茨城県・福島県沿岸部の豪雨災害被災地を訪問

本年、令和5年(2023年)9月8日から9日にかけて、茨城県・福島県沿岸の大雨は、大規模な被害をもたらしました。
お亡くなりになった方のご冥福をお祈り申し上げます。
被災した方々を衷心よりお見舞い申し上げます。

 

マスメディアの報道によると「台風13号による大雨」あるいは「線状降水帯による大雨」と、表記の揺れが見られます。

私の理解によると、台風と線状降水帯は、気象学的にはまったく別個の現象のはずです。
このあたりは、これから詳しく分析されていくものと思います。

 

9月10日、現地の被災状況を視察して参りました。

 

 

日立市河原小地区

沿岸に近い地域です。
海には、小さな漁港と海水浴場がありますが、漁業や観光の街という感じではないですね。住宅が密集した、住宅街です。

 

20230910 日立市河原小町

地域全域が水没したわけではなさそうです。

川の近くの、ごく一部の地域が水没したようで、道路は土砂が堆積していました。

 

20230910 日立市河原小町

橋のたもと部分の車道、川に沿った歩道のアスファルトが激しく削られてしまっています。

 

20230910 日立市河原小町

同じ位置から、カメラを右側(川側)にパンして撮影したもの。

氾濫したのは、こんな川です。

堤防もありませんし、川の敷地にすぐ隣接して民家が立ち並んでいます。

 

20230910 日立市河原小町

泥水を被った畳が、路上に山積みになっていました。

泥水に浸水すると、基本的には乾かしてももう使えません。

 

20230910 日立市河原小町

災害ゴミが野積みになっています。

 

20230910 日立市河原小町

エアコンの室外機が冠水したようです。
家屋の壁面には、泥の後がついていません。

この地域は、全体的に、泥の量がそれほど多くないのですよ。

つまり、川が氾濫して流れ出た水は、それほど土砂を含んでいなかったのではないかと予想します。

上流部で土砂崩れが起きたわけではなく、純粋に、河川が氾濫しただけ、ということのようです。

 

20230910 日立市河原小町

この川のちょっと上流部。

せいぜいこんな川。

 

水害は、
・内水氾濫(都市型水害、マンホールやドブが溢れるなど)
・外水氾濫(河川の氾濫、いわゆる洪水)

の2種類に分類されるのですが、これは河川の氾濫なので、外水氾濫ですね。

 

日立市河原子町ハザードマップ外水

日立市ハザードマップ 洪水浸水想定区域(2023年9月時点)

河川の氾濫はまったく想定されていなかったことが分かります。

 

日立市河原子町ハザードマップ内水

日立市ハザードマップ 内水浸水想定区域(2023年9月時点)

川の氾濫と言うよりも、川に沿ったごく一部の雨水排水機能がキャパオーバになることが想定されていました。

注意書きには、以下のように書いてあります。

想定最大規模降雨(1000年に1度の雨)により、既存の排水施設で処理しきれない内水が氾濫した場合に、想定される浸水区域及び水深を表示しています。
※「水防法」に基づくものではありません。

上の、橋のたもとのアスファルトがえぐれた部分は、黄色(0.5m-1.0m未満)になっています。

今回の雨量は、千年に一度クラスだったということですね。

 

 

 

日立市役所

TV報道では、呆然とした表情の市職員達がバケツリレーをして泥水をかき出す映像が流れていました。

日立市では、東日本大震災によって被災した市庁舎を、災害に強い建物に建て直したはずなのに、その新庁舎が被災してしまった、ということです。

災害に強い新庁舎をまさに今建設中で、竣工間近に控えている蕨市民としては、ショッキングでしたね。

 

20230910 日立市役所

日立市役所の全景。

上流部(山側)から望む。

建物手前の駐車場から道路にかけて、一面が水没したようで、土砂が堆積しています。

 

20230910 日立市役所

拡大したところ。

小さな2つの川が、市庁舎敷地の上部(山側)にて合流しています。

 

20230910 日立市役所

ここが氾濫した地点のようです。

2つの川が合流した後、この川は、上記写真の左端に写っているように、暗渠に流れていきます。

川の水面から、天端までは2-3mくらいありますが、堤防はありません。
人やクルマの落下防止のフェンスが設けられていたのみです。

 

