静岡県の茶業研究センター、茶業機械メーカを視察

先日、令和6年(2024年)8月5日(月)、埼玉県議会 自民党議員団の当選一期生有志4名にて、静岡県の

  • 静岡県 農業・林業研究所 茶業研究センター
  • カワサキ機工(株)様(茶業に特化した機械メーカ)

を視察してまいりました。

また、埼玉県農林部の方々にもご同行いただきました。

 

 

埼玉県の茶業

蕨市では茶の生産はまったく行われていませんので、気が付きにくいのですが、実は、埼玉県は茶の名産地です。

狭山茶ですね。

産地は、入間市・狭山市・鶴ヶ島市・所沢市です。
狭山茶というブランド名ですが、実は、これらの市の中で生産高が最も大きいのは、入間市です。

 

私の妻は所沢出身ですが、小学校の社会科見学で茶園に行ったことがあり、所沢市民にとっては茶業はかなり身近な存在だそうです。

 

茶業の振興は、県議会でもたびたび取り上げられるテーマです。
上記の4市から選出された議員が、入れ代わり立ち代わり、ほぼ毎定例会ごとに一般質問で取り上げるようなイメージです。

 

ということで、茶業振興は、蕨市民としてはほぼ無関係なテーマですが、埼玉県議会議員としては理解しておきたいテーマであります。

 

 

静岡の茶畑の様子

東海道新幹線で掛川駅で降り、レンタカーで菊川へ。
菊川に茶業研究センターもカワサキ機工(株)様の本社もあります。

このエリアが茶の産地です。

 

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見渡す限り広大な茶畑が広がっています。

ポールの上部に取り付けられている羽根は、霜害防止ファンです。
埼玉県の狭山茶の産地でもよく見かけるものです。

静岡県は温暖な気候ですが、それでも霜害対策は必要なのですね。

 

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茶畑の上に太陽光発電パネルが設置されているという、珍しい畑がありました。

 

また、茶畑の木が伸び茂るまま、手入れがなされていない、放棄茶畑もありました。

 

 

茶業に特化した機械メーカ:カワサキ機工(株)様

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茶園管理アプリケーション、製茶機械などを製造しています。

茶業全体の縮小に伴い、茶業機械メーカは、今は2社しか残っていないそうです。

全国に顧客がおり、コンサル的な役割も求められるためか、業界事情・情報が集まっているようです。広く深く解説してもらいました。
この話がかなり面白く、茶業界全体の課題や、狭山茶の強み/弱みを俯瞰する視点を得ることができました。

 

 

リーフ茶(茶葉の状態での商品)からTB茶(ティーバッグ)、ドリンク茶(ペットボトル類)への移行の流れは留まるところを知らず、茶業界は衰退し続けています。

リーフ茶よりドリンク茶は、g単価が圧倒的に低いのです。

全体の消費量は横這いだとしても、利益率が下がってきている、ということなのだと推測します。

海外におけるmatchaブームは、一時のブームではなく、もはや定着した傾向です。
しかしながら、matcha輸出に成功しているのは鹿児島などの一部産地のみのようです。狭山茶においては、輸出が出来る卸・商社がいないのが悩みです。

 

 

狭山茶の事業者の特徴は、自園・自製・自販という垂直統合です。
これは他の産地にはありません。

これは従来は狭山茶のアドバンテージであると語られていたのですが、
逆に、

・輸出や付加価値の創造に力を入れる卸・商社が育たなかった。

・業界団体の力が弱い。

というディスアドバンテージも生じています。

 

海外のデパートや展示場などで「JAPAN食品フェア」のような期間限定のイベントに出店すると、だいたい日本茶は大人気で完売するそうですが、その後の継続的な取引に繋がることは、まず無いとのことでした。

継続的な輸出取引を行うためには、卸・商社をかませないと不可能です。あるいは、業界団体が力を入れてサポートするというやり方もあり得ます。

有力な卸・商社がおらず、業界団体の力が弱い狭山茶にとっては、分が悪いところです。

 

 

茶業者が今後、生き残っていくためには、

・高級路線、付加価値の創造

・ドリンク茶メーカの下請けとして細々生きる

の2択です。

 

 

カワサキ機工の方曰く、今後付加しうる新たな付加価値の方向性は、

・香り

・有機(特にEUへの輸出の場合は重要な要素)

であろう、との見解でした。

 

但し、同行した某氏曰く、有機栽培はコスト高な上に、味も落ちる。それでも有機を好むという嗜好もあるだろうが、消費者のすべてが有機を選好するとは思えない、とのことでした。

 

20240805 静岡県茶業関連視察

 

 

静岡県茶業研究センター

都道府県として茶業専門の研究施設を持っているところは少なく、埼玉県、静岡県、京都府、三重県くらいです。それぞれ茶の名産地ですね。

 

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静岡県の茶業研究センターは、建物老朽化のため、新築中でした。

