令和5年(2023年)11月7日、蕨市立文化ホールくるるにて、蕨市議会の議会報告会があり、一聴衆として参加してきました。
今までにないほどの大勢の聴衆が参加しておりました。
当日の模様が、動画配信されています。
30分間 プレゼンテーション + 30分間 Q&A・要望受付
というフォーマットは従来通りでした。
このイベント、毎年一回行われており、今年は第8回、つまり8年目です。
第1回目から7回目まで、内部の人ととして参加してきました。
プレゼンテーション担当をしたこともあり、広報広聴委員会メンバとして裏方を担ったこともあり、議長として関わったこともあります。
外から一聴衆として参加してみると、今までとは違った視点で見ることができて、面白く有意義な体験でした。
議会として、議会全体で、行うイベントなので、様々な制約があります。
制約があるがゆえに、なかなか思い切った新しい試みをすることができず、当たり障りのない内容になってしまうというジレンマに悩み続けてきました。
議会報告であって、行政報告ではない
政策を考えて行政に対して提案し、行政に計画させて、実行させる、というのが議会の仕事です。
単に個別の案件(例えば、市庁舎の建て替え、区画整理や再開発の進捗)などの結果や現状だけを解説すると、それは議会報告ではなく、行政報告のように聞こえてしまいました。
その案件に対して、議会がどのように関わったのか、が重要です。
議会全体の報告であって、議員個人・各会派の報告ではない
全ての議員・会派が協力しておこなうイベントなので、特定の議員個人・会派の宣伝になってはいけず、中立である必要があります。
個別の案件については、議員個人ごと、会派ごとに、考え方や対応には差があります。
それらの考え方や対応の差を超越して、議会全体としての報告を行わなくてはなりません。
「会派Aは賛成、会派Bは反対、会派Cは・・」でした、という議員個人・会派ごとの考え方や対応の差を説明することはできません。
公平性を確保することが極めて困難です。
会派Aが8人、会派Bが3人の場合、同じ秒数を用いて説明することが公平だろうか?
会派Aは8秒間、会派Bは3秒間というように、人数に比例して時間差をつけるべきではないだろうか・・・などと考え始めるときりがなく、様々な考え方があって、まず合意することはできません。
全会派・議員の合意を得た内容しか話せない
全会一致ではなく賛否が分かれた案件、将来の案件などは、議員個人・会派ごとに考え方、対応がまちまちなので、プレゼンテーションの内容について、まず合意することは出来ません。
従って、プレゼンテーションは、当たり障りのない過去の内容になりがちです。
「まさに今、喧々諤々の議論が行われているホットトピックス」こそ、市民としては知りたいところですが、まず、これらを取り上げることは出来ません。
議員個人の私見を述べる場ではない
Q&Aコーナーでは、質問の分野ごとに、担当する委員会の委員長が回答する、という仕組みになっています。
ここは委員長の私見を述べる場ではありません。
議会としての総意を述べる場です。
そもそもその場で他のメンバの合意を得た上で発言する、ということは時間的、物理的に無理なため、当たり障りのない回答しかできません。
例えば、「蕨駅西口再開発が遅れているのは何故か?」という質問があったとして、
担当委員長として「私は、◯✕が理由だと考えています」と具体的に私見を回答するのは、アウトです。
遅れている理由については、議員個人・会派ごとに様々な考え方があり、そもそも、現状を「遅れている」と認識しているか否かについても、おそらく合意出来ないと思います。
私が仮に担当委員長として回答する立場であれば、「当初予定では、◯年竣工予定でしたが、今現在の予定では、✕年竣工予定です。数回に渡り遅延して、計画が立て直されています。遅延理由については、直近では、行政当局は、コロナ禍により対面での会議が開催できず権利者の合意に時間がかかったため、と説明しています」などと、行政当局のオフィシャルな発表を代弁することでお茶を濁すことになると思います。
個人的には、上記のような行政当局の回答は、コロナ禍をエクスキューズにした誤魔化しに過ぎず、本当の計画遅延の理由は他にあると思っているのですが、そのような私見を述べることは出来ません。
更に言うと、
「◯✕をやってほしい」という要望を受けて、
「分かりました、検討します」と回答するのも、厳密にはアウトでしょう。
他の議員個人・会派の中には、「◯✕については、検討する必要すら無い!」と考えているところもあるかもしれず、その確認の手続きを経ずに発言することは出来ないはずですから。
ということで、なんか当たり障りのない内容だなー、もっと突っ込んだ詳しい内情とか、裏話みたいなのを聞きたいなー、各議員個人・会派ごとの考え方の違いを知りたいなー、という感想を持った人は多かったかもしれませんが、難しいんですよ。