20230910 日立市役所

上記の位置から、カメラを上流部(山側)にパンさせて撮影した写真。

数沢川。

写真左側(川の右岸)の建物は、日立メディカルセンター看護専門学校の校舎。
写真右側(川の左岸)の建物は、google mapには情報が載っていないのですが、校舎か寮か何かのような造りです。

さらに川の上流は、街区が整った住宅街です。

市庁舎の上流部には、氾濫した形跡はありませんでした。

氾濫したのは、あくまでも、市庁舎の真上地点のみだったようです。

 

20230910 日立市役所

市職員が泥をかき出したり、濡れたものを干したりしていました。

 

20230910 日立市役所

移動式ポンプで排水している。

まだ地下フロアの浸水は続いていたようです。

 

市庁舎が冠水した後、日立市の災害対策本部は、消防本部に移されたそうです。

この地域で停電が発生したわけではないようですが、地下に配置された受電設備、非常用発電装置が浸水し、市庁舎は停電したそうです。

地下に電気関係の設備を置いてはいけない、ということですね。

 

日立市役所ハザードマップ内水

日立市ハザードマップ 内水浸水想定区域(2023年9月時点)

浸水がまったくの想定外ではなかった、ということが分かります。

今回の電源喪失は、想定外ではなく、想定内の出来事だった、ということですね。

 

20230910 日立市役所

市庁舎近くの、国道6号の歩道。
歩いて、消防本部へ。

 

20230910 日立市消防本部

市庁舎から、国道6号を挟んで斜め向かいに位置する、日立市消防本部。

かなりゆったりした造りの建物です。
敷地は広く、公園を兼ねた芝生が市民の憩いの場となっており、昼寝すると気持ちよさそうでした。

 

20230910 日立市消防本部

日立市消防本部の近く。

宮田川。

川がカーブする箇所で、外側が削れてしまったようです。

 

 

日立市白銀町地区

上記の、消防本部のすぐ脇を流れる宮田川を遡り、白銀町地区へ。

 

20230910 日立市白銀町

宮田川は、この白銀町地区では、局地的に氾濫したようです。

 

20230910 日立市白銀町 日立武道館

日立武道館。

大正6年、日立鉱山の福利厚生施設として建てられ、後に日立市に寄贈され、今は武道館として用いられています。

駐車場が災害ゴミ置き場となっていました。

 

 

いわき市 内郷白水町

再び常磐自動車道に乗って更に北上し、福島県いわき市へ。

 

20230910 いわき市内郷白水町

新川にかかる橋。

 

水没したクルマをレッカー移動していました。

川には、大量の木々が引っかかっています。

 

20230910 いわき市内郷白水町

この川は、堤防はありません。

川に沿った人家は全面的に床上浸水したようで、泥をかき出したり、家財道具を干したりしていました。

 

20230910 いわき市内郷白水町

折り重なったクルマ。

 

20230910 いわき市内郷白水町

橋に引っかかった木々。

 

20230910 いわき市内郷白水町

道路上を覆い尽くした土砂はまだ濡れており、ぬるぬるして滑ります。

 

20230910 いわき市内郷白水町

路面が乾いた箇所では、土埃が凄まじく、クルマが通るたびにもうもうと巻き上げられます。

 

それでは、この新川にかかる橋を中心とした、いわき市内郷白水町のハザードマップを見てみましょう。

いわき市内郷白水町ハザードマップ土砂災害

国土交通省 重ねるハザードマップ いわき市内郷白水町 土砂災害(2023年9月時点)

川に沿った谷筋の集落だけに、土砂災害の危険性は指摘されていました。

 

いわき市内郷白水町ハザードマップ洪水

国土交通省 重ねるハザードマップ いわき市内郷白水町 洪水(2023年9月時点)

しかしながら、新川が氾濫する可能性は、まったくの想定外だったようです。

堤防もないし、まさかこの川が氾濫するはずがない、と近隣住民は安心していたのではないでしょうか。

 

20230910 いわき市内郷白水町

同じ川の、少し下流部に移動したところ。

この辺りは、氾濫していません。

 

