東日本大震災の復興のために高台を削って造った集団移転住宅地の多くが、限界集落に。

本日、令和7年(2025年)3月6日付け読売の記事より。

東日本大震災では、多くの、海辺の小さな漁村集落が被災しました。これらの復興のために、高台の山を削って造成し、小さな集落を丸ごと山の中に集団移転することを目指しました。

今日においては、これらの多くが高齢化、過疎によって、空き家・空き地となってしまっている状況が解説されています。

膨大な復興費が、無駄となってしまったわけで、暗澹たる気持ちになりました。

 

 

県が全額国費による整備を要望すると、国も容認した。対象となった自治体の元幹部は「少しでも負担を求められたら、あれだけの事業はできなかった」と言う。自らの懐が痛まないことが、大規模造成に走らせたことは否めない。遠藤さんは「集落ごとに形態や文化が異なるのを読み切れなかった。住民と話し合う時間も不足していた」と語る。

全額国庫負担だったため、地方自治体の見通しが甘くなってしまった、住民との話し合いも不十分であった、とのことです。

 

見通しが甘かった、話し合いが不十分だった、というのは、本当にひどい言い訳です。

東日本大震災以前から、これらの地域は、高齢化が進み、不可逆的な過疎に苦しんでいたわけで、今日の状況が予測できなかったはずがありません。

 

2017年、表面的に視察して考察しただけの私にすら、今日の状況は容易に想像することが出来ました。

201705_牡鹿半島の新しい住宅街

2017年、牡鹿半島の、高台を削って造成した集団移転住宅地にて。

 

 

今日の状況のようになる将来が容易に予測できたにもかかわらず、自分たちの懐が傷まないから、将来予測に目を背けてモラルハザードを生じさせてしまった、というのが真相だと考えます。

 

あの時は、「被災地のすべてを、震災以前の状態に完全に元通りに復興する!」というのが、国全体の意志であり、反対しづらい雰囲気があったことも事実であります。

 

 

みんなが、今日のひどい状況を予測できていながら、それを防げなかったことは残念であり、教訓を汲み取って今後に活かしていかねばならないと思いました。

 

今後、ますます人口減少、高齢化は進みます。

他方で、温暖化による自然災害の激甚化・頻発化も増しています。

今後は、甚大な災害が発生した際は、これを奇貨として都市インフラのスマートシュリンクを進めていく発想が必要であると改めて感じました。


八潮市下水道復旧工事のために40億円の補正予算

先のエントリにて書いたように、昨日 令和7年(2025年)2月12日の議運にて、県議会 2月定例会への上程が決まった、本年度 令和6年度(2024年度)補正予算案の中に、

・流域下水道事業会計
現状復旧に向けた復旧工事 40億円

が含まれております。

 

 

救出作業と並行して、復旧工事が始まる

1月28日に発生した、八潮市における下水道・道路陥没事故は、未だに行方不明のトラック運転手の救出が出来ておりません。

トラック運転キャビンが、下水管陥没箇所から30m下流にて発見され、中に運転手さんらしき方が取り残されていることが推測されておりますが、ガレキなどに阻まれております。

このたび、地元消防による消防的救出ではなく、真上から穴を掘るというアプローチによる土木的救出を行うことと方針転換がなされております。土木的救出の工期は概ね3ヶ月かかります。

 

 

下水道利用自粛要請は2/12に解除

既に、2月12日正午には、中川流域下水道の120万人の利用者の方々への下水道利用自粛要請は解除されております。

 

 

 

県議会 2月定例会の対応

県議会 2月定例会では、執行部に救出・復旧作業に注力してもらうため、関連部署の職員の議会・委員会への出席を必要以上に求めないこととなりました。

また、開会日である2月19日に八潮市での道路陥没事故関係意見書を決議するべく、調整中です。

自民党県議団より他会派に対して、本件で一般質問などを行うことによって執行部に過重な負担をかけないようにしようという申し入れを行っているところです。

 

 

災害救助法が適用される

2月11日には、過去に遡って災害救助法の適用を受けることが決まりました。

これによって、避難の費用負担が、地本市ではなく、国・県になります。

 

 

根本的な原因究明は、これから

前述のように、救出作業と並行して復旧工事が動き出すことになりますが、私の理解によると、根本的な原因究明はまだ為されておりません。

これから大事になってきます。

今回の陥没事故が、
特殊で例外的なケースなのか?
他の箇所でも十分に起こり得る一般的なケースなのか?

