令和7年(2025年)1月28日 10時ころ発生した、八潮市内における、下水道管路崩落事故により、依然として1名のトラックドライバの方が行方不明のままです。
現場では、懸命の救出作業が続いております。
一刻も早く救出されることをお祈り申し上げます。
下水道汚水の、河川への緊急放流の状況
先のエントリにて述べた通り、1月29日 23時より、人命救助のため、道路陥没現場の下水流量を減らすために、現場の上流部にて、下水道汚水の河川への緊急放流を実施しております。
放流は今でも続いております。
1月31日17時 第6回埼玉県危機対策会議の資料 (c)埼玉県
本日 2月1日、現地を視察してまいりました。
希釈水放流地点
上記地図の通り、下水道放流地点の直接の上流部ではありません。
下水道放流地点は、新方川(にいがたがわ)の支流である、名もなき小さな水路です。
希釈水放流地点は、新方川の本流の上流部となります。
大型のロジスティクスセンタが立ち並ぶ産業団地の中に流れる小さな新方川。
この希釈水放流のオペレーションは、国交省 関東地方整備局が行っております。
現場では、関東地方整備局の委託を受けた企業のエンジニアが24時間体制で有人監視を行っている他、仮設の監視カメラが設置されていました。
また、このオペレーションは、今後、県または市に移管される見込み、とのことです。
写真ではわかりにくいのですが、水中からぶくぶくと水が湧き出しています。
産業団地の中にある場所ですが、この水は工業用水ではなく、上水とのことです。
橋の上に配置されたポリタンクは何らかの薬液だそうで、ぽたぽたと垂れていました。
春日部中継ポンプ場の下水道汚水放流地点
公益財団法人 埼玉県下水道公社の中川水循環センターの上流部に位置する施設です。
埼玉県内には、複数の水循環センターがあり、ここに、管轄する市町村からの公共下水道が集められ、きれいにした上で、河川に放出しています。
ポンプ場は、名前の通り、あくまでもポンプが設置されているのみで、下水道をきれいに処理を行う機能はありません。
水は勾配に従って上から下に流れていきます。地形の都合で、下水を高い位置に上げる必要がある場合、中継ポンプ場が設置されます。
写真の左側は道路。右側が、春日部中継ポンプ場。
この水路は、名もなき小さなものです。
下流において、新方川へと合流し、さらに中川へと注ぎ込まれていきます。
白いホースから下水道汚水が水路に放出されています。
ホースの先の水中には、塩素タブレットが沈められており、応急的な措置としての消毒が行われています。
やはりちょっと臭いますね。
しかし、鼻をつまむほど臭い、というわけではありません。
夏の淀んだヘドロだらけの笹目川の方が、よっぽど臭いですね。
下水道汚水と意う言葉からイメージする、排泄物やゴミがプカプカ浮かんでいる、ということはまったくありません。
下水道汚水タンクにホースを差し込んで、ポンプで汲み上げ、河川に放出しているわけですが、汚水タンクの水中の中ほどにホースの先端が位置するように設定しているそうです。
下水道汚水の中の不純物は、水面に浮かんだり、沈殿したりしているため、これらが汲み上げられることは、ほぼ無いとのことです。
ポンプ場の中では、責任者の方に案内をしていただきましたが、写真の公開は控えます。
施設内では、様々な機関の車両が停まっており、車両の運転席で仮眠しているスタッフの姿も見られました。
関係者様のご尽力に感謝申し上げます。
下水道汚水放出水路と、新方川の合流地点
写真の左奥から右手前へと流れているのが、新方川の本流。
上で述べた希釈水は、この本流を流れてきています。
写真中央部の白いコンクリで固められた流入口が、下水道汚水を放出した水路からの流れです。
この写真の地点で、下水道汚水放出水路と、新方川が合流します。
もうここでは、臭くはありませんね。
流れは淀んでおり、汚いのですが、元から汚い水だったのではないかと思います。
新方川右岸(写真の左側)において、工事が行われていますが、これは、中川・綾瀬川緊急流域治水プロジェクトにおける何らかの工事かと思います。
この地域は水害が多く、2年前の6月にも大規模な床下・床上浸水が発災しました。
水質検査地点
東武伊勢崎線 せんげん台駅近くの水質検査地点。
ここで行った水質検査は、あくまでも簡易測定キットによるものです。
橋の架替工事が行われています。
冒頭の資料によると、この地点におけるBOD(生物化学的酸素要求量)は、下水道汚水放流前で10,放流後は、ピーク時で50まで上がり、「わずかに下水臭、魚2匹浮いている」というタイミングもあったようです。
(数値は、低いほど良く、高いほど悪いことを示します。)
尚、参考までに、令和5年度 蕨市環境状況報告書によると、
緑川 1.1
見沼代用水 2.0
です。
尚、「日本で最も汚い川」と呼ばれたのは、奈良県の大和川ですが、1970年の最悪の頃で、BOD31.6でした。今日では、2.5に改善されています。
ということで、maxでBOD50というのは、結構酷い数字です。
今後の見通し
本日夕刻、埼玉県医師会の新年会での大野知事の発言によると、下水道陥没現場の復旧工事は、「1週間程度でできそうな見通しが見えてきた」とのことです。まだ明確に見通しが立っているわけでもなく、そもそも、依然として行方不明者の救出活動は続いており、復旧フェーズには至っていませんが、何ヶ月もかかるようなイメージでは無さそうです。
一刻も早く救出できるよう祈ります。
関係諸機関の引き続きのご尽力をお願い申し上げます。