しかしながら、クルマから降りると、すさまじい異臭がしました。

腐敗臭と違う。
どちらかと言うと、排泄物の臭いに近い。
しかし、おそらく、排泄物そのものではない。

よく、土砂崩れの前触れ現象の一つとして「異臭がすることがある」と言われるが、その類だったのではないでしょうか。

 

 

水没した白水阿弥陀堂

以前に行ったことはなく、初めて訪れました。

平安末期に建てられた、国宝指定の建物です。
池水浄土庭園の奥に阿弥陀堂があります。

 

20230910 いわき市 水没した白水阿弥陀堂

浄土庭園は泥水で濁っていました。

 

20230910 いわき市 水没した白水阿弥陀堂

阿弥陀堂は水没しています。

 

いわき市白水阿弥陀堂ハザードマップ洪水

国土交通省 重ねるハザードマップ 白水阿弥陀堂 洪水(2023年9月時点)

5.0-10mの浸水が想定されていました。

標高が低いようですね。

 

 

いわき市 内郷宮町

少し北上して、内郷宮町地区へ。

内郷第二中学校では午後11時頃に体育館の床上が浸水したため、避難者の受け入れを停止した。4世帯6人がステージ上に移ったという。

避難所が床上浸水って、やばいですね。

 

20230910 いわき市立内郷第二中学校

内郷第二中学校

敷地内に入るのは遠慮しました。

 

20230910 いわき市立内郷第二中学校

敷地内は災害ゴミ置き場になっていました。

床上浸水した体育館。
決して、川に隣接しているわけでも、この集落の中で特別に低い位置にあるわけでもありません。

 

20230910 いわき市内郷宮町

避難所である中学校体育館が床上浸水したくらいですから、この地域一帯が全面的に床上浸水したようです。

 

20230910 いわき市立宮小学校

いわき市立宮小学校。

川から溢れた水・浮遊物が道路上を流れ、フェンスを押し倒したようです。

 

20230910 いわき市立宮小学校

同じく、宮小学校。

流れてきたクルマが、フェンスを乗り上げる形で押し倒しています。

 

20230910 いわき市内郷宮町

この地域に床上浸水をもたらした、宮川。

川の水面から天端までは、2-3mくらい。
堤防はありません。
川にすぐ隣接して、民家が建てられています。

 

 

それでは、この地域のハザードマップを見てみましょう。

いわき市内郷宮町ハザードマップ土砂災害

国土交通省 重ねるハザードマップ いわき市内郷宮町 土砂災害(2023年9月時点)

上記画像内で、
川は左から右に流れています。
2つある学校マーク【文】のうち、
右側が、内郷第二中学校
左側が、宮小学校。

 

集落の後背には里山があり、土砂崩れの危険性が示されています。

 

いわき市内郷宮町ハザードマップ洪水

国土交通省 重ねるハザードマップ いわき市内郷宮町 洪水(2023年9月時点)

なんと、宮川の洪水の可能性は、ハザードマップ上では示されていません。

 

 

ハザードマップは不完全

ということで、上記で見てきたように、河川が氾濫した箇所は、

ハザードマップ上で氾濫可能性が指摘され、想定浸水深の範囲内だったところもあれば、

ハザードマップ上では氾濫可能性は指摘されていなかったところもありました。

 

 

「ハザードマップがおかしい!」ということでは決してありません。

 

ハザードマップは、ある一定の前提条件の下での被害シミュレーションを示したものに過ぎません。

雨の降り方が一様ではないように、前提条件を決める要素には多くのものがあり、ありとあらゆる前提条件を想定して、ありとあらゆる全てのパターンのシミュレーションを行うことは、現実的ではありません。

 

しかしながら、分かってはいるのですが、ハザードマップが示すレベルを超えた被害が生じた、という事実は、猛烈にショッキングーであります。


広島市豪雨災害伝承館を訪問

2つ前のエントリ「平成26年広島市豪雨土砂災害現場を9年ぶりに訪問」で述べたように、広島市豪雨土砂災害の現場を9年ぶりに訪問した後、

 

広島市豪雨災害伝承館へ。

展示物は、テキスト+写真のパネル、動画がメインで、これらの情報のほとんどは、ネットで調べれば見ることが出来る。

唯一面白かったのは、災害現場の写真集の冊子で、撮影した場所の地図や解説も付け加えられていた。これは見ごたえがあった。

 

