つくば市に「自転車のまちつくば」を視察。

先日2015年1月15日、茨城県つくば市に、県南都市問題研究会のツアーで、「自転車のまちつくば」都市計画の視察に行って参りました。

この一連の計画は、「市内交通手段をクルマから自転車にシフトさせる」政策です。

私は、筑波大学在学中の4年間(1993~96年度)住んでおり、大学ではチャリ部に所属していたこともあってかなり自転車移動中心の生活をしておりましたが、

つくば市は完全なクルマ社会であり、
(1)自転車で移動するには広過ぎる
(2)歩道・自転車道は、夜は真っ暗で走るのが怖い
という2つの理由から、つくば市において「市内交通手段を車から自転車にシフトさせる」政策というのは、あり得ないし無理だろうと思っておりました。

実際どんなもんなのかを見てきました。
(2)の理由は、私が住んでいた頃から20年経った今日は改善されてるかもしれないですしね。TX(つくばエクスプレス)が開業して、事情も変わったでしょうし。


まずは市役所で担当者から話を伺う。

この一連の政策の目的は、
(1)クルマ交通量を減らすことによる、排ガス削減
(2)市内道路の慢性的渋滞の緩和
(3)自転車に乗ることによる、市民の健康面の向上
とのこと。

なんだかよく分からない。

別にクルマを止めて自転車に乗らなくても、EV化・FCV化の促進、バス等の公共交通手段の充実等、他の手段で解決出来そうですよね。

 


自転車シェアリングの自転車車輌。

どうやって使うのか、よく分からない。
一般的に、自転車シェアリングのシステムというのは、ICカードのようなもので自転車置き場の脇に立っている操作盤で借り入れ操作を行って借りる、という仕組みのものが多いと思うけど、そういうものは何もない。
事前登録ユーザは、勝手に借りて行っていいのか?


自転車シェアリングの看板。

ということで、定量的な効果検証はおろか、そもそもKPIと目標数値の設定もしていないみたいだし、何がなんだかよく分かりませんでした。
よくつくば市に納税している後輩どもが怒らないものだと思いました。(すみません)

 

個人的には、そもそも自転車シェアリングって嫌いです。

自転車という、ママチャリならせいぜい1万ちょいと安価で買えて、極めて趣味的、個人的な移動手段を、何故、他人と共有しなくてはならないのか?
クツとかパンツとかを他人とシェアリングするか、ふつう?
なんか気持ち悪いんですよね。

カーシェアリングは別。
あれは、クルマを個人所有するコストを減らすことが目的のシステムなので、まったく別モノ。


柏市に、交通政策の視察に行きました。

2014年1月23日(木)、埼玉県南都市問題協議会の視察ツアーとして、千葉県柏市に交通政策の視察に行ってきました。

県南都市問題協議会は、蕨市、戸田市、川口市の市議会議員から構成される組織です。

柏市の交通問題概要

新卒で入社したニチメン(当時の社名。今は双日)の独身寮が流山市(最寄り駅は南柏)にあって、2年間住んでいました。寮の裏手の雑木林を抜けるとすぐ柏市という位置にあり、よく雑木林を抜けてカレーを食べに行ったり、バイクでぶらぶらパトロールしたりしておりましたので、柏市についてはかなり土地鑑があります。しかし、つくばエクスプレスが開業し、東大柏の葉キャンパスが開業して、今まで何もなかった場所に人工的に新しい街が出来上がり、当時と比べるとかなり変わった部分もあります。

柏市の交通問題の特徴は、幾つかの問題が、すべて市内で完結している点です。

例えば、蕨市であれば、埼京線のラッシュ時増発・終電の延長などの交通政策を考えるに当たり、蕨市単体で考えて実行することは出来ません。沿線各自治体との調整が必須となります。
柏市も蕨市と同じようにベッドタウンであり、常磐線・千代田線に関わる沿線各自治体と共同で当たらねばならない問題もあるのですが、以下のような大きな交通政策上の課題は、全て市内で完結するものとなっています。

  • 柏駅中心の商業エリアの駐車場へのクルマの誘導・渋滞回避
  • 人口流入が続く柏の葉住人(今後、東大生が大幅に増える)の利便性向上
  • 農村地帯である旧沼南町エリアの公共交通を維持しつつの低コスト化

 

柏市の交通政策の体制

これが大きな特徴で、柏市と東京大学の都市工学系研究室とが全面的に提携して、様々な社会実験が出来る体制が出来上がっています。
これは真似するのは無理。

 

