、2009年定額給付金の時も、この度の臨時福祉給付金においても、これは国が全国の市町村に下請けして行う作業なので、全国の市町村で、まったく同じ作業を行っている、ということになる。
当然、全国の市町村で、まったく同じようなシステムを開発している、ということになる。
これって、国全体で見たらかなり無駄だと思う。
正直言って、何でこんな無駄なことになっているのか訳が分からない。
自治体ごとに異なる部分は、基幹系の住民基本台帳システムのデータフォーマットが自治体ごとに異なり、この流し込みに関わる作業の部分だけのはずなのに。
まあ、それはそれとして、
臨時福祉給付金給付の業務向け既存ソリューション
全国の自治体で同じような業務が同時に発生しているので、当然ながら、これを解決する汎用的なソリューションも作り出されているはず。
それらが使えるのであれば、システムをスクラッチで開発する必要はない。
それで、ググって調べてみると、やはり幾つか使えそうなものがヒットした。
セールスフォース・ドットコム:SaaS型臨時福祉給付金ソリューション
ここはSFAの大手ベンダで、自治体向けの納入実績も豊富。2009年定額給付金のときは、甲府市などに納入している。
イセト:バックオフィスサービス
ここのは、郵送物受発送業務、問合せ受付業務も含めて一連の業務丸ごとのアウトソーサー。
行政システム:Probono国政給付ヘルパー 臨時福祉給付金・子育て世帯臨時特例給付金事務支援システム
ここは、パッケージ。
以上書いたのは、それぞれweb上に掲載しているオープン情報のみ。
多分、他にもいろいろあると思う。
個別に電話して聞いてみたが、ざっくりとした相場観としては、5クライアントアクセス(PC端末5台)のライセンスで、住民基本台帳データの流し込み作業を含めて、
パッケージで、200-300万
SaaSの場合で、50-100万
くらいというイメージ。
しかもこの金額は、同時に行われる「子育て世帯臨時特例給付金」のシステムも含まれる。
単発の業務(今後、同じ業務が発生する可能性はほぼゼロ)なので、敢えてパッケージを買う必要は低い。パッケージを使うメリットは、スタンドアロンなネットワーク内で作業が出来るので、セキュリティ面のリスクが小さい、ということくらいだろうか。
SaaS利用ならば、余裕を持たせて見積もるとしても、せいぜい200万てとこで十分じゃないかな?