後者であるのならば、定期点検のやり方、頻度を国全体で見直す必要がでてまいりますし、これまで以上に下水道のランニング費用負担は大きくなってきます。


八潮下水管崩落事故による、下水道汚水の河川への緊急放流の現場

令和7年(2025年)1月28日 10時ころ発生した、八潮市内における、下水道管路崩落事故により、依然として1名のトラックドライバの方が行方不明のままです。

現場では、懸命の救出作業が続いております。

一刻も早く救出されることをお祈り申し上げます。

 

 

下水道汚水の、河川への緊急放流の状況

先のエントリにて述べた通り、1月29日 23時より、人命救助のため、道路陥没現場の下水流量を減らすために、現場の上流部にて、下水道汚水の河川への緊急放流を実施しております。

放流は今でも続いております。

下水道緊急放流_ページ_05

1月31日17時 第6回埼玉県危機対策会議の資料 (c)埼玉県

 

 

本日 2月1日、現地を視察してまいりました。

 

 

希釈水放流地点

上記地図の通り、下水道放流地点の直接の上流部ではありません。

下水道放流地点は、新方川(にいがたがわ)の支流である、名もなき小さな水路です。

希釈水放流地点は、新方川の本流の上流部となります。

 

20250201 希釈水放流点

大型のロジスティクスセンタが立ち並ぶ産業団地の中に流れる小さな新方川。

 

この希釈水放流のオペレーションは、国交省 関東地方整備局が行っております。

現場では、関東地方整備局の委託を受けた企業のエンジニアが24時間体制で有人監視を行っている他、仮設の監視カメラが設置されていました。

 

また、このオペレーションは、今後、県または市に移管される見込み、とのことです。

 

20250201 希釈水放流点

写真ではわかりにくいのですが、水中からぶくぶくと水が湧き出しています。

産業団地の中にある場所ですが、この水は工業用水ではなく、上水とのことです。

 

橋の上に配置されたポリタンクは何らかの薬液だそうで、ぽたぽたと垂れていました。

 

 

春日部中継ポンプ場の下水道汚水放流地点

公益財団法人 埼玉県下水道公社の中川水循環センターの上流部に位置する施設です。

 

埼玉県内には、複数の水循環センターがあり、ここに、管轄する市町村からの公共下水道が集められ、きれいにした上で、河川に放出しています。

ポンプ場は、名前の通り、あくまでもポンプが設置されているのみで、下水道をきれいに処理を行う機能はありません。

水は勾配に従って上から下に流れていきます。地形の都合で、下水を高い位置に上げる必要がある場合、中継ポンプ場が設置されます。

 

20250201 春日部中継ポンプ場 汚水放流現場

写真の左側は道路。右側が、春日部中継ポンプ場。

 

この水路は、名もなき小さなものです。

下流において、新方川へと合流し、さらに中川へと注ぎ込まれていきます。

 

20250201 春日部中継ポンプ場 汚水放流現場

白いホースから下水道汚水が水路に放出されています。

ホースの先の水中には、塩素タブレットが沈められており、応急的な措置としての消毒が行われています。

 

 

やはりちょっと臭いますね。

しかし、鼻をつまむほど臭い、というわけではありません。

夏の淀んだヘドロだらけの笹目川の方が、よっぽど臭いですね。

下水道汚水と意う言葉からイメージする、排泄物やゴミがプカプカ浮かんでいる、ということはまったくありません。

下水道汚水タンクにホースを差し込んで、ポンプで汲み上げ、河川に放出しているわけですが、汚水タンクの水中の中ほどにホースの先端が位置するように設定しているそうです。

下水道汚水の中の不純物は、水面に浮かんだり、沈殿したりしているため、これらが汲み上げられることは、ほぼ無いとのことです。

 

 

ポンプ場の中では、責任者の方に案内をしていただきましたが、写真の公開は控えます。

 

施設内では、様々な機関の車両が停まっており、車両の運転席で仮眠しているスタッフの姿も見られました。

関係者様のご尽力に感謝申し上げます。

 

 

