市内に空き家が増えている。

蕨市内に空き家が増えた

さて、先日、市議会議員選挙があって、私が地盤とする地域である錦町、北町五丁目をぐるぐるとそれこそドブ板を一枚一枚踏むように歩き回ったわけだが、4年前の選挙の時と比べると、明らかに空き家が増えていて驚く。

蕨市では、2013年4月に空き家条例を作った。
防災上、防犯上の理由から、ボロ空き家を市が強制的に取り壊したりできるようになった。
蕨市webサイト : 蕨市老朽空き家等の安全管理に関する条例について

老朽空き家はこれはこれで問題なのだが、今回の市議選の時に気づいたのは、空き家条例の対象ではない、キレイな空き家が増えている、ということ。
見た目は小綺麗に掃除されていて、庭は草刈りもなされていて、ポストに突っ込まれたチラシもそれほど多くないけど、昼でも雨戸が締まり、生活の匂いがしない空き家は、一目見ただけですぐに判別することができる。

この種のキレイな空き家は、だいたいが、老夫婦がともにお亡くなりになり、相続人である子供世代は独立して既に家やマンションを買って住んでいて、相続したものの、子供の頃に住んでいた家だから思い出があるし、亡くなった両親の家財道具一式が未整理のまま置いてあるし・・・ということで、数ヶ月に一度掃除と換気にやってくるものの、事実上放置している、というパターンが多いのではないかと思う。

 

空き家の問題点

今にも崩れ落ちそうな老朽空き家は、防災面、防犯面で大いに問題があるが、キレイな空き家は、取り立てて大きな問題があるわけでもない。

しかし、資源の有効活用という点から言えば、単純にもったいない。
物件を相続した所有者にとっては、売るなり貸すなりすれば収益を得られる機会を損失している。
自治体にとっては、その空き家に人が住むことによって得られる税収獲得機会を損失している。

 

キレイな空き家対策の定番は、空き家バンク

この種の空き家対策として、全国の自治体がよくやっている定番の政策は空き家バンクというもの。
自治体のwebサイト上に物件情報を掲載して、売買・賃貸のサポートをしている。おおむね、情報のマッチングをするのみで、契約の仲介まではやらないケースが多い。
空き家バンクへの登録に対して大家さんに奨励金を出したり、賃借人に対して移住奨励金を出したりするケースもある。

ググってみたら、全国いろいろな自治体の空き家バンク制度がヒットするが、だいたいが、過疎の地である。

民間の不動産マーケットが有効に機能しているならば、そもそも空き家マッチングを自治体がやるのは民業圧迫とも言えるわけで、敢えて自治体自身がマッチングをやるのは、民間の不動産マーケットが小さいか不完全な地域だからだろうと思う。

ググってヒットした自治体の中で、唯一例外だったのが横須賀市で、
横須賀市webサイト : 谷戸モデル地区 空き家バンク
地図で見たら横須賀駅の近くだし、そもそも横須賀市といったら、我が国有数の軍都であり、通勤圏内の人気の街でもあるし、その横須賀のこんな街中で何で空き家バンクなんてやってんの?と調べたら、

この谷戸地区というのは、リアス式海岸の山に位置するエリアで、古い時期に住宅地として開拓され、階段でしかアクセスできないような古い物件がたくさんあり、高齢化が進み、空き家も増えて地域コミュニティが崩壊しつつあり、物件価格が安いので不動産屋も扱いたがらず・・・ということで、限界集落化していたものらしい。

横須賀の山の中なんて、見晴らし良さそうだし、気持ちよさそうなトレイルも三浦半島はたくさんあるし、移住してみたいわ!という気もするが、けっこう大学生に人気らしい。
地球のココロ : 横須賀で「空き家バンク」の物件を訪ねた
NHK : 大学生に“空き家”貸します
東洋経済 : 横須賀市で限界集落が生まれた理由

まあ、少なくとも、空き家バンク制度は、蕨市のような、不動産マーケットが有効に機能しているような街がやる制度ではないですな。

(続きそうですが、続きません)


夕張市のコンパクトシティ政策

先日書いたエントリで、たまたま夕張市を取り上げたので、ちょっと気になって息抜きに夕張市の再建に関する情報をつらつら見ていたのだが、本物の「コンパクトシティ政策」を発見した。

夕張市は、バイクツーで何度か通り抜けたことがある。
去年の夏に走った時も、フェリーで苫小牧に夕方着いてから、芦別まで一気に移動したかったので、かっ飛ばして夕張を通り抜けた。

2014年8月、夕張市内の大きな集落の中にある、清水沢駅。
あまりにも手指が冷たくてかじかんでたまらないので、しばし休憩。
19時頃、無人駅の駅前にはタクシーが1台ぽつんと客待ちしていた。

駅構内には「頑張れ夕張」の展示物。

闇夜の国道452号は、もう本当に真っ暗で(国道なので、夕張市の財政破綻とは無関係)、熊が出そうで怖いし(たぶん、本当に出る)、日没後は8月なのに歯の根がガタガタ鳴るくらい寒いし、夜遅く、ようやく芦別のキャンプ場に張った時には、バイクのライトとメットのシールドは虫の死骸だらけだった。


夕張市まちづくりマスタープラン平成24年3月(c)夕張市より引用

夕張市webサイト : 夕張市マスタープラン

 

何というか、パッと見た第一印象としては、凄惨な感じで、「小さな集落は潰さないと生き残れない」という悲壮な覚悟を感じ取って、もうなんか「頑張れ!」というような感想を持った。

夕張市の「コンパクトシティ政策」は、前向きな選択ではなく、止むに止まれず選択せざるを得ない、最後の手段のようなものなのではないかと思う。

 

財政破綻した夕張市は、小さな集落を廃止して、幾つかの主要な集落への住民の集団移転を目指す、としている。
行政にとって、集落を廃止するということは、そこにもう人が住まないことを前提として、都市インフラの維持を止める、ということ。水道・ガス・電気はストップし、道路は幹線道路を除いて放置する。街灯は撤去。ゴミ収集はしない。除雪もしない。公民館などの公共施設も廃止。

このような、周辺部を切り捨てて、中心部にリソースを集中するのが、本物のコンパクトシティ政策というやつで、我が蕨市が、何となくゴロが良いからというだけの理由で、本来の用語とは異なる意味で「コンパクトシティ」蕨などと名乗っているのは、とても違和感がある。「コンパクトシティ」という言葉には、夕張市の小集落の将来のような悲惨なイメージしか感じられない。

 

更についでに言うと、コンパクトシティ政策というと、富山市がなんとなく成功事例として取り上げられる事が多いが、あれは現時点では失敗例だと思う。

富山市自身は、市内周辺部へのイオンモールなどの郊外モールの開設を許していないみたいだが、周囲の市町村に郊外モールがオープンした結果、若者~働く世代がクルマで郊外モールに買い物に行って過ごすという生活パターンを変え、街のスプロール化の流れを止めるには至らず、グレーター富山(市)圏としてのコンパクトシティ作りには失敗している。

そもそもコンパクトシティ政策というものは、夕張市のような、一つの市町村が単独の生活圏を構成している場合にしか、成立し得ない政策であることが分かる。

 

そう言えば、先日会ったニチメン時代の同期が今はJICAにいて、アフリカに富山市のコンパクトシティモデルを輸出する仕事(?)をしているらしい。飲みの場の話で、詳しく聞けなかったけど、おそらく、富山市は、国や県とパイプを作って、うまく補助金やらを引っ張ってくるのが上手なのだろう。

2012年2月、富山市中心部にて。