 

この施設は、ちょうどこの訪問日に開設されたばかりで、記念講演会があるので、これを聴講するのも、今回の訪問の目的の一つだった。

広島大学の防災・減災研究センター長の海堀正博特任教授
広島地方気象台の中村浩二台長

 

幾つか面白い話を聞けたので、以下にメモ。

 

  • 防災対策のパラドクス

津波に備えた防潮堤、川の氾濫に備えた堤防、土砂崩れに備えた砂防ダムといったように、防災対策を強化すればするほど、避難の必要がなくなったと思われ、居住エリアが広がり、新たな人家が建てられてしまう。
防災施設は、それぞれ一定の条件の下に造られており、限界がある。ある程度までしか守れない。
土砂災害防止のために、自然的な素因を変えることは不可能。社会的な素因をいかにして減少させるか。


所見:だからこそ、レッドゾーンのみならずイエローゾーンについても、新規居住を制限した上で、既存の住居の居住者に対しても政策的な移転誘導が必要なのではあるまいか。

 

  • 避難指示を出すタイミングの判断は困難

平成26年広島豪雨災害においては、避難勧告(2021年にこの用語は廃止され、避難指示に一本化されている)が遅かったために犠牲者が多くなったと言われていた。
しかしながら、豪雨の夜中に避難することで、別種の被害が生じた可能性もある。
そして、避難指示が早過ぎても、空振りの印象を残しがちになり、オオカミ少年効果を生んでしまう。


所見:行政に対して、完璧な避難指示を求めるのは無理。各家庭毎に、自分たちでリスクを背負った上で判断するしかない。行政の避難指示は、一つの判断材料程度と考えるべき。

 

  • 住民の災害に対する危機感の向上は難しい

今までの経験から、
ハザードマップの公開だけでは、だめだった。
過去の災害を示す石碑も、だめだった。


所見:まあその通りなのですが、頑張るしか無いですね。地方政治家として肝に銘じます。

 

  • 線状降水帯は現状では予測困難

発生メカニズムは未解明。従って、予報モデルが確立していない。
我が国においては観測体制も不十分。
「前線が居座っている」という表現が用いられことが多いが、風は常に吹いており、積乱雲は移動している。積乱雲は、誕生→発達→縮小→消滅のサイクルを繰り返している。たまたま同一地域において、発達した状態の積乱雲が線状に並んで居座っているように見える状態が、線状降水帯。


所見:スーパーコンピュータをたくさん買えばいいんじゃね?と思っていたのですが、モデルが確立しておらず、観測体制が不十分ということであれば、そんな単純ではないのですね。

 

  • 広島地方気象台は、県内市町村の首長とホットラインを築いている

台長が、年に1回ずつ、すべての首長を訪問している。台長と首長がトップレベルで直接電話で話せる人的関係を築き上げている。


所見:へー、これはすごいですね。広島地方気象台だけの体制なのか、この台長が個人的に力を入れていることなのかは分かりませんが、埼玉県でもやって欲しいですね。
地方気象台というのは、概ね都道府県に一つずつあり、埼玉県の場合は、熊谷市に熊谷地方気象台があります。
熊谷地方気象台の台長と、蕨市長が直接会ったり電話で話したりしているのかは、存じませんが、そのような話は聞いたことはないですね。この種の他の行政機関との連携については、市長が日共だとほぼ不可能に近いくらい極めて困難であり、日共党員の市長を抱える蕨市における大いなるディスアドバンテージです。共産主義者は、既存の秩序を破壊して社会を転覆し革命を起こすことを第一義に考えていますので、他の行政機関からは、連携・コミュニケーションは根本的に不可能だと見なされています。

 

 

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講演会の様子。

 

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講演会の後は、地元の梅林小学校の生徒によって、自分たちが考えたの防災対策の発表会が行われました。

 

 

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県営緑ヶ丘住宅の片隅に立つ慰霊碑。


平成26年広島市豪雨土砂災害現場を9年ぶりに訪問

平成26年(2014年)8月20日の豪雨により、77名の方がお亡くなりになるほどの大規模な大規模な土砂災害が広島市で発生しました。

私は、平成26年(2014年)9月2日に現場を視察してきたところですが、このたび、広島市豪雨災害伝承館がオープンするというニュースを目にし、9年ぶりに当地を訪問し、復旧復興の様子を視察して参りました。

