昨日、令和6年(2024年)8月27日、蕨市議会 保守系会派:新翔会の仲間と、荒川水循環センターを視察してまいりました。
水循環センターとは、下水処理場のことです。
親しみやすい呼び名としたものです。
荒川左岸、幸魂大橋の川下に位置しています。
戸田市内です。
彩湖や荒川CRにジョギングに行くたびに横を通り抜けていましたが、初めて中に入りました。
県の流域下水道・水循環センターの仕組み
身近な、街の中の下水道は、公共下水道と呼び、市町村が運営しています。
それぞれの市町村ごとに下水は集められ、県が運営している流域下水道の管路に流れていき、やがて水循環センターに集まります。
ここできれいに処理して、河川に流します。
市町村と県は、このように役割分担しています。
但し、歴史的・地理的な経緯から、市町・一部事務組合が独自に下水道の終末処理を行っているケースもあります。
埼玉県の流域下水道
荒川、利根川などの大きな河川の、右岸、左岸それぞれといったように区分し、8つの流域下水道に分かれています。
荒川左岸下流のエリア(上尾市-さいたま市-戸田市-蕨市-川口市)を担当しているのは、荒川左岸南部流域下水道です。
人口密集エリアであるため、国内でも最大規模です。
蕨市においては、下水の100%の終末処理を、荒川左岸南部流域下水道に委託しています。
尚、蕨市内においては、錦町のみが分流式(汚水と雨水の管路が別系統に独立している)ですが、雨水は、そのまま河川に放出しています。
流域下水道の費用負担
受益者負担の原則に基づき、県が市町村に請求しています。
料金設定は、県内一律ではなく、流域下水道ごとに異なり、5年毎に見直しています。
人口が疎らなエリアの流域下水道よりも、人口密集エリアの流域下水道の方が、管路・ポンプ場などの投資・運用効率はいいので、料金設定も安くなります。
荒川左岸南部流域下水道は、県内でも安い方です。
維持管理負担金の立方メートル当たりの単価は、荒川左岸南部流域下水道は処理人口:199万人で、@36円です。県内で最高値の荒川上流流域下水道(深谷市・寄居町)は処理人口:2万人で、@99円です。
しかしながら、物価・エネルギーコスト上昇が続く中で、今後、値上がりすることは確実な状況です。
そもそも、下水道が出来る前は、どうしていたの?
荒川左岸南部流域下水道が出来たのは、52年前の、昭和47年です。
これまでは、し尿処理は全て汲み取りでした。
家庭や工場などの排水は、全てそのまま川に流していた、ということになります。
今となっては想像も出来ない世界ですね。
どうでもいい余談ですけど、私は2016年にセブ島でダイビングのライセンス取ったんですよ。
海はもちろんとても綺麗で、サンゴや熱帯魚、ジンベイザメと戯れながら講習を受けたのですが、島はほとんど下水道が整備されておらず、川は汚くて、それらの汚水がそのまま海に垂れ流されていました。
川はあんなに汚いのに、なんで海はこんなに綺麗なんだろう?と不思議でなりませんでした。
海はとても広大なので、ある程度の量までは、文明社会が垂れ流す汚水を飲み込んで希釈してしまうわけですね。量の問題なのです。
施設見学の写真レポート
流域市の維持管理負担金の増額要因・背景、防災対策、施設概要についてお聞きしました。
施設内は、ヘルメットを被って見学します。
場所によっては防塵マスクも装着しました。
中央管理室。
言うまでもなく、下水道処理は24時間体制で行っていますので、この中央管理室も24時間体制で稼働しています。
基本的には、何かを操作する作業するというよりも、異常が無いかどうか監視し、異常が発生したら対応する作業がメインのようです。
沈砂池。
水循環センターにやってきた下水は、まずここにやって来ます。
生の下水なので、やはり臭いです。
大きなゴミ、土砂を沈めます。
ポンプ棟。
低い位置にある下水を、高い位置に持ち上げるのが、ポンプの役割です。
管廊。
視察団の面々。
管廊には、近隣の高校生たちに描いてもらった壁画があります。
クマムシくんやコバトンが楽しそうに水の中を泳いでいます。
水の妖精?
高校生たちによる、下水道インフラへの感謝と、ここでオペレーションする方々へのリスペクトの気持ちがよく表現されています。
大きな導水管の前で。
でかいですね。
何となく、ゴゴゴゴゴゴ・・・という音は聞こえるのですが、中は見えないので、どのくらいの勢いで下水がこの中を流れているのかは分かりません。実はチョロチョロなのかもしれません。
管廊案内図。
ここから下水は、8つの系列に分かれていきます。
人口・処理量の増加によって、系列を順次増やしてきました。
今は、第8系列までが配備されています。
第5系列の反応タンク。
ここに微生物のクマムシがおり、下水を処理してくれています。
微生物を使って下水処理を行うのは、埼玉県や国内だけのやり方ではなく、世界的にもスタンダードなのだそうです。
第5系列の最終沈殿池。
新しい第5~第8系列は、広い荒川水循環センターの中でも、最も東側に位置しています。道路を挟んで住宅地と隣接しているため、臭気対策のために、上部に屋根を設けた構造になっています。
これは、昨年見学した元荒川水循環センター(桶川市)には無かった仕組みであり、ここの特徴です。
第5系列の上部は、このようになっています。
屋上は、戸田市営の公園として、一般に開放されています。
その名も、上部公園。
週末は駐車場が満車になり、空き待ちをしている車列が並んでいる姿をよく目にします。
第3系列の反応タンク。
こちらの系列は、蓋が設けられています。見学のときだけ開けられるようになっています。
ぶくぶくしているのは空気です。空気を送り込んで、微生物を活性化させています。
第3系列の最終沈殿池。
水を汲み出してメスシリンダーに入れてみると、少し黄ばんで見えます。
もはや臭気はありません。
化学的には、荒川の水よりも綺麗です。技術的にはこれよりも更に綺麗にすることも可能ですが、コストが掛かるし、意味がないので、そこまではやりません。
この後、消毒施設によって塩素処理を施して、荒川に放流します。
汚泥(沈渣、土砂類)は、大量の水分を含んでいますが、これを焼却して減容化(コンパクト化)して、セメント原料等として再利用します。
こちらは、昨年、令和5年(2023年)11月に稼働した、新型汚泥焼却炉です。
従来の焼却炉よりも、高温で焼却することが出来る上、排熱を利用して発電する機能も付いています。
温室効果ガス排出量は、従来型と比べると50%以上削減されました。
新型汚泥焼却炉の上部にて。
建屋で囲まれておらず、オープンな構造です。
グレーチングの階段を、上部まで登りました。
燃えているので熱いです。
最後にクマムシくんポーズで記念撮影。
このキモカワなキャラ、クマムシくんやクマニャンコちゃんは、初見では気持ち悪ーいのですが、施設を一周した後は、その活動に感謝し、とても愛おしく感じてくるから不思議です。
クマムシくんやクマニャンコちゃんがいないと、私たちの文明社会は成り立ちません。
昨年、令和5年(2023年)9月には、自民党県議団1期生有志にて、元荒川水循環センター(桶川市)を視察しました。
視察を受け入れてくださった県下水道局、公益財団法人埼玉県下水道公社の皆様、ありがとうございました。日頃の下水道インフラの建設・維持管理にあらためて蕨市民を代表して感謝申し上げます。