埼玉県議会 文教委員会にて、石川県加賀市へ、新しく意欲的な学校教育ビジョンの視察に行きました。
加賀市立東和中学校を訪れ、授業を見学し、校長先生と教育委員会事務局の方々から、話を聞きました。
学校スローガンの「千紫万紅」は、せんしばんこう と読みます。
色とりどりの花が咲き乱れる様子を指し、転じて、様々な個性や才能が並び立つ様子を表しているようです。
田園の中を涼し気な風が吹き抜け、気持ちのいい学習環境でした。
校歌の額。
尚、余談ですが、学校のすぐ近くに丸八製茶場の本社工場があります。昔、金沢駅のお土産屋でここの加賀棒茶を買って飲んで以来、とても気に入っていて、ネット通販で買って飲み続けています。
加賀市を巡る環境と、市民の間の危機感
加賀市といえば、山中温泉、山代温泉、片山津温泉の3つの温泉が有名で、観光都市として知られています。
3つの温泉の年間来訪者数は、ピーク時の400万人から減少し続け、今では1/4の100万人になっているそうです。
どこの有名温泉地も同じ事情を抱えているのですが、バブル期に宴会需要に支えられて積極投資を行い経営規模を拡大したものの、その後の「団体・宴会旅行 → 様々な目的の個人旅行へ」という需要の変化に乗り切れずに苦戦しているようです。宿泊業は装置産業なので、フレキシブルな方針転換は困難です。大規模投資にあたっては、十年、二十年先の未来を予測する視点が求められます。
人口減少も相まって、市全体に将来への不安、危機感が広がっています。
加賀市は、新しいことに挑戦する政治風土がある?
加賀市といえば、2015年2月、ふるさと納税の返礼品として、DMMポイント50%を打ち出して、多額のふるさと納税を集めた、ということがありました。
当時は、その自治体と無関係の商品でも返礼品に設定することができたり、返戻率も今のように30%と定められていなかったり、ルールが緩かった時代でした。
DMMポイントには換金性がありますし、DMMポイントで引き換えられる商品の中にはアダルトコンテンツも含まれるために(と言うよりも、今でこそDMMは多角化しましたが、2015年当時はメイン事業はアダルトコンテンツ配信・販売だったはずです)、批判を浴びました。
その後、総務省に怒られて、1ヶ月後には取り止めています。
加賀市は、チャレンジングな政治風土なのかもしれませんね。
尚、現市長は2013年10月から任期を務めており、DMMポイントキャンペーンも現市長の意思決定によるものです。
為念、一ヶ月で取り止めた試みなのではありますが、これは失敗事案ではありません。短期間で多額のふるさと納税を集め、全国的に話題となったということは、私は成功と評価します。
加賀市の学校教育ビジョン
注目ポイントは、
- STEAM教育による「課題発見→探究→解決」までの思考力・応用力の育成
- 習熟度別授業による、一人ひとりの生徒への学びの個別最適化
STEAM教育も、学びの個別最適かも、試行錯誤する段階でもなく、既にある程度の方法論は確立しています。
つまり、「やるか、やらないか」ということです。
「良さそうなことは、迷わず、悩まず、やればいいじゃないか!」と思うかも知れませんが、これが難しいんですよ。
新しい教育手法には、不安や心配の声が必ず出てきます。
学校の授業時間は有限であるため、何か新しいことをやるためには、既存の何かを削らなくてはなりません。
平均的に成果が上がったとしても、個別に見ると、向き不向きがあり、「今までのやり方の方が良かった」という生徒も出てくるかも知れません。
加賀市の学校教育ビジョンの成功要因
おそらく反対意見も出たであろう中で、加賀市がいかにして新しい学校教育ビジョンを推進していったかと言うと、私が見たところ、その要因は、
- 市民にある「街の将来への強い危機感」
- 市長の確固たるリーダーシップと改革への決意
- 若くて優秀な教育委員会事務局スタッフによる、学校現場を力強く支える体制
この3点であろうかと思います。
市民の危機感については、前述の通りです。
市長の改革意識についても、前述の通り。
実は、2015年7月に、蕨市議会 保守系会派:新生会(当時の自民党系会派の名称)にて、加賀市の議会改革に視察に来ているんですよ。その当時、現市長は、1期目で、2013年10月に就任して、まだ2年が経過していませんでした。その前の市長と戦って当選しており、2015年7月当時は、かなり市政は混乱していたようです。今だから書きますが、当時は、市職員が市長に対する敵意を隠さないくらいの状況でした。
今は、現市長の2期目、3期目は、他に立候補者はなく、無投票当選だったようです。3期目となり、もう政権は安定しているようですね。
「若くて優秀な教育委員会事務局スタッフによる、学校現場を力強く支える体制」については、視察を通じて私が受けた印象です。
成果はどうなのか?
気になるのは、生徒の成績が上がったのか?ということです。
明確な成績向上は見られない、とのことでした。
そもそも、成績向上をKPIとして設定すべきなのかどうか?
「何をもって教育の成果とするか?」という問いが、あらためて突きつけられているように感じました。
加賀市の温泉
再び余談ですが、加賀市の3温泉、全部入ったことがあります。
どこも、源泉温度がとても高くて、良いお湯です。
2022年6月、山代温泉の総湯。
この北陸地方の温泉地には、中心地に「総湯」と呼ばれる公衆湯があります。観光客専用みたいな雰囲気の湯もあれば、地元の人たちが日常的に身体を洗いにくるような湯もあります。
山代温泉の総湯は、ばっちり観光客向けにリニューアルされています。朝イチの早い時間帯だったので、独り占めできました。上階にはくつろげる畳の部屋がありました。
同じく、2022年6月、山中温泉の総湯。
OSJ山中温泉トレイルレースに参加しました。総湯前の広場が、レースのスタート・フィニッシュ会場になっています。
残念ながら56km地点にて時間切れでDNFだったのですが、レース後に、総湯に入りました。地元のおにーちゃんたちが仕事が終わってから連れ立ってやってきて、何を話すでもなく、隣り合って座ってぼーっとしているような、社交場でした。やたらと湯船が深いのが印象的でした。
2020年7月、北陸をバイクツーリングした時に、片山津温泉に泊まりました。
当時はまだコロナ禍の最中だったので、いい宿に安く泊まれました。
このホテル、私が宿泊した直後から休業し、未だに再開していないみたいです。webサイトや楽天トラベルのページは閲覧可能ですが、電話番号は繋がりません。片山津温泉にもう一件あるグループホテルはやっているので、会社が廃業したわけではないようです。