ガソリン代は、もともと日々変動するものですが、ここしばらく、段階的に上がってきています。
国の補助金が、段階的に縮小されているためです。
直近の、蕨近辺のガソリンスタンドでのレギュラーガソリンのリッター当たり単価は180円前後といったところでしょうか。
国のガソリン補助金の趣旨と目的
正しくは、燃料油価格激変緩和補助金といいます。
元々、油の価格は、為替、国際情勢など様々な要因で、短期間に大きく変動することが多いものです。急激な価格の上昇から、人々の暮らしを守ることを目的として、この補助金制度は存在します。あくまでも、「激変を緩和する」ことが目的であり、「価格上昇から消費者を守る」ことが目的ではありません。
原価が激変(=急激に上昇)した際にこれに対応して補助を出し、段階的に補助額を減らしていくことによって、激変による負の影響を抑える仕組みとなっています。激変を緩和し、経済を安定させることには、公益性があります。当初は時限的な措置でしたが、延長され続けてきました。
油の価格は上がったり下がったり変動するのが当たり前であり、これにどのように向き合っていくのかは、消費者自身の責任と負担において、自ら判断して対処していくべきものです。それが自由主義市場経済の原則です。
国のガソリン補助金の補助額縮小の経緯
2023年9月から、段階的に縮小されてきました。
2024年12月19日、1リットル当たり5円減額されました。
2025年1月16日、さらに1リットル当たり5円減額されました。
資源エネルギー庁のこちらのwebサイトの解説によると、1月23~29日の補助額は、21.5円とのことです。レギュラーガソリンの全国平均は、補助がなければ206.5円だったところ、これに21.5円の補助が行われているため、185.1円と示されています。
ガソリン税暫定税率撤廃の議論とは無関係
ガソリン税の暫定税率は、リッター当たり25.1円です。
道路建設・整備を目的として、1974年に導入されました。本来は暫定的なものであったはずなのですが、今日まで延長され続けてきました。その仕組には理不尽な部分もあり、永らく批判され、廃止が求められてきたところです。先の衆院選の後、自民・公明・国民の3党によって廃止が合意されました。廃止時期については、現時点では明示されていません。
ガソリン税暫定税率廃止によって、ガソリン価格はリッター当たり25.1円値下げされることになります。
国のガソリン補助金の縮小(=値上げ要因)は、ガソリン税暫定税率廃止(=値下げ要因)のバーターというわけではありません。
これまで説明してきた通り、激変緩和を目的としたガソリン補助金と、道路建設・整備を目的としたガソリン税暫定税率は、全く異なる目的のための、別の仕組みです。
油の消費は、減らさなくてはならない
ところで、我が国を含め、国際社会全体で、脱炭素への取り組みを進めています。
油の消費を減らさなくてはならない。
ガソリン車を減らして、電気自動車を増やしていかなくてはならない。
我が国は、2035年までに乗用車の新車販売において、電動車100%を目指しています。
「そうは言っても、今はガソリン車しか持っていない」、「クルマがないと、日々の買い物にも、仕事にも、いろいろと困る」などという、短期的な話ではありません。
脱炭素の取り組みは、長期的な国際社会全体の目標であり、達成しないと人類が滅亡するかどうかという極めてクリティカルな話です。
ガソリン補助金は、脱炭素化の取り組みに反する
ガソリン補助金の延長・恒久化は、脱炭素の取り組みに明確に反するものです。
将来世代に対する責任として、私たち現役世代は、油の消費を減らさなくてはなりません。そうであるにも関わらず、ガソリン補助金は、ガソリン消費に対するインセンティブとなってしまっています。
リッター当たり◯✕円という定額の補助制度であるため、
・クルマを持っていない人は、補助をもらえない。
・クルマを持っている人は、補助をもらえる。
・燃費の良いクルマ(ハイブリッド車、軽自動車・コンパクトカー)を持っている人は、少ししか補助をもらえない。
・燃費の悪いクルマ(スポーツカー、排気量が大きなラグジュアリーカー)を持っている人は、たくさん補助をもらえる。
・必要最小限しか乗らない人は、少ししか補助をもらえない。
・必要もないのにドライブしたり、レジャーで走り回ったりする人は、たくさんもらえる。
という結果となってしまっています。
これは、おかしい。
政府が、ガソリン消費に対して補助を出すという政策は、脱炭素への取り組みに対して明確に逆行しています。
暫定的な激変緩和のみが目的であれば、経済の安定のためには、やむを得ません。
しかしながら、これまでは、半ば恒久的なバラ撒きとなってしまっていました。
ガソリン価格は、もっと上がるべき
ガソリン価格を上げることによって、
・ガソリン車から電気自動車への移行
・コンパクトシティ政策・MaaSの推進により、そもそも自家用車がなくても生活していける仕組みの導入
を政策的に誘導していくべきです。
「クルマがないと生きていけない」周縁部に住む人たちに対して、クルマがなくても暮らしていけるような都市部への移住を促進していくのが、本来の意味でのコンパクトシティ政策です。
諸外国と比べて、日本のガソリン価格はまだまだ安い
2025/1/11付け日経記事にて、G7各国のガソリン代を比較して、我が国は米、カナダに次いで安い点が指摘されています。
(c)日経新聞
北海油田を抱える産油国である英国よりも遥かに安いなんて、異常です。
「物価高騰対策」、「日々の暮らしを守る」という耳障りが良いガソリン補助金は、下らないバラ撒きでしかなく、脱炭素という国際社会全体が目指している目標に逆行していることを、しっかりと認識しましょう。
ガソリン車から電動車への移行を促進するためならば、むしろ逆に、「ガソリンに対して懲罰的な重課税を行うべき」という政策案すら考えられます。