下水道汚水放出水路と、新方川の合流地点

20250201 汚水を放流した水路と、新方川の合流地点

写真の左奥から右手前へと流れているのが、新方川の本流。
上で述べた希釈水は、この本流を流れてきています。

写真中央部の白いコンクリで固められた流入口が、下水道汚水を放出した水路からの流れです。

この写真の地点で、下水道汚水放出水路と、新方川が合流します。

 

 

もうここでは、臭くはありませんね。

流れは淀んでおり、汚いのですが、元から汚い水だったのではないかと思います。

 

 

新方川右岸(写真の左側)において、工事が行われていますが、これは、中川・綾瀬川緊急流域治水プロジェクトにおける何らかの工事かと思います。

この地域は水害が多く、2年前の6月にも大規模な床下・床上浸水が発災しました。

 

 

水質検査地点

20250201 新方川の水質測定地点

東武伊勢崎線 せんげん台駅近くの水質検査地点。

ここで行った水質検査は、あくまでも簡易測定キットによるものです。

橋の架替工事が行われています。

 

 

冒頭の資料によると、この地点におけるBOD(生物化学的酸素要求量)は、下水道汚水放流前で10,放流後は、ピーク時で50まで上がり、「わずかに下水臭、魚2匹浮いている」というタイミングもあったようです。

(数値は、低いほど良く、高いほど悪いことを示します。)

 

尚、参考までに、令和5年度 蕨市環境状況報告書によると、

緑川 1.1
見沼代用水 2.0

です。

 

 

尚、「日本で最も汚い川」と呼ばれたのは、奈良県の大和川ですが、1970年の最悪の頃で、BOD31.6でした。今日では、2.5に改善されています。

 

 

ということで、maxでBOD50というのは、結構酷い数字です。

 

 

今後の見通し

本日夕刻、埼玉県医師会の新年会での大野知事の発言によると、下水道陥没現場の復旧工事は、「1週間程度でできそうな見通しが見えてきた」とのことです。まだ明確に見通しが立っているわけでもなく、そもそも、依然として行方不明者の救出活動は続いており、復旧フェーズには至っていませんが、何ヶ月もかかるようなイメージでは無さそうです。

一刻も早く救出できるよう祈ります。
関係諸機関の引き続きのご尽力をお願い申し上げます。


下水の河川放流に関わる蕨市への影響、自民党県議団からの緊急要望

埼玉県より、下記記者発表がありました。

下水の利用に関しても、水道水に関しても、蕨市への影響はありません。

 

 

【下水道局】
(埼玉県八潮市で発生した下水道管破損により、下水道の汚水を河川に放流します(第1報(速報))

令和7年1月28日に埼玉県八潮市で発生した下水道管破損に関し、人命救助を優先して道路陥没現場への汚水の流量を極力減らすため、埼玉県において、下水道の汚水を、春日部中継ポンプ場より近傍の水路・新方川を経由し中川に放流を行います。本件については、国土交通省の協力を得ています。

(県政ニュース)
https://www.pref.saitama.lg.jp/c1502/news/page/news2025012903.html

 

 

【企業局】
(下水の河川放流による県営浄水場への影響について)

八潮市内の県道松戸草加線中央一丁目交差点内で発生した下水道管破損により、下水を新方川に放流することとなりましたので、放流による県営浄水場への影響についてお知らせします。

(県政ニュース)
https://www.pref.saitama.lg.jp/c1305/news/page/news2025012901.html

 

 

自民党県議団からの県知事への緊急要望

昨日、令和7年(2025年)1月29日付けで、以下の要望を大野知事宛てに提出しております。

  1. 人命救助を最優先で対応を進めること。その後原因を速やかに特定するとともに、県内に同様に危険な箇所がないか、悉皆的に緊急点検を行うこと
  2. 事故現場周辺の速やかな安全確保、復旧作業及び二次被害の発生防止に努めること
  3. 県内12市町に発出されている下水道の使用制限の周知を徹底するとともに、その解除に向けた取組を急ぐこと
  4. 今回の事故により生活、事業活動に支障を生じている周辺の住民、医療福祉施設、学校、各種団体、飲食店や事業所等への経済的支援についても、迅速かつきめ細かな対応を図ること
  5. 五年に一度の検査の頻度の見直しを検討すること。またA・Bランクと判定された箇所が速やかに修繕できるよう予算を十分確保すること
  6. 下水道等、公共施設・インフラの老朽化は命に係わる課題であり、予算配分の強化など、国の予算を活用し施策を推進すること