まだ工事中のため、中には入れませんでした。

 

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時間貸し研究施設を見学しました。

 

上記「カワサキ機工で聞いた話」で触れたように、茶業者にとおっては、付加価値の創造が、今後の生き残りのために死活的な課題です。

そのため、静岡県茶業研究所は、自ら付加価値の創造を目指す事業者向けに、研究施設を時間貸ししています。

 

 

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時間貸し研究施設の機材を用いて作ったサンプル製品。

茶葉を圧縮して作ったオイル、茶のアロマスプレーなど。

 

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最後に記念撮影をしました。

 

視察を受け入れてくださった、カワサキ機工(株)様、静岡県茶業研究センター様、ありがとうございました。


埼玉県茶業研究所

蕨市にはもちろん茶畑はまったく無いのですが、実は、お茶は、埼玉県の名産なのです。

入間市、狭山市、所沢市辺りに茶畑が集積しており、狭山茶ブランドは広く確立しています。

品種改良、栽培・製茶の技術開発・普及指導のために、埼玉県では、茶業研究所があります。

しかも、そろそろ開業100年を迎えます。そんなに昔から、埼玉県ではお茶の研究を行っていたんですね。

 

 

こんな研究機関があるなんて知りませんでした。

このたび、埼玉県議会の狭山茶振興議員連盟にて、茶業研究所の見学に行って参りました。

 

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茶業研究所。

圏央道入間ICの近く。
蕨からは、外環 – 関越 – 圏央道を乗り継いで、クルマで一時間強くらいです。
この辺りは、一面が茶畑です。

 

なお、茶の木は、苗木を植えてから成長して、茶葉が収穫できるようになるまでに、8年かかるとのこと。

上記写真の中で、手前の畝が、1年目です。

成長した後は、毎年2回収穫できます。
4~50年経って、徐々に収量が減ってきたら植え替えます。

 

 

狭山茶の歴史

鎌倉時代
禅宗の僧 栄西によって我が国に伝えられました。

江戸時代
この地域で広く生産されていたわけではなく、寺の敷地内で、薬のような用途で作られていた程度だったとのことです。

明治時代
米国に輸出するための農業産品として、この地域で生産が始まったそうです。
横浜港から出荷して、一時は輸出品として隆盛を極めたのですが、間もなく、米国への輸出は廃れてしまいました。
理由は不明ですが、米国人の嗜好の変化が背景にあるのかな?
今日においては、米国人が日本茶を好んで飲むようなイメージはありませんが、明治時代はよく飲まれたようですね。

大正時代以降
我が国の庶民が日常的にお茶を口にするようになったのは、大正時代以降のようですね。
この頃から、狭山茶は内需向けに生産するようになりました。


日本人の日本茶消費量は減っている。

全国茶生産団体連合会のこちらのwebページを見ると、平成21年(2009年)ころを境に、減少トレンドにあります。
紅茶の消費量は横ばいトレンドですが、烏龍茶の消費量も同じように平成21年ころから減少トレンドです。
平成21年というと、リーマンショックがあった年ですが、この頃にいったい何があったのでしょうか?

 

 

入間、狭山、所沢周辺に茶業が集積した理由

この地域の土壌が、水はけが良さ過ぎて、稲作に向いていなかったため。

 

 

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畝ごとに異なる品種が植えられています。

昔の茶畑の畝は、上辺が緩やかなカーブを描く「かまぼこ型」でした。
今は、コンバインのような、人が乗り込むタイプの収穫マシンで収穫作業を行うのに最適化するため、上辺は直線となっていることが多いようです。

 

 

茶の品種改良

地球環境の変化によって温暖化が進んでいるわけですが、気候変化に対応した品種を開発することも、この茶業研究所のミッションの一つです。

お茶は嗜好品なので、時代によって求められる品種は変わってくるが、普遍的な要素は、

・たくさん収穫できること。

・寒さに強いこと。

 

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もしゃもしゃに枝が生えているのが、品種改良のための母樹。

この木から種子をとって、品種改良の研究を行います。

種子採取の段階から、品種登録まで、一つの品種を開発するのに、35年以上かかるそうです。

 

こんなに長い期間だと、一人の研究者が、自らのキャリアの中で最初から最後まで手掛けることは出来ません。

昔の先輩研究者が採取してくれた種子を引き継いで研究し、また、今日採取した種子は、これから入所してくる未来の研究者に引き継いでいく、のだそうです。

ロマンティックですね。

 

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説明を聞いているところ。

 

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研究所施設ロビーの展示物。

かなり古い建物です。

 

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ほうじ茶の品評をしているところ。

お茶は、香り、味だけではなく、見た目、色も重要な要素です。

自然光を取り入れてお茶の品評ができるようになっています。

 

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明治時代に米国向けに輸出して頃のパッケージ。

 

 

 

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ほうじ茶。