 

 

被災地である八木・緑井地区の概要

広島市は、平地部分が狭く、人口増とともに、山間部の斜面に分け入るように住宅開発が進んできました。

豪雨災害の代表的な被災地である、八木・緑井地区も、そのような斜面の谷筋の新興住宅開発地域です。

たびたび氾濫を起こした太田川、幹線国道54号線、JR可部線と、山並みが並行しております。

高度経済成長期に、山並みの谷筋が宅地開発されていきました。

 

この地は、広島市の中心部からは電車あるいはバスで(どちらでも行ける。時間も同じくらい)40分くらいです。太田川に沿った幹線道路である国道54号線には、全国どこでも見かけるような郊外型ロードサイドチェーン店が立ち並んでいます。

落ち着いた郊外住宅地域といった感じです。

斜面の谷筋が宅地開発され、立ち並んでいる家々は、高度経済成長期に建てられた古い家もあれば、世代交代とともに建て替えられたような新築家屋もあります。

また、単身者を想定したようなアパートもあります。

 

当地では、過去の土砂崩れの歴史を知らせ、子孫に対して注意を促す伝承があったようですが、世代交代とともに警戒が薄れていったようです。

また、特に被害が大きかった八木地区には県営住宅があるのですが(今でもある)、

・県営住宅があるくらいだから、たぶん大丈夫なんだろう。
・行政が宅地開発を許したわけだから、たぶん大丈夫なんだろう。
・既に他にも人が住んでいるし、たぶん大丈夫なんだろう。

と、この地域の住宅を購入して引っ越してきた方々の思考プロセスにおいて正常化バイアスが働いていたことが、様々なインタビュにおいてレポートされています。

 

 

被災地の復旧

9年も経っているので、もはや、被災した当時の爪痕のようなものはあまり残っていません。

しかしながら、そこかしこに空き地がありました。

 

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2014年9月の八木用水
堆積した泥をバキュームしていました。

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2023年8月の八木用水

 

 

未だに路面に土砂が堆積している・・・といったことは無く、この地域の古い農業用水である八木用水には、今では透き通ってきれいな水が豊かに流れていました。

郊外住宅地であり、平日の昼に訪れましたので、そこらを出歩く人の姿は、下校途中の小学生くらいであり、落ち着いた静かな雰囲気でした。

 

 

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2023年8月
こちらは、家を取り壊した後、再建せずに引っ越ししたのでしょうね。

 

 

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2023年8月
こちらにあった家の方がお亡くなりになったようで、お花が備えられていました。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

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2014年9月
床上浸水したようで、ドアの下部30cmくらいに泥水の跡がついていました。

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2023年8月

 

 

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2014年9月
光廣神社

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2023年8月

 

 

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2014年8月
この社宅風の築古アパートは、1階に土砂が流れ込み、2階壁面にまで泥はねがついていました。

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2023年8月
取り壊されて更地になっていました。
過去のgoogleストリートビュを遡ってみると、被災後数年間は、1階の入り口・窓にベニヤ板を打ち付けたまま空き家となっていた模様です。

 

 

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2014年9月
家々の間を流れる狭い水路。
陸上自衛隊と警察が、堆積した泥に長い棒を突き刺しながら、行方不明者の捜索をしていました。

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2023年9月

 

 

谷筋に設けられた、砂防堰堤

冒頭にembedしたgoogle map衛星写真を見ると分かるように、谷筋にはやたらと立派な砂防堰堤が建てられまくっています。

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砂防堰堤設置工事は、ほぼ完了しているようでした。

 

 

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JR可部線 梅林駅から山並みを見る。
住宅街の上の方に巨大な砂防堰堤が設けられているのがよく見えます。

 

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住宅街の上の砂防堰堤。

全国あちこちの、似たような地形に位置する住宅街上部の砂防堰堤と比べても、異常なくらい巨大です。

もちろん、かなりお金がかかっているものと予想します。

 