和光市の自動運転バス社会実証に試乗

和光市では、自動運転バスの社会実証をやっています。

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このたび、令和6年(2024年)12月13日、試乗してきました。

 

自動運転のレベル分けについて

この領域は、猛烈な勢いで開発競争が進んでおり、進化が激しい領域です。

国際的なレベル分けが以下のようになされています。

  • レベル0:ドライバーがすべての操作を行う
  • レベル1:ドライバー主体。一部の機能が自動化される(例:クルーズコントロール、車線維持支援)
  • レベル2:複数の機能が自動化される。ドライバーは常に運転状況を監視し、必要があれば介入する。(例:アダプティブクルーズコントロール、レーンチェンジアシスト)
  • レベル3:特定の条件下で自動運転が可能。ドライバーはシステムの要請があれば介入する必要がある。(例:渋滞時、高速道路での自動運転)
  • レベル4:ほとんどの状況で自動運転が可能。ドライバーは介入する必要がない(例:限定された地域での自動運転タクシー)
  • レベル5:完全自動運転。ドライバーは不要

我が国における市販車でも、特定条件下での手放し運転、自動レーンチェンジなど、レベル2が実現しています。

しかしながら、これらは、高速道路などの特定条件下のみを想定した機能です。

高速道路では、横からの飛び出し、歩行者・自転車などの混合交通、以上な舗装路面等の悪条件は想定されないので、自動運転もやりやすいのです。

 

テスラやBYDなど、米国、中国の先進的な車種も、レベル2です。

市販車でレベル3以上は、今の時点ではありません。

 

 

国ごとの自動運転についての考え方の違い

国によって道路交通に関する法律は異なるので、自動運転に関する法的許容度は異なります。

そのため、開発競争の進め方も、国ごとに考え方が異なります。

米国、中国、日本、それぞれの自動車メーカごとに、開発思想が異なります。

 

 

自動運転の開発での先進国は、米国と中国です。

この領域では、日本メーカは立ち遅れていると言わざるを得ません。

 

 

米国では、Google傘下のWaymoが、レベル4の自動運転タクシーを実証実験しています。

まだ実験段階の技術なので、当然ながら、交通事故も発生しています。

 

 

米国・中国と日本と、何がどう違うのか?

なぜ日本の自動運転開発は遅れているのか?

私が考えるに、新しい技術に関する社会的・心理的許容度が大きく異なります。

 

米国では、技術進化を促し、長期的に社会全体の効用を拡大するのであれば、多少の交通事故が生じても、それによって少なからぬ死者が生じたとしても、これを許容しよう、という感覚があります。

明示的に社会全体のコンセンサスがあるわけではないと思いますが、そのような風土があります。

中国は、そもそも社会のコンセンサスがなくとも、共産党政府がokならokとなります。

 

 

翻って、我が国には、このような新しい技術に関する社会的・心理的許容はありません

自動運転の実証実験に伴い、もし仮に死亡事故が一件でも起きれば、開発は即時完全停止し、数年間は再開できないことになるのではないでしょうか。

 

 

和光市の自動バスは、レベル2

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和光市駅北口にて。

 

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車両のあちこちにセンサが取り付けられています。

 

また、路上に設置したセンサが取得した画像情報を、LTE経由で受信する機能もあります。

 

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ASMobi(先進モビリティ株式会社)のエンジニアが2人同乗していました。

助手席にサーバ機が設置され、センサからの情報の処理と自動運転の操作が行われています。オンラインで指示を受けているわけではなく、スタンドアロンです。

 

レベル2の市販車が実現している自動運転機能は、高速道路などの限定された条件下のみを想定したものです。

和光市の自動バスは、様々な障害物が行き交う街なかでの運転を実現した点が、大きな違いです。

一口にレベル2と言っても、かなり幅広いのです。

 

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「交差点情報受信中」と表示されています。

 

見通しの悪い交差点において、道路上に設置したセンサが取得した画像情報をLTE経由で受信していることを示しています。

 

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自動運転中です。

運転席の運転士さんが、ハンドルから手を離しています。

 

