広島市豪雨災害伝承館を訪問

2つ前のエントリ「平成26年広島市豪雨土砂災害現場を9年ぶりに訪問」で述べたように、広島市豪雨土砂災害の現場を9年ぶりに訪問した後、

 

広島市豪雨災害伝承館へ。

展示物は、テキスト+写真のパネル、動画がメインで、これらの情報のほとんどは、ネットで調べれば見ることが出来る。

唯一面白かったのは、災害現場の写真集の冊子で、撮影した場所の地図や解説も付け加えられていた。これは見ごたえがあった。

 

 

この施設は、ちょうどこの訪問日に開設されたばかりで、記念講演会があるので、これを聴講するのも、今回の訪問の目的の一つだった。

広島大学の防災・減災研究センター長の海堀正博特任教授
広島地方気象台の中村浩二台長

 

幾つか面白い話を聞けたので、以下にメモ。

 

  • 防災対策のパラドクス

津波に備えた防潮堤、川の氾濫に備えた堤防、土砂崩れに備えた砂防ダムといったように、防災対策を強化すればするほど、避難の必要がなくなったと思われ、居住エリアが広がり、新たな人家が建てられてしまう。
防災施設は、それぞれ一定の条件の下に造られており、限界がある。ある程度までしか守れない。
土砂災害防止のために、自然的な素因を変えることは不可能。社会的な素因をいかにして減少させるか。


所見:だからこそ、レッドゾーンのみならずイエローゾーンについても、新規居住を制限した上で、既存の住居の居住者に対しても政策的な移転誘導が必要なのではあるまいか。

 

  • 避難指示を出すタイミングの判断は困難

平成26年広島豪雨災害においては、避難勧告(2021年にこの用語は廃止され、避難指示に一本化されている)が遅かったために犠牲者が多くなったと言われていた。
しかしながら、豪雨の夜中に避難することで、別種の被害が生じた可能性もある。
そして、避難指示が早過ぎても、空振りの印象を残しがちになり、オオカミ少年効果を生んでしまう。


所見:行政に対して、完璧な避難指示を求めるのは無理。各家庭毎に、自分たちでリスクを背負った上で判断するしかない。行政の避難指示は、一つの判断材料程度と考えるべき。

 

  • 住民の災害に対する危機感の向上は難しい

今までの経験から、
ハザードマップの公開だけでは、だめだった。
過去の災害を示す石碑も、だめだった。


所見:まあその通りなのですが、頑張るしか無いですね。地方政治家として肝に銘じます。

 

  • 線状降水帯は現状では予測困難

発生メカニズムは未解明。従って、予報モデルが確立していない。
我が国においては観測体制も不十分。
「前線が居座っている」という表現が用いられことが多いが、風は常に吹いており、積乱雲は移動している。積乱雲は、誕生→発達→縮小→消滅のサイクルを繰り返している。たまたま同一地域において、発達した状態の積乱雲が線状に並んで居座っているように見える状態が、線状降水帯。


所見:スーパーコンピュータをたくさん買えばいいんじゃね?と思っていたのですが、モデルが確立しておらず、観測体制が不十分ということであれば、そんな単純ではないのですね。

 

  • 広島地方気象台は、県内市町村の首長とホットラインを築いている

台長が、年に1回ずつ、すべての首長を訪問している。台長と首長がトップレベルで直接電話で話せる人的関係を築き上げている。


所見:へー、これはすごいですね。広島地方気象台だけの体制なのか、この台長が個人的に力を入れていることなのかは分かりませんが、埼玉県でもやって欲しいですね。
地方気象台というのは、概ね都道府県に一つずつあり、埼玉県の場合は、熊谷市に熊谷地方気象台があります。
熊谷地方気象台の台長と、蕨市長が直接会ったり電話で話したりしているのかは、存じませんが、そのような話は聞いたことはないですね。この種の他の行政機関との連携については、市長が日共だとほぼ不可能に近いくらい極めて困難であり、日共党員の市長を抱える蕨市における大いなるディスアドバンテージです。共産主義者は、既存の秩序を破壊して社会を転覆し革命を起こすことを第一義に考えていますので、他の行政機関からは、連携・コミュニケーションは根本的に不可能だと見なされています。

 

 

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講演会の様子。

 

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講演会の後は、地元の梅林小学校の生徒によって、自分たちが考えたの防災対策の発表会が行われました。

 

 

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県営緑ヶ丘住宅の片隅に立つ慰霊碑。