柏市の具体的交通政策・実験

  • 柏駅中心の商業エリアの駐車場へのクルマの誘導・渋滞回避

柏辺りは、まさに蕨市と同じく、中途半端なクルマ社会なので、保有率も高く、週末はクルマで出かける人が多い地域です。柏駅中心には十分な駐車場の量は供給されているものの、高島屋などの一部の商業施設に需要が偏ってしまっており、交通渋滞を招いている点が問題となっています。

対策としては、このエリアにやってくる全てのクルマ(運転手)のスマホアプリからGPS情報を吸い上げ、全駐車場のリアルタイムな空き情報を吸い上げた上で、駐車場を探しているクルマに最適な駐車場に誘導するような仕組みを作りたい、そしてユーザのデモグラフィックデータと購買トランザクションデータを結びつけてビッグデータ分析系ビジネスを作りたいという構想があるようですが、暗礁に乗り上げているとのことです。

まあ難しいでしょう。少なくとも行政が主導でやることではないでしょう。地元の商業界が音頭を取ってやればうまくいく可能性はあります。それも、政治力を持っているだけで集客力も駐車場供給力も小さい小さな商店主ではなく、集客力が大きく大口駐車場サプライヤである高島屋が音頭を取る必要があります。もしくは、駐車場誘導に関しては、タイムズのような既に会員システム・ポイントシステムを保有している駐車場運営管理会社に、この地域の全駐車場のアグリゲーションを委託する、というやり方もアリかと思います。
その際の課題は、
・ユーザにアプリをインストールさせ、会員登録させ、GPS情報を吸い取らせるパーミッションを取るためのインセンティブ設計。おそらくポイント制度を作ることになるのだろうが、もちろんそのためにはポイント付与原資が必要。
・西口の高島屋にやってきたクルマ(ユーザ)を、東口の空いている駐車場に誘導した場合の、双方でのお金のやり取りをどうするかという制度設計。
ビッグデータ分析系ビジネスとかは先走り過ぎです。

  • 人口流入が続く柏の葉住人(今後、東大生が大幅に増える)の利便性向上

人工的に出来た街で、言うならば私が大学時代に住んでいたつくばみたいな街なので、住人はかなり不便な状況だと思います。例えば大学生であれば、イオンなどの郊外型ショッピングモールにちょっとした買い物に出かけたり、バイトに出かけたりするために数kmの移動が必要で、こういう場合にエンジン付きの乗り物が必要となります。この政策問題のターゲットは、大学生と新住民で、これらのユーザがクルマを所有すれば不便は解決するのだが、環境問題を考えると、出来るだけクルマを所有しなくても不便を感じなくて済むようしよう、というのが課題です。

対策として、電気自動車、電動バイクと電動自転車のカーシェアリングをサービス提供しています。

面白いのですが、ビジネス的にはペイしていないとのこと。
乗り捨てを許す仕組みとしているために、運営者が、車輌を溜まってしまった車庫から空いてしまった車庫に移動する管理の手間がかかる上に、車庫を大量に確保しなくてはならないので、賃借料がたくさんかかるとのこと。

欧州では、クルマの路上駐車が違法でない場合があり、そういう場所では20万規模の都市でもカーシェアリングがビジネス的にペイするものの、我が国では無理だろうとのこと。

そういえば、タイムズのカーシェアリングって利益出ているのかな?
IR資料見てみよう。私も何気に会員登録しているのだけど、一度も使ったことありません。放送大学の学籍を持っているゆえに学生会員なので、月会費がタダなんですよねw


スマートの電気自動車


電動バイク


駐車場に設置された、管理ボックス。
乗るときはここでカードをかざしてボックスを開け、鍵を取り出す。
返却するときも同じ。

 

  • 農村地帯である旧沼南町エリアの公共交通を維持しつつの低コスト化

民間のバスが撤退し、市営のコミュニティバスを運営していたものの、それもコストがかかりすぎて大変なので、オンデマンドタクシーのシステムを作りました。

市営コミュニティバスというのは蕨市でも運営していますが、民間バス事業者がビジネス的にペイしないにも関わらず、市民の利便性を増すために行政が敢えて経営しているバス事業なので、当然赤字となっています。(逆に、そのバス路線が黒字になるのであれば、行政が直営するのは民業圧迫となりますので、行政は撤退して民間に任せるべきです。)

旧沼南町エリアのコミュニティバスは、乗客一人当たり1,907円のコスト(=行政からの赤字補填)がかかっていたところ、オンデマンドタクシーにしたことで、893円に半減することが出来たとのことです。これは素晴らしい。