但し、あくまでもレベル2ですので、運転士さんは、常に運転状況を監視し、必要があれば介入する必要があります。

路駐のクルマがある場合には対応できません。

犬くらいならば識別可能ですが、15cm以下の鳥などの小動物は識別しません。
(技術的に不可能ということではなく、そのような仕様となっている)

街路樹の根本から路上に張り出した雑草を障害物として認識して止まってしまい、運転手による介入が必要になるシーンもありました。

 

ということで、レベル5まではまだまだ道のりは長いですね。

MaaSによる省人化は、スマートシュリンク埼玉2050の実現のために不可欠ですので、引き続きこの領域の動向をウォッチして参ります。


荒川水循環センターを視察

昨日、令和6年(2024年)8月27日、蕨市議会 保守系会派:新翔会の仲間と、荒川水循環センターを視察してまいりました。

水循環センターとは、下水処理場のことです。
親しみやすい呼び名としたものです。

荒川左岸、幸魂大橋の川下に位置しています。
戸田市内です。

彩湖や荒川CRにジョギングに行くたびに横を通り抜けていましたが、初めて中に入りました。

 

 

県の流域下水道・水循環センターの仕組み

身近な、街の中の下水道は、公共下水道と呼び、市町村が運営しています。

それぞれの市町村ごとに下水は集められ、県が運営している流域下水道の管路に流れていき、やがて水循環センターに集まります。

ここできれいに処理して、河川に流します。

 

市町村と県は、このように役割分担しています。

 

但し、歴史的・地理的な経緯から、市町・一部事務組合が独自に下水道の終末処理を行っているケースもあります。

 

 

埼玉県の流域下水道

荒川、利根川などの大きな河川の、右岸、左岸それぞれといったように区分し、8つの流域下水道に分かれています。

荒川左岸下流のエリア(上尾市-さいたま市-戸田市-蕨市-川口市)を担当しているのは、荒川左岸南部流域下水道です。
人口密集エリアであるため、国内でも最大規模です。

蕨市においては、下水の100%の終末処理を、荒川左岸南部流域下水道に委託しています。
尚、蕨市内においては、錦町のみが分流式(汚水と雨水の管路が別系統に独立している)ですが、雨水は、そのまま河川に放出しています。

 

 

流域下水道の費用負担

受益者負担の原則に基づき、県が市町村に請求しています。

料金設定は、県内一律ではなく、流域下水道ごとに異なり、5年毎に見直しています。

人口が疎らなエリアの流域下水道よりも、人口密集エリアの流域下水道の方が、管路・ポンプ場などの投資・運用効率はいいので、料金設定も安くなります。

荒川左岸南部流域下水道は、県内でも安い方です。

維持管理負担金の立方メートル当たりの単価は、荒川左岸南部流域下水道は処理人口:199万人で、@36円です。県内で最高値の荒川上流流域下水道(深谷市・寄居町)は処理人口:2万人で、@99円です。

 

しかしながら、物価・エネルギーコスト上昇が続く中で、今後、値上がりすることは確実な状況です。

 

 

そもそも、下水道が出来る前は、どうしていたの?

荒川左岸南部流域下水道が出来たのは、52年前の、昭和47年です。

これまでは、し尿処理は全て汲み取りでした。

家庭や工場などの排水は、全てそのまま川に流していた、ということになります。

今となっては想像も出来ない世界ですね。

 

 

どうでもいい余談ですけど、私は2016年にセブ島でダイビングのライセンス取ったんですよ。

海はもちろんとても綺麗で、サンゴや熱帯魚、ジンベイザメと戯れながら講習を受けたのですが、島はほとんど下水道が整備されておらず、川は汚くて、それらの汚水がそのまま海に垂れ流されていました。

川はあんなに汚いのに、なんで海はこんなに綺麗なんだろう?と不思議でなりませんでした。

海はとても広大なので、ある程度の量までは、文明社会が垂れ流す汚水を飲み込んで希釈してしまうわけですね。量の問題なのです。

 

 

施設見学の写真レポート

20240827 荒川水循環センター

流域市の維持管理負担金の増額要因・背景、防災対策、施設概要についてお聞きしました。

 

20240827 荒川水循環センター

施設内は、ヘルメットを被って見学します。

場所によっては防塵マスクも装着しました。

 