この種の公共事業は、防災設備・交通信号などどのようなジャンルにおいても、ひとたび人的被害が生じると、将来の再発可能性の高低に関わらず、その箇所に事後的に大きなお金が投じられる傾向にあります。

 

 

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多重構造の砂防堰堤。

 

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こちらはまた別の箇所の砂防堰堤。

 

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これが最も大きな砂防堰堤でした。

最も大きな土砂崩れが発生し、大きな被害が生じた、県営緑ヶ丘住宅の上部です。

この一帯の谷筋には、土砂崩れに流されずに被害を受けなかった家も何軒かあったのですが、これらも全て移転させた上で、このような大規模な砂防堰堤を設置したものです。

 

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一つ上の写真の堤のすぐ上部には、このような広い遊水地のような空間が広がっています。遊水地と言うよりも「遊土砂地」ですね。

 

20230831135549

この「遊土砂地」を上から下に向かって見たところ。

このような、谷筋に巨大なプールを設ける形の砂防堰堤は、見たことがありません。
これは、かなり大きな規模の土砂崩れにも耐えることが出来るでしょう。

 

島原市で見かけた、普賢岳が噴火して火砕流が街に流れてくることを想定した巨大なプールである、水無川砂防ダムと同じような考え方、造りです。

 

 

雲仙普賢岳には2020年12月に妻と登りました。
今でも噴火口は煙を吐いていますが、火山活動は安定しており、山頂の溶岩ドームを望める位置まで登ることが出来ました。

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2020年12月に訪れた、島原市の水無川砂防ダム。
一面を枯木、枯れ草が覆っている、この写真の全体が、火砕流を溜め込んで市街地に流れるのを防ぐための巨大なプールとなっています。

 

 

広域避難経路が建設途上

(c)広島市復興工事事務所だより 平成28年9月号より

(c)広島復興工事事務所だより 平成28年9月号

広域避難ルートとして、
・山並みに並行して、都市計画道路 長束八木線
・山並みに垂直に、都市計画道路 川の内線

の築造工事が進められていました。

これらの都市計画道路は、豪雨災害後に計画が立てられたわけではなく、それ以前から計画は存在していたものの、移転交渉などが難航して、事実上、ほとんど進捗していなかったようです。

豪雨災害発災を契機に、避難ルートの必要性の認識が高まり、一気にスピードアップして建設が進められたようです。

 

 

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都市計画道路 長束八木線。

一部開通、一部は既存家屋移転も未着手といった段階でした。

 

この道路の地下には、かなり径の太い雨水管渠が築造されています。

こちらの方が、写真付きで解説してくれています。

 

 

20230831130259

ここから先は、まだ家屋移転も行われていません。

 

 

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都市計画道路 川の内線。

なぜ、敢えてコスト高な橋上路としたのかは不明ですが、土石流に埋まっても避難できるルートを確保した、ということなのかもしれません。

 

 

 

所見

この斜面の住宅地は、全域がハザードマップでは黄色なのです。
すなわち、土砂災害防止法における、警戒区域(イエローゾーン)です。

特別警戒区域(レッドゾーン)では家屋は建てられませんが、警戒区域では建てることは可能です。

 

これから益々人口減少が続き、住宅ストックが過剰になりつつあることが確実な中で、これからも警戒区域に人が住み続けることに合理性はあるのだろうか?

 

政策的に、自然災害の危険性が高い地域から、安全な地域へと、人の移住を促していくべきと思料。

(都市工学上の真の意味での)コンパクトシティ政策を、災害対策という観点からも進めていくべきと思料。


転売ヤーは何故に悪なのか?

とかく転売ヤーが敵視されております。

 

3日前の日経では、こんな記事も掲載されていました。

損害が年に1,300億円!?

そりゃ大変だ、何とかしなきゃ・・・いやいや、ちょっと待って!

それって、本当に損害なのか?
そもそも、その損害は、誰が被ったものなのか?
誰の作為、あるいは不作為によるものなのか?

 

 

 

転売は、自由で公正な市場における、正当な経済活動ではないのか???

例えば、100円で仕入れたモノを、利益を載せて105円で売却し、5円のサヤを抜く。

それは、伝統的な商社の口銭ビジネスと同じであって、正当な商取引ではないか?
どこに不正が在るというのか?

