本日、令和7年(2025年)6月21日、川口市内の荒川河川敷 三領運動場において、荒川左岸水害予防組合の水防演習が行われました。
荒川左岸水害予防組合
蕨市、戸田市、川口市の3市によって組成されています。
それぞれの消防本部、消防団、市長部局(土木系の部署など)が参加しています。
水害には、外水氾濫(大きな河川が氾濫すること)と内水氾濫(街の中が冠水・浸水する都市型水害)の2種類がありますが、この組合は、荒川の氾濫に備えたものです。
水防演習
埼玉県防災航空隊や、国土交通省 関東地方整備局 荒川下流河川事務所なども参加しての、大規模な公開練習です。
3市持ち回りで開催しており、今年は川口市の当番回でした。
伝統的な3つの水防工法
本演習の中心となったのは、江戸時代から伝承され、今なお実効性の高い三種の水防工法の実地訓練です。科学的で、最小限のコストで最大限の効果を狙った工法です。
今回は炎天下での演習となりましたが、実際の現場では、大雨が降る中で行われることになるでしょう。横殴りの風が吹いていたり、夜間の場合もあり得ます。
どの工法も、基本的には文字通りの人海戦術であり、3市の消防本部職員、消防団員によって行われました。
土のうを作る
土のう作りが、全ての水防工法の基本です。
土のう袋に土砂を入れて、袋の口を縛ります。
(1)越水防止工法
川の水が市街地へ流れ込むのを防ぎます。
浸水被害の“第一防衛線”であり、堤防の機能を補完するものです。
こちらは、せき板工。
板に沿って土のうを積んでいきます。
これが完成形。積んだ土のうの上から土をふりかけて、隙間を塞いでいます。
こちらは、シート張り式の改良積み土のう工。
ただ土のうを積み上げるだけではなく、シートを張った上から積み上げることによって、隙間が生じるのを防ぐものです。
(2)漏水防止工法
堤防は、土を固めて作ってあります。土なので、中に水が染み込みます。
堤防の中に水が浸み込んで空洞化・崩壊を招くのを防がなくてはなりません。
チョロチョロと堤防の横腹から水が漏れ出てきた時に、このような漏水防止工法を用いて、水圧を逃がし、土砂が流出するのを防ぎます。
堤防が決壊するまでの時間稼ぎをするものです。
こちらは釜段工の、作業途中の様子。
ただ円形に積み上げているわけではなく、高度な技術と経験を要するものです。積み上げの指示と作業は、川口市消防局の消防士が行っていました。
こちらは、月の輪工の完成形。
ところで、「そもそも、堤防が土で出来ているから漏水が起きるのでは? 堤防をコンクリートでがちがちに固めてしまえば漏水しないんじゃね?」と思う方もいるかもしれません。
しかしながら、コンクリート製堤防は、
・お金がかかる。
・コンクリートで固めたところで、水の力はとても強く、漏水は完全には防げない。
・環境や生態系に悪影響を及ぼす。
・地震や地盤沈下・隆起に対して、剛構造のコンクリートは弱く、柔構造の土砂の方が対応しやすい。
という理由から、堤防をコンクリートで固めることは好ましくありません。
(3)洗掘防止工法
越水した水が堤防を削り取る「洗掘(せんくつ)」を防止するものです。
堤防は土で出来ているので、大きな水の流れに晒されると、やがて表面が削り取られてしまい、やがて決壊に至ってしまいます。
これは、シート張り工の完成形。
ブルーシートを貼り、竹の棒、ロープ、土のうを上に配置してあります。最小限の道具と労力で、最大限の効果を狙った工法だと思います。
このような3種類の伝統的な水防工法に加えて、
国土交通省 関東地方整備局の排水ポンプ車、などを用いて、堤防を守ります。
水難救助訓練
あわせて、川口市消防本部と埼玉県防災航空隊によって、溺れた人を助ける、水難救助訓練も行われました。
埼玉県防災航空隊のヘリコプターが下降してきました。
溺れた人を、懸垂上昇して救出しました。
溺れた人。
「助けてー!」
実際には、ウェットスーツを着込んだ、よく日焼けした屈強な消防士さんです。
本当に溺れてしまった時には、手を振ると身体が沈み込んでしまいます。既に発見されているならば、それ以上は合図をする必要はありませんので、救助隊を信じてください。じっと動かずに体力を温存するのが良いでしょう。とにかく、落ち着いて、冷静に行動しましょう。
川口市消防局が運用するジェットスキーによって救出しました。
演習を通じ、技術の継承、防災意識の啓発、組織間連携の強化と、複合的な成果が得られました。
現場で活動されたすべての関係者の皆様に、深く敬意と感謝を申し上げます。






























