20240827 荒川水循環センター

中央管理室。

言うまでもなく、下水道処理は24時間体制で行っていますので、この中央管理室も24時間体制で稼働しています。

基本的には、何かを操作する作業するというよりも、異常が無いかどうか監視し、異常が発生したら対応する作業がメインのようです。

 

20240827 荒川水循環センター

沈砂池。

水循環センターにやってきた下水は、まずここにやって来ます。

生の下水なので、やはり臭いです。

大きなゴミ、土砂を沈めます。

 

20240827 荒川水循環センター

ポンプ棟。

低い位置にある下水を、高い位置に持ち上げるのが、ポンプの役割です。

 

20240827 荒川水循環センター

管廊。

 

20240827 荒川水循環センター

視察団の面々。

 

20240827 荒川水循環センター

管廊には、近隣の高校生たちに描いてもらった壁画があります。

クマムシくんやコバトンが楽しそうに水の中を泳いでいます。

 

20240827 荒川水循環センター

水の妖精?

高校生たちによる、下水道インフラへの感謝と、ここでオペレーションする方々へのリスペクトの気持ちがよく表現されています。

 

20240827 荒川水循環センター

大きな導水管の前で。

でかいですね。

何となく、ゴゴゴゴゴゴ・・・という音は聞こえるのですが、中は見えないので、どのくらいの勢いで下水がこの中を流れているのかは分かりません。実はチョロチョロなのかもしれません。

 

20240827 荒川水循環センター

管廊案内図。

ここから下水は、8つの系列に分かれていきます。

人口・処理量の増加によって、系列を順次増やしてきました。

今は、第8系列までが配備されています。

 

20240827 荒川水循環センター

第5系列の反応タンク。

ここに微生物のクマムシがおり、下水を処理してくれています。

微生物を使って下水処理を行うのは、埼玉県や国内だけのやり方ではなく、世界的にもスタンダードなのだそうです。

 

20240827 荒川水循環センター

第5系列の最終沈殿池。

 

新しい第5~第8系列は、広い荒川水循環センターの中でも、最も東側に位置しています。道路を挟んで住宅地と隣接しているため、臭気対策のために、上部に屋根を設けた構造になっています。

これは、昨年見学した元荒川水循環センター(桶川市)には無かった仕組みであり、ここの特徴です。

 

20240827 荒川水循環センター

第5系列の上部は、このようになっています。

 

20240827 荒川水循環センター

屋上は、戸田市営の公園として、一般に開放されています。

その名も、上部公園。

週末は駐車場が満車になり、空き待ちをしている車列が並んでいる姿をよく目にします。

 

20240827 荒川水循環センター

 

 

20240827 荒川水循環センター

第3系列の反応タンク。

こちらの系列は、蓋が設けられています。見学のときだけ開けられるようになっています。

ぶくぶくしているのは空気です。空気を送り込んで、微生物を活性化させています。

 

20240827 荒川水循環センター

第3系列の最終沈殿池。

 

20240827 荒川水循環センター

水を汲み出してメスシリンダーに入れてみると、少し黄ばんで見えます。

もはや臭気はありません。

化学的には、荒川の水よりも綺麗です。技術的にはこれよりも更に綺麗にすることも可能ですが、コストが掛かるし、意味がないので、そこまではやりません。

 

 

この後、消毒施設によって塩素処理を施して、荒川に放流します。

 

20240827 荒川水循環センター

汚泥(沈渣、土砂類)は、大量の水分を含んでいますが、これを焼却して減容化(コンパクト化)して、セメント原料等として再利用します。

 

こちらは、昨年、令和5年(2023年)11月に稼働した、新型汚泥焼却炉です。

従来の焼却炉よりも、高温で焼却することが出来る上、排熱を利用して発電する機能も付いています。

温室効果ガス排出量は、従来型と比べると50%以上削減されました。

 

20240827 荒川水循環センター

新型汚泥焼却炉の上部にて。

建屋で囲まれておらず、オープンな構造です。

グレーチングの階段を、上部まで登りました。

燃えているので熱いです。

 

20240827 荒川水循環センター

最後にクマムシくんポーズで記念撮影。

このキモカワなキャラ、クマムシくんやクマニャンコちゃんは、初見では気持ち悪ーいのですが、施設を一周した後は、その活動に感謝し、とても愛おしく感じてくるから不思議です。

クマムシくんやクマニャンコちゃんがいないと、私たちの文明社会は成り立ちません。

 

 

昨年、令和5年(2023年)9月には、自民党県議団1期生有志にて、元荒川水循環センター(桶川市)を視察しました。

 

視察を受け入れてくださった県下水道局、公益財団法人埼玉県下水道公社の皆様、ありがとうございました。日頃の下水道インフラの建設・維持管理にあらためて蕨市民を代表して感謝申し上げます。


中川・綾瀬川の流域治水シンポジウム

20240826 流域治水シンポジウム 中川・綾瀬川緊急流域治水プロジェクト

先日、令和6年(2024年)8月26日、越谷市中央市民会館におきまして、中川・綾瀬川の流域治水シンポジウムがあり、参加してきました。

参加者は白ワイシャツの行政パーソンが多かったようです。

 

 

中川・綾瀬川緊急流域治水プロジェクト

中川・綾瀬川流域(春日部市、草加市、越谷市、八潮市、三郷市、吉川町、松伏町)では、昨年、令和5年6月の台風2号による内水氾濫によって、大規模な家屋浸水被害が生じています。

この地域は、中川と綾瀬川に挟まれたお椀のような地形になっています。中川・綾瀬川は、河川勾配が小さく、ただでさえ水が流れにくい(排水能力が低い)川です。排水能力を越えた雨が降ると、溜まってしまって流れにくいのです。

 

 

この時のことは、私もよく覚えております。

須賀敬史 前県議が立候補した蕨市長選挙の最中で、連日、県内の自民党議員が選対に応援に入ってきていました。

蕨市では浸水被害はありませんでしたが、毎日来てくれていた草加市の議員さんから翌朝一番で、「市内での水害がひどく、一晩中市内を駆けずり回ってきて、今、家に帰ってきたばかりなので、一眠りしてから蕨に向かいます」と連絡を受けたのでした。

 

 

対策として、国・県・市町が連携して、中川・緊急流域治水プロジェクトが動き始めております。

 

 

流域治水という考え方は、2度目のパラダイムシフト(であるべき)

学者の加藤孝明氏の講演で、面白い話がありました。

 

20240826 流域治水シンポジウム 中川・綾瀬川緊急流域治水プロジェクト

「流域治水頑張ろう!」という関係市町の首長の決意ポーズを軽く揶揄した上で、

 

流域治水という考え方は、本来であれば、2度目のパラダイムシフトであるべきなのだ、と。

 

 

古代~中世:人類文明は、自然の脅威に抗う術を持ちませんでした

文明 < 自然の脅威のフェーズです。

大雨の時に浸水して流され、少なかぬ被害が生じるのは当たり前で、高台に住むくらいしか対策はありませんでした。

いざ自然災害が発生したら、人々は一丸となってこれに対処する必要がありました。

 

 

近世~近・現代(江戸時代~平成):土木技術・防災インフラが自然災害から人々を守りました

これが第1のパラダイムシフトです。

文明 > 自然の脅威のフェーズです。

人類文明は、自然の脅威と戦う道具として、土木技術を手に入れ、防災インフラを整備していきました。

堤防、ダム、河川改修などの土木技術・防災インフラがあれば、人々は、自然災害を恐れる必要はなくなりました。

土木技術・防災インフラが、人々を自然災害から守ってくれました。
人々は、自然災害と直接対峙する必要はなくなりました。

 

 

今(令和~):流域治水

これが第2のパラダイムシフトです。

文明 < 自然の脅威のフェーズです。

気候変動により、自然災害は頻発化・激甚化し、防災インフラ整備のスピードが、追いつかなくなりました。

土木技術・防災インフラ整備が、自然災害から人々を守りきれなくなりました。

人々は、自然災害をある程度は受け入れていく覚悟が必要になりました。
いざ自然災害が発生したら、人々は一丸となってこれに対処する必要が出てきました。これが流域治水です。

つまり、古代~中世に戻った、ということになります。

 

 

加藤教授は、この考え方に基づき、葛飾区において浸水対応型市街地構想を進めています。

 

 

はっはっは。ここでも、人類は、自ら作り出した地球温暖化によって、大きなしっぺ返しを受けているわけです。何と言う皮肉でしょうか。