市場の歪みに目をつけ、在庫リスクを背負って、モノを流すことによって利益を売るという正当なビジネスが、何故、批難されなくてはならないのだろうか?

上記の日経の記事には、とてももやもやしたものを感じますし、個人的には不愉快ですらあります。

 

 

 

転売によって、誰も損していない

買い手(エンド消費者)は、そのモノに対して、105円に値すると評価し、105円という価格で満足して購入している訳だから、損失は発生していない。

売り手(メーカなり小売事業者なり)は、本来、最初から105円というプライシングを行っていれば、5円の利益の上積みができたはず。転売ヤーも排除できたはず。しかしながら、100円という「間違えたプライシング」を行い、市場の歪みを作り出してしまったのは、企業努力が足りなかった結果に他ならず、これを損失と言うことは出来ない。
社内的には「機会損失」という表現は出来るが、転売ヤーを責めるのはお門違いというものです。

 

 

 

チケット転売が法によって禁じられている理由

チケット転売に関して言うと、

チケット転売が、何故にチケット不正転売禁止法によって禁じられているのかについては、

こちらの記事でまとめて解説してありました。

興行チケットの転売ヤー、いわゆるダフ屋の規制については、イベント会場の周囲で行われたため、公共の治安に害を為す、という観点から行われてきた、という歴史的経緯があるとのこと。

また、2019年にチケット不正転売禁止法が立法化されたのは、東京オリンピックを目前に控えていたためであろうと述べています。

しかしながら、イベント会場周囲での治安維持が目的であるのならば、ネットオークション・フリマサイトなどを用いた転売を規制する必要はありません。

上記記事の著者も、この問題点を指摘しつつ、

売り手がダイナミックプライシングを取り入れることによって、転売行為を自動的に排除していけばいいのではないかと問題提起しています。

このやり方は私もいいと思いますね。何でやらないのか?というと、やはり企業努力が足りないから、ということに他ならないのではないでしょうか。

 

 

 

botによる仕入れは不正なのか?

これは、当該ECサイトなり、チケット販売サイトなりが、規約上NGと定めていれば、アウトです。

botによる高頻度大量アクセスは、大きな負荷がかかるので、これを禁じることには十分に合理性があります。

逆に、規約上NGと定めていなければ、OKじゃないですかね。これは、当該企業が企業努力によって規約を見直せばいいだけの話です。


twitter終了のお知らせ

というこで、twitterは本日をもってx.comに名称とロゴを変更しました。

単にブランド変更したにとどまらず、まるで一つのサービスが終了し、イチからの新しいサービスがローンチしたかのような趣があります。

 

twitterは、自由なインターネットの象徴でした。

テックプラットフォームが、社会をより良い方向に変革していく原動力となり得ることを示してくれました。
(文字通りの意味で、単なるプラットフォームではなく、原動力だった!)

同じ業界の片隅で働く者の一人として、自分たちが社会を変革して文明の発達に貢献しているのだという誇りを抱かせてくれました。

ここ10年ほどはROM専でしたけど。

 

twitterメンテ中。

初期のtwitterは、猫様たちがサーバメンテしていました。
(c)twitter

 

Twitter

今では考えられないことですが、ラピュタ再放送の「バルス」発言の直後には、鯖落ちしていました。
(c)twitter


埼玉県の新座防災基地を見学

埼玉県内に5ヶ所、防災基地という施設があります。

埼玉県防災基地

(c)埼玉県地域防災計画

災害用の資機材、食べ物・水、薬、その他様々な物資の備蓄倉庫であり、かつ、資機材・物資の受け入れ・検品・仕分け・発送のための物流センタとしても役割りも果たします。

県内には5ヶ所あります。

蕨市を担当するのは、新座防災基地です。

 

 

実は、このような施設の存在を全く知りませんでした。

蕨市議会では、一度も話題に上がったことはありません。

デジタルデータ化されている平成12年度(2000年度)以降の蕨市議会の議事録を全て検索してみても、一度も取り上げられたことはありません。

毎年一回行われる、蕨市総合防災演習においても、新座防災基地との資機材・物資の受け渡しに関わる訓練が行われたことはありません。

もしかしたら、蕨市議会だけではなく、行政側の蕨市役所も知らないんじゃないですかね?

 

 

ということで、県の危機管理防災部にアテンドしていただいて、見学してきました。

場所は、↑こちら。

陸上自衛隊朝霞駐屯地に隣接した立地ですが、災害時に連携することを想定しているわけではなく、たまたまではないかとのこと。

蕨市からは、クルマで30分くらいですね。

 

 

埼玉県 新座防災基地

広大な駐車場。

多くのトラックが同時に出入りすることが想定されています。

 

 

埼玉県 新座防災基地

大型ヘリコプターが、夜間でも発着できるヘリポートが備わっています。

ドクターヘリの発着にも利用されているとのこと。

 

 

埼玉県 新座防災基地

トラックが背面から接して、荷台にそのまま積み下ろし出来る高さのトラックバースが備えられています。

 

この防災基地そのものは、運送運搬手段(トラックと運転手)は持っておらず、トラック協会などに委託することになるそうです。

 

また、スタッフが常駐しているわけではなく、平時においては無人です。

有事においては、近隣の地域振興センターのスタッフがやってきて運営に当たるとのこと。

地域振興センターというのは、県内各地における、県の出先機関です。

蕨市は、川口市、戸田市とともに、南部地域振興センターという機関が管轄しています。

 

 

埼玉県 新座防災基地

倉庫の中の様子。

 

 

埼玉県防災基地

埼玉県防災基地

(c)埼玉県地域防災計画

備蓄品のリストは、埼玉県地域防災計画に掲載されています。

一通り思いつくものはだいたい揃っている印象。

 

原則として、市町村からのリクエストに応じて資機材・物資を提供していく、とのことですが、プッシュ型で出すパターンもあり得るとのこと。

 

 

埼玉県 新座防災基地

パレットごと持ち上げて人力で運搬できる道具。

 

 

埼玉県 新座防災基地

かなり古そうなボートが1艇、埃をかぶっていました。

個人的には、近年、都市型水害が多発している状況を鑑み、ボートはもっとたくさん装備してもいいような気もしますが、では、「適切なボリュームは幾つなのか?」と問われても、なんとも回答しようがありません。

 

 

埼玉県 新座防災基地

飲水のろ過装置。

かなり古く、巨大なものなので、最新型でよりコンパクトなものへのリプレースを進めていく予定とのこと。

 

 

埼玉県 新座防災基地

スノーシューとストックも置いてありました。

かつて県北部で発生した豪雪災害に備えたもの。


見沼代用水の払い下げ

見沼代用水土地改良区において、見沼代用水のうち、もはや農業用水として使われていない支流の部分について、それぞれの地域の市に払い下げるプランが進められているそうです。
今の時点では、時期は未定です。

蕨市が、お金を出して買い取る、ということになります。

その後は、埋め立てててしまえばいいと思います。

20230706 蕨市内の見沼代用水

昨日の、蕨市錦町地内、春日公園付近の見沼代用水。

まったく手入れがなされておらず、草がもしゃもしゃに繁茂し過ぎて、水面が見えません。

そもそも、ほとんど水は流れてきておらず、ヘドロしかないのですけどね。

 

 

 

見沼代用水は、江戸時代に造られた、190kmにも及ぶ長大なもので、本流は、今日においても農業用水として用いられています。

見沼代用水土地改良区という団体が、運営管理しております。

 

旧浦和の文蔵から、蕨市の北町に流れ込み、錦町を経由して戸田市へと流れ出ております。
この区間は、見沼代用水の本流ではなく、支流の一部に過ぎません。

蕨市~戸田市の支流においては、都市化が進んだため、もはや農業用水としては用いられておらず、水が流れずに淀んでヘドロが堆積し、不法投棄を招き、美観を損ね、悪臭を放ち続けてきました。

蕨市議会議員に初当選した平成23年(2011年)以来、環境整備を見沼代用水土地改良区に求めるようにと、蕨市に対して要求し続けてきました。

蕨市は、長年に渡りこの問題を放置し続けてきました。
市議会での一般質問、予算案における質疑、会派での予算要望など、あらゆる機会に改善を求めてきたのですが、見沼代用水の風景は、12年前の平成23年当時から何も変わっておりません。

 

ようやく動き出しそうです。