自民党県議団の一期生有志で、経済産業省・文部科学省・内閣府と、ロボティクス政策について意見交換を行いました。
埼玉県は、ロボティクス産業の育成・埼玉県への集積を目指している
圏央道 鶴ヶ島IC近く(農大跡地)に、SAITAMAロボティクスセンタの建設を進めています。
2種類のロボティクス産業
ロボティクス産業(あるいはロボット産業)には、大きく分けて、以下の2つがあります。
- 産業用ロボット産業
- サービスロボット産業
産業用ロボットは、自動車などの製造業の工場の生産ラインにおいて、何かの製品を製造するためのロボットのことです。
既に長い歴史があり、世界中の製造業の工場において多くの産業用ロボットが稼働しています。市場規模も大きく、今さら埼玉県による支援を必要とするようなビジネス領域ではありません。ファナック、安川電機などの世界的な大きな企業も、我が国にはあります。
サービスロボットは、介護福祉、医療、配膳、接客、警備、建設、物流、災害支援、農業、家事などの分野において、人の何らかのオペレーションを支援するためのロボットのことです。家庭で使われる場合もあるでしょうし、様々な仕事の現場で使われることもあるでしょう。人間が入れないような危険な現場(例えば高所、水中、放射線が強い場所など)に使われるケースもあるでしょう。
これらのロボットには、自律的に動くものもあれば、オペレータによる人力の指示によって動くものもあります。広義には、ドローンや、自動車の自動運転機能も、サービスロボットに含まれるでしょう。鉄腕アトム、ドラえもんなどのヒト型(ネコ型)ロボット(あるいはアンドロイド)も、サービスロボットの延長線上にあります。
サービスロボットは、なかなか普及していない(=社会実装が広まっていない)
サービスロボットは、個別に見ると、分野ごとに、普及の度合いが大きく異なります。
例えば、
家庭においては、「ルンバ」のような自律移動式お掃除ロボットが普及しています。
医療の分野においては、手術支援ロボット「ダビンチ」が普及しており、リモート手術が行われています。
建設の分野では、人手不足も相まって、ドローンによる点検が普及しています。
物流の分野では、大型ロジスティクスセンタにおいて、様々な搬送ロボットが活躍しています。
接客の分野では・・・ソフトバンクが「ペッパー君」を売り出しましたが、死屍累々たる状況ですね。宿泊業では、HISの「変なホテル」で導入され成功を収めていますが、さっぱり広がっていません。変なホテルは、今までは縁がありませんでしたが、今度、機会を作って泊まってみたいですね。
飲食業においては、コロナ禍以降、人手不足もあり、急速に配膳ロボットが普及しました。
ファミレスの配膳ロボは、ほんとに爆発的に普及しましたよね。びっくりするほど急速に。
私が初めて見たのは、3年前の2022年6月でした。
初めて見た時は、あまりにもビックリして、思わず一緒に記念写真撮っちゃいましたよ。
余談ですけど、私は、香港の飲茶屋が大好きなんですよ。今年1月にAnta Guanjun HK100に参戦するために香港を訪れたときも、飲茶屋に行きました。ワゴンのおばちゃんに蒸籠のフタを開けてもらって、指さして注文します。注文した分については、伝票にスタンプを押してもらいます。あの、英語がろくに通じないワゴンおばちゃんとのコミュニケーションが飲茶の醍醐味なのですが、おばちゃんワゴンが配膳ロボットに置き換わったらと考えると・・・ちょっと味気なさそうですね。
以上みてきたように、サービスロボットの分野は、研究開発のフェーズはとっくに過ぎ去っているのです。既に製品化されているものの、何らかの要因があって、さっぱり普及していない、しかしながら、何かのキッカケがあれば爆発的に普及する可能性がある、という状況なのです。
私が最も注目している領域が、介護ロボットです。
介護の分野に関して言うと、介護支援ロボットは、既に10年以上も前に製品化されています。介護の現場は、人手不足に喘いでいます。そうであるにも関わらず、さっぱり介護支援ロボットが普及しないのは何故なのか?
(うちの大学に関連する会社なので、応援する気持ちが強いゆえに、辛辣に書きますけど)
筑波大発の介護支援ロボットベンチャーとして有名なCYBERDYNEは、10年以上前に製品化し、東証グロースに上場しているにも関わらず、未だに赤字を垂れ流し続けています。
ロボティクス産業支援において、埼玉県がやるべき仕事
埼玉県がロボティクス産業支援をするのであれば、
研究開発のフェーズに対してではなく、
ニーズもシーズも既に存在するにも関わらず、何らかの要因によってさっぱり普及していないサービスロボット分野において、普及促進を後押しすること
であるべきだと考えます。
私は、移民の受け入れ拡大には慎重な立場ですが、人口減少が進む我が国において、生活の質と産業競争力を維持していくためには、サービスロボットの劇的な普及拡大が不可欠だと確信しています。
意見交換会の様子
経済産業省は、サービスロボットの普及のために、ロボットフレンドリーな環境の整備を目指しているとのことです。
かつて、モータリゼーション期においては、歩車混合から、歩車分離へと、道路を造り変えていきました。この自動車フレンドリーな道路環境が、モータリゼーションを後押ししていきました。
今日においては、ルンバを使いやすいように、ルンバが動きやすいような造りの、ルンバフレンドリー家具が普及し始めています。
この類推で、サービスロボットが動きやすいような環境を整備することによって、サービスロボットの普及を後押ししていこう、という発想です。
経済産業省主導で、各種業界を巻き込み、ロボットフレンドリーな環境整備のためのコンソーシアムを立ち上げているとのことです。
成果として、
業務用お掃除ロボットが動きやすいように、エレベータ、オフィスビルのセキュリティゲートとの通信仕様を策定しました。
お惣菜の食品製造工場において、お惣菜の盛り付けロボットが、盛り付けしやすいようにするために、食品容器、包装資材の規格を見直しました。
これは、素晴らしいですね。
ご担当の方に、介護ロボット普及に向けて何が必要なのか?聞いてみましたが、しっくりくる回答は得られませんでした。難しいですね。
尚、文部科学省、内閣府は、普及フェーズではなく研究開発フェーズの仕事をしており、私の関心がある領域 = 埼玉県が手掛けるべき領域とはズレていました。
野中厚文部科学副大臣にアレンジしていただきました。
ありがとうございました。
また、古川俊治参議院議員もご参加されました。