国交省の空き家DB一括検索サイト(?)

日経 2016/6/6 : 全国の空き家情報集約 国交省、検索・売買簡単に

今朝(2016年6月6日)の日経の一面記事。

全国で空き家が増えている状況を受けて、国交省が、全国の地方自治体が独自に運営している空き家バンクDBの一括検索サイト(?)を立ち上げるとのこと。

うーむ、なんかちょっとズレているような。

 

 

蕨市でも空き家は増えていて、既に問題になりつつある。
おそらく、これから益々増えていく。

hoya_t blog (2015/6/15) : 市内に空き家が増えている。

hoya_t blog (2015/12/8) : 蕨市議会 2015年12月定例会の一般質問 #キレイな空き家対策について

 

空き家には、
・老朽空き家
・キレイな空き家
の2種類がある。

老朽空き家については、国レベルでも自治体レベルでも、対策のメドが立ちつつある。
放置すると損するように税制は改正され、自治体政府がある程度の強制力をもって解体を促すことが出来るようになった。

問題なのは、キレイな空き家で、これについては、対策の本質的な成功事例は未だ出てきていない。

特に過疎地を中心とする全国の自治体で、空き家DBを提供したり、データ登録や、貸借・売買取引に対してインセンティブを付与したりしているが、本質的な解決には至っていないケースが多いと思う。

 

ところで、キレイな空き家も、都市部と過疎地では、全く事情が異なる。

過疎地の場合は、そもそも不動産マーケットが存在しない。物件の数も少なく、単価も低いので、不動産会社が儲からないから。マーケットが機能していない領域なので、行政が空き家DBを提供することには、それなりに意味がある。

都市部では、不動産マーケットが存在するので、行政が空き家DBを提供すると、単純に民業圧迫になってしまうので、やるべきではない。
そもそも本質的な問題は、空き家が、賃貸・売買マーケットに出てこないこと。
住んでいた老夫婦がともにお亡くなりになり、相続した若夫婦が既にマンションなどを買って別の場所に住んでいたりして、遺品が未整理だし、生まれ育った家だから思い出があるし、何よりメンドウだし・・・ということで何となく放置しているケースが多いものと推測する。

 

過疎地の空き家DBには意義があるし、それを一括検索出来るサービスがあればそれなりに便利だが、それは民間のビジネスが提供するべき領域で、政府がやるべき仕事ではないと思う。

本質的な問題は、過疎地には雇用がないこと。

政府の仕事は、過疎地の雇用を増やすことだと思う。

過疎地に雇用が増えれば、過疎地の空き家への需要も増えるので、自ずと空き家の賃貸・売買も活発になっていくだろうし、それこそネクストやリクルートやカカクコムのような会社が、黙ってても勝手に空き家DB一括検索のようなサービスを立ち上げていくだろう。

 

都市部のキレイな空き家対策は、なんとしたものか。
前述のように、物件が不動産マーケットに出てこないのが問題なので、ここにインセンティブないしペナルティを付与するしか無いと思うのだが。あちこちでやり出したら、合成の誤謬は不可避だけど。
何か、海外にでもいい成功事例はないですかね?


【蕨市】マンションデベ総合地所様との官民連携協定の件

本日2014年8月22日(金)、蕨市と総合地所(株)様とが、
「コンパクトシティ蕨」将来ビジョンの推進に関する官民連携協定
というものを締結しました。

Exciteニュース:蕨市と総合地所、「ルネ蕨ガーデンシティ」に関して官民連携協定を締結
(2014/8/21)
http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20140820/Suumo_67831.html
(この記事本文はリクルートのSuumoから提供受けたものですが、今時点ではSuumo上では原文は見当たらず。)

 

総合地所(株)様の概要

ルネシリーズのマンションデベロッパーです。
元安宅産業(住友系)の建設部門で、非上場。
現在の社長は、元住友銀行。
株主構成は不明ですが、以下の記事によると、2006年時点でモルガン・スタンレーの不動産ファンドが30%保有して筆頭株主の模様。30%で50億だから、当時の時価総額は167億。
http://www.kachitas.com/service/news/200606/post-2594.html

この度、蕨市北町の旧日本車輌社宅跡地に12階建て、164戸の大規模マンションを建設中で、今週末から販売を始めるようです。

ルネ蕨ガーデンシティ
http://www.sgr-sumai.jp/mansion/w-164plus/

hoya_t blog : 2013/8/22 蕨市北町1丁目26番地の日本車輌製造(株)寮・社宅跡地の売却の件

 

協定の内容

これが、正直言って、よく分からない。
「連携協定」なので、要するに連携することの協定なのだが、何を連携するのかよく分からない。

リリースにおける内容としては、

・防災・防犯
・子育て支援
・住環境向上・緑化
・地域コミュニティ活性化

の4分野ということで、

蕨市のリクエストに応じて、総合地所様が
・非常用マンホールトイレを設置
・防災用備蓄倉庫を設置
・防災用井戸を設置
・敷地内に認可保育園を設置
・緑化します


等を受け入れて実施します、

ということなのだが、このような、マンションデベ側・マンション住民側にも、周辺住民・行政側にも双方にメリットがあることを、行政側がリクエストをするだけなら、わざわざ協定を結ぶ必要ってないのじゃないかな?

唯一、蕨市が引き出した
・マンションデベ側・マンション住民側にデメリット
・周辺住民・行政側にメリット
がある点は、
・マンション住民全戸に町会への加入義務付け
というものくらいかと思料します。

他方で、総合地所様側には、この協定の存在が、営業上のアピールポイントになるので、メリットは大きいものと思います。

 

個人的な所見

まあ、逆に言うと、この協定を結ぶことによって、周辺住民・行政側へのデメリットは何もないので、まあいいか、という気もします。

しかし、他に数多くの不動産・建設事業者が、市内にマンション、アパート、建売住宅を建てて販売している中で、規模が大きいとはいえ、今回の総合地所様との間でのみ特別な協定を結ぶことについては、公正性に疑義があります。

とは言え、今回、蕨市が民間企業と協定を結ぶのは、私が知る限りでは初めてのケースなので、正直、ちょっとどう解釈すべきかよく分かりません。
これから他市事例も含めて調べてみます。

また、本件については、議会の一部で、議会に対する説明に先立ってプレスリリースを打ったことに対して、議会軽視だ、誰よりも先に議会に対して説明すべきだ(=市民に対して説明すべきだ)、と非難する声が上がっているようです。
個人的には、この種の協定締結は議会同意案件ではなく、首長の専権事項のはずなので、どうでもいいと思います。
議会が行うべきなのは、事後的